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あの人にどう見えていたか。

高校受験の頃
塾で、2つ上の先輩(♂)と仲良くなって
同じ高校に入学が決まると
お祝いにと
ニット帽をプレゼントしてくれた。

私に似合うかどうか?は、別として
私にあげたいと思ってくれたことは
とても嬉しかったけど
春先でもあって
そのままタンスにし舞い込んだ。

帰り道が途中まで同じ方向で
一緒に帰ったりしているうちに
付き合うことになる。

高校3年生と高校1年生。
学校では、すれ違っても
他人の振りをして
塾の空き時間と帰り道を
ともにする。

洋服好きの彼は
とてもオシャレだったけど
オーバーオールの腹囲が
ダボつくのが気に入らなかったらしく
ベルトをして来たときは
さすがに、ちょっと興ざめした。

高校総体の頃
季節的にも、まだ新入生には
オソロイのウインドブレーカーは無くて
でも、まだ肌寒くて
彼に借りることにした。

いつか部活の自主練で着てるところを
見たことのあったもので
それに自分が袖を通すと
彼に囲われてるような
守られてるような気もしたし
そのレアなウインドブレーカーを
先輩たちが覚えていたとしたら
付き合ってることが
バレるんじゃないかと
ハラハラした。

その頃、長崎駅の駅舎は、まだ三角屋根で
改札を出ると掲示板があった。
それぞれの部活の試合会場から戻ったら
会う約束をしていて
でも、当時、携帯なんて無い時代。
先に駅に着いた方が
掲示板に居どころを書くことにしていた。
「好文堂で待ってる/◯◯」
到着が後だった私が
そのメッセージを見つけ
子どもみたいな字にニヤリとする。
合流すると人通りを避けながら歩き
諏訪神社の公園の椅子に座って
「一緒の時間」を過ごした。

そんなある日
塾の一室で、彼と先生が
言い合いになっているのを
聞いてしまう。

そんな場面に遭遇したのは初めてで
とても怖くなって
入口にあった彼の靴に
メッセージを残し
先に帰ってしまった。

別に、高校3年生と1年生が
付き合っていようが
隠すこともなかったはず。
でも、自分の部活の2つ上の先輩たちが
偉大過ぎて、大人過ぎて
その同級生と付き合ってることが
荷が重いような感覚に。
子どもみたいな私が
この先、彼の要望に応えることも
支えることも、知らない一面を
受けとめることも出来そうになくて
怖じ気づいてしまったのだ。

それ以来
塾にも行けなくなって
母には、適当な嘘を言って、辞めてしまう。

その頃は、そんな気持ちを
言葉にすることもできず
かかってきた電話で
「他に好きな人が出来た」と伝えた。

彼は高校を卒業し、県外の大学に進学。
学校でも、長崎でも
逃げも隠れもしなくてよくなった。

それから4年、私は、短大を卒業して
専門学校へ通っていた頃
浜町アーケードで、彼を見つけてしまう。
一瞬、逃げそうになりながらも
思わず、振り返って、追いかけて
腕を掴んでしまった。

湊公園まで一緒に歩いて
ベンチに座り
これまでのことを話す。

長崎で就職して社会人になった彼は
やっぱり私より大人だったけれど
昔より、その差は感じなくて
それから、たまに会うようになった。
それぞれ遠距離恋愛の相手が居たのに。

私は彼にとって
1番じゃなくても
彼女じゃなくても良くて
服の趣味が合ったり
女性が多く集うような雑貨屋さんにも
付いてきて楽しんでくれるし
その時間を共有できたら
それで良かった。

遠距離では、埋まらないところを
埋めるために
互いに利用していたのかもしれない。

ちょうど「夢彩都」が出来た頃のこと。
本当は、出かけたくなかった日に
半ば強引に、一緒に行くことになり
私は終始、不機嫌モード。
たまたま、そこで会った友人に
「買い物は、この人と、、」と
彼のことを、そんな表現をしてしまって
怒らせてしまう。

それ以来、縁は切れる。

男の人が怒ったり、怒鳴ったり
そういうことが怖かったくせに
結果、そういう場面を自ら作ってしまった。

間もなく、私は、連れと出会い、結婚。
長崎の実家を出る引っ越しの準備は
ワクワクだったけれど
タンスの奥から
袋に入ったままのニット帽が出てきて
こちらの事情は、変わりに変わっているのに
7年近く、そこに居座っていたのかと思うと
何とも言えない気持ちになった。

彼にとって私は
どんな存在だったんだろう?
もう聞くことも無いだろうけど
多分、私は、ニット帽は、似合わない。

彼の腕を掴んだあの日
どうして私は、そんな行動に出たのか?
そこから20年以上経って感じるのは
やり直したかったんだと思う。
彼と、というより
受けとめられなかった自分の行いを。
そして、確かめたかったのかも。
年の差を越えて、対等で居られるのか。
ある意味、怒らせるくらいの距離感だった。
そして、あの頃ほどの恐怖は、なかった。
理由も明らかだし、受けとめる必要も無くなってしまったからか。

友達から彼になったり
そうでなくなったり
戻ったり。
そもそも友達だったのか?
男女間で友達は成立しない?

いろんな疑問を抱えながら
人妻になって
「男の人」との距離は
より遠くなり
距離感なんて、わからなくなる。

事業をはじめ、さらに、この数年で
一段と「男の人」と接する機会が増えた。
最初は、戸惑いもあったけど
今は、重なるところだけを
共有できたらいいと思ってるし
やっぱり
性別を越えたmakijakuという生物でいたい。
ただそれだけなんだ。

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