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大人の男の人を信じてはいけないんだ、、、前編

子ども時代に経験した悲しい話を書きます。
ちょっと長いので何回かに分けます。

長い間誰にも言えずに心の奥底にしまってあった記憶を文字に落とすことにした理由は、同じような経験をされて、いまだに人には言えず苦しんでいる方に向けて、少しでも心を軽くして、人生を生きやすくするお手伝いがしたいからです。

子どもに対する性犯罪の描写もあります。
その点ご理解の上、読み進めるかどうかご判断ください。


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小学校4年生の夏休みの昼下がり。
前の年に担任だった先生が転勤先から遊びに来てるということを聞いて、
私はいそいそと先生に会いに小学校まで走って行きました。

初々しくて、エクボが可愛いらしい、お姉さんのような先生で、
新卒で初めて担任となった3年2組に私がいました。

明るくよく笑う先生で、他の先生と違って偉ぶることがなく、
子供と過ごすことを心から楽しんでいて、みんな先生が大好きでした。

あっけらかんとした性格で、
私を含むクラスメート6人を自宅に招いて先生のお母様がお寿司の出前をとってくれたり、

そしてなんと!先生と婚約者とそのお友達夫婦に混じって、
なぜか私一人、尾瀬に泊まりがけで
山歩きに連れて行ってもらったりしました。

今では考えられないですね。

尾瀬に一緒に行った同僚の先生とご結婚されて
他の小学校へ転勤することとなり、
3年生が終わると同時にお別れすることになりました。

そんな先生が小学校に遊びに来てる!と聞いた私は会いたくてたまらなくて
急いで小学校へ走って行ったんです。


夏休みの小学校は誰もおらず閑散としていました。
先生たちも見当たりません。

校舎の中には入れなかったので、
校庭からのぞいた職員室には誰もおらず、
「あーあ、もう先生帰っちゃったんだ。」
とがっかりしました。

肩を落として帰ろうとすると、
茶色のロン毛でスタジャンを着た背の低い痩せた若いお兄さんが
少し離れた中庭から手招きしているのが目に入りました。

「このお兄さん、何でいるんだろう?」
と思いながらも、何か困っている様子だったので近づいて行きました。

トイレを使いたいのだけど場所がわからないから教えてほしい、
ということでした。

「あそこです。」と指差して、私は帰ろうとしましたが、
わからないから一緒に来てほしいと頼まれ、
何の疑いも持たずに中庭のトイレまで先に立って案内しました。

「ここですよ。それでは。」
と帰ろうとすると、今度はトイレの中から手招きをします。
私は訳が分からず「このお兄さんは何がしたいのか?」と
不思議に思ってその場に立ち尽くしていました。

数秒そんな感じで見つめあっていました。
すると突然、トイレの中からものすごい勢いで走り寄ってきて
私の口を手で塞ぎ、
「静かにしないと殺すよ。」と押し殺した声で言ってきました。

恐怖で固まった私は言われるがままトイレの一室に押し込まれました。

そういう知識が全くなかったので、
ただただ、
痛くて気持ち悪い、
でも殺されたくないから声を出してはいけない、
怖い、怖い、気持ち悪い、死にたくない、
と必死に我慢しました。

どのくらいの時間が経ったのかわかりませんが、
お兄さんはベルトを閉めて
「ゆっくり100数えてから帰るんだよ。」
と言って、周囲をキョロキョロ見回しながら出ていきました。

律儀に心の中で100数えてから、
下着を履いてトイレから出て、
家に向かって歩いて、途中からは走って帰りました。

家に帰ってすぐに狂ったように何回もうがいをしました。
それから母に向かって
「警察に電話してほしい。」
と伝えました。

お巡りさんが何人か来ました。
何を聞かれたか覚えていませんが、
冷静に受け答えしていたと記憶しています。

弟と妹は静かに座って成り行きをただ見ていました。

その内、父が帰宅しました。
多分、会社を早退してきたんだと思います。

警察官から話を聞いています。
私を見てとても怖い顔になります。
怒った時に歯軋りをする癖がある父は、
その時も私を見ながら歯軋りしていました。

「お前がしっかりしないから」
というようなことを言われたと思います。

「え?何で怒られるの?私が悪いの?」
と、悲しいとかではなく、何で?何で?と
混乱していました。

夜になりました。
とても事務的な雰囲気で、警察署と産婦人科と回りました。

どんな乗り物に乗って移動したのか、
誰が付き添ってくれたのか、
全く覚えていません。

産婦人科の先生が
私が脱いだ下着をまじまじと観察しているのを見て、
初めて恥ずかしい、という気持ちが湧いてきました。

どんなことをされたのか、と根掘り葉掘り聞いてきます。
答えるのが苦痛でした。


新学期になって、確か学校は休まず通っていたと思います。
ある日、警察の人10人くらいが小学校にやってきて
現場検証しました。

私も立ち合って、トイレの前で指を指す姿を写真に撮られました。

昼休みか何かで、児童が大勢見に来ました。

「どうしたの?何やってるの?」
同級生の女子が聞きます。

「こいつ何か事件に巻き込まれたんじゃないか?」
上級生の男子が言います。

ああ、恥ずかしい。
何とか誤魔化さなくては。
でもどうやって?

友達には、
本当のことを絶対に知られてはならない。

そうだ、何ともない振りをしよう。

これからずっと。

(つづく)


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