旅不慣れな私たちの旅行記1
今回は母と2人旅。
旅不慣れな2人で行くと言う事で今回タイトルは「わたしたち」に変更した。
母親と2人旅なんて親子仲がいいね、とよく言われる。
確かに私と母は仲が良い。
でも、こんなに仲良くなったのはここ数年の事。
それまで私と母の関係は支配と管理の関係だった。
私は母に言い返すことも出来ず、不満や不信があっても母に怒ったり、何か相談するなんてことは学生時代一回もしたことが無い。
幼少期からただただ怒られたくない、と思いながら顔色を窺う毎日だった。
私が1人暮らしを始めた5年前なんて、母の荒れようはすさまじかった。
金切り声を出して定期的に暴れるもんだから、私は自分が1人暮らしを始めたことに対して罪悪感も持った。
当時の母は更年期と私の独り立ちへの寂しさが重なりそれはそれで辛かった、らしい。
が、私がトバッチリ受ける理由にはならんからな?と釘刺して言えるくらい今は強くなった。
そうして母と対等に言葉を交わせるようになり、母もだんだんと私を管理しても仕方がない(聞かない)と感じ始め今の関係性が出来上がった。
私達の親子の親離れ、子離れが完了した、んだと思う。
だから、小さい頃から信頼関係を築いていたと言うよりかは『仲の良い親子』に2人で必死に藻搔きながらなったって感じ。
そんな母との2人旅。
今回は岡山県へ。
岡山県は母の母、私の祖母の故郷。
馴染みのある素敵な県である。
祖母の生家は美作なのだが、今回は寄らず、日本三大庭園の1つ後楽園へお邪魔した後、牛窓へ向かった。
何となく開いたサイトで見た牛窓の『ホテルリマーニ』。
このホテルにお邪魔するためにこの旅を企画したと言っても過言ではない。
ホームページの写真が綺麗なの、本当。
ブルーをこよなく愛す私にとって、最高のホテルを見つけてしまったのだ。
旅行当日の朝は晴天。私は楽しみにしている事がある日は信じられないくらい晴天となる。
なので、もちろん晴れると確信していた私…とは反対に母は少し天気を気にしていた模様。天気予報では曇りのち雨だったからね。
そんな母は朝怯えたように空を見上げ…
「は、晴れてる…」
と呟いていた。
母のそんなつぶやきから始まった旅行。
母の運転で岡山県へ向けて出発。
私も免許持っているんだけど、ペーパーゴールドのため母に運転お任せ。
というか、私がハンドル任せてもらえない。
でも、私、去年東京旅行に行ったとき運転したから多分出来る…んだけど。
いまだにどうしてアクセルを踏んだら車が動くか分からないけど、たぶん運転できる。てか、運転できるようになれば旅の幅が広がって私とんでもないことになる気がする。
運転、勝手に一人でレンタカーで練習しようと心に誓った。今。
まぁ、そんなこんなで母が運転担当。
車内は、今までのわたしたちの関係性の話やこれからどうなっていくかの話で持ち切り。
聞けば母は今度はレクサスに乗り換えたいらしい。
ちなみに今は『ヤリスクロス』という車。
購入前に私が読み間違えて「ヤスノリクロス」と読んだことにより母の『ヤリス』は『ヤスノリ』と呼ばれることとなった。
「ヤスノリの次は、レクサス。頼むよ、レクサス。レクサスだからね」
「はいはい、レクサスね。分かった分かった」
どうやら私が買うみたい。
しっかり稼ごうなぁ、と心の中の私と決意新たに結託の握手。
10時を過ぎた時点で母が「お腹空いた、お腹空いた」とワーワー言い始めたので早めの昼食。
龍野西サービスエリアへ寄る。
揖保乃糸…久々に食べたけど美味しいなぁ。。
その後、順調に車は進み後楽園に到着!
母は庭の手入れやお花が好きなので、自然とこういった場所への旅行になる。
私は花とかあんまり興味ないけど、まぁ、私にとって母との2人旅って母に喜んでもらう事がメインだから全然お付き合いする。なんなら事前に色々調べておいて母が求めたら情報を提供するというスパダリっぷり。
私ってなんて優しい娘でショウカ。
しかし毎度想定外が起こる。
今回は母の足腰の弱さにびっくり。
まさか駐車場が遠いと言って早々に根をあげるとは思わんかったわ…。
まだ入り口見えてませんけど?お母さん?
後楽園内も広いこと広いこと…。わーぉ。
ただ、母は園内に入ると「疲れた疲れた」音頭を止め、ちょぼちょぼ歩き出す。
いつも歩幅が大きく足早な私には母のペンギン歩きに合わせるのは相当疲れたけど、それも良い思い出。
あまりにも素っ気ない感想かもしれんけど…。
後楽園、ただっぴろい。緑が綺麗、鯉がいた。くらいの感想しかない。
興味のない人間が行けばこんなもんだ。
母は「あの樹形がかっこいい、アレが見たい、これが見たい」と激遅の歩みで楽しそうにしておりました。良かった良かった。
帰りに白桃ソフトを食べる。
想像以上に酸味があって、パッと口の中がフルーティに。
白桃の甘さって爽やかなのに余韻があって大好き。
母もご満悦。
もう一本食べたい!アンコール!と思ったけど夕食が懐石なのであまり食べるのはよろしくない…。泣く泣く我慢。
そして帰り、駐車場まで母の「疲れた、疲れた、遠い、遠い」音頭リサイタル再開。
そのアンコールはいらねーんだわ。
不意に、駐車場行くまでにキジバトの鳴き声が聞こえてきて母が
「この、なんだろ、ホホ、ホホホっての何の虫?よく聞くんだけど。」
「虫じゃないよ、キジバトでしょ」
「え、コレ、鳥の鳴き声?!ホホ、ホホホ~って」
「ホホ、ホホホー。じゃなくて、ホーホッホッ・ホッホーでしょ」
「それ、それ!」と母爆笑。体から溢れた笑いはバシバシと私を叩くことで昇華され全身で笑う母。キジバトの鳴き声、お気に召したよーで。何よりです。
母が笑うと私も笑えてくる。そんなわけで2人で大爆笑しながら帰った。
そして車は『ホテルリマーニ』を目指して出発。
後楽園から50分。
ナビが示す道を進むと、田舎の住宅街。
ここだけ昭和後半のような畑と家。そして、車幅の狭い道路が続く。
様々な年号に取り残された様な趣深い街並み。もうなんか、映画のセットみたい。
一向に海は見えず、母と2人で「…リゾート、ホテルあるの本当に?」と段々と怖くなる。
ナビによると、ほぼ最果てに位置するホテル…。
ホテルに到着し、車を降りる。
なんか、地元のヨット置き場にヤシの木が数本埋まっている…。なんとも寂しい感じ。
は、果たして…。
私と母が顔を見合わせお互い心の中で
(どんな感じでも私は大丈夫、楽しめますよ)
というお互いへの気遣いを見せる。
キャリーケース(名前:レッドフォックス)を転がして入り口に行くと、ホテルマンさんがすでにいて扉を開けてくれていた。
わぉ、びっくり…。
慣れてない私達は申し訳なくてササッと足早に入場。
入り口を入ると別世界。
天井が広くて白を基調としたリゾートがそこにあった。
外のプールのさきに広がっている瀬戸内海。キラキラと水面が反射して目が眩しいくらい。
アレ、すっごい良いんじゃない?
チェックインを済ませてお部屋に行くと、また素敵。
オーシャンビューとは書いてあったけど、オーシャンしか見えない…!
瀬戸内海の小島が遠くまで見えて最高に綺麗。
部屋も天井が高くて開放感がある。
拍手。マジで拍手。
写真通り…!部屋もホテル内も。
こんな写真通りのことある?加工無しだよ、コレ。
しかも私のスマホiPhoneじゃないからそこまで画質無いけどこんなに綺麗。
気候も温かくてベランダに出ても心地が良い。
夕食まで時間があったので外観の写真を撮ったり、お土産物屋さんを見る。(1人で。母は部屋で後楽園の疲れを癒していた)
お土産屋さん、と言っても売店みたいな小さな所。
オリジナルポストカードやキャップ・Tシャツ、地元の人が作ったのかしおりなどが置いてあって中々面白い。
そんな中、素敵なジュースを発見。
私の大好きなブルーじゃないですか!最高!
瀬戸内レモネードもすっごいテンション上がる、こういうご当地サイダーは必ず飲む!決めた!
と言う事で、桃のクランチチョコとジュースを購入。
ちょっとお腹すきすぎて懐石まで待ってられないのでブレイクタイムを挟む。
夕食の懐石。
18時の予約で、ちょうど夕日が沈みかけの頃。
レストランからももちろん海が見える。
優しく夕日に照らされている水面はお昼よりも優しくキラキラしていて見惚れてしまう。
1階にあるレストランなので水面の距離が近い。
ヨットが通るたびに大きな揺れがじんわーり広がっては消えていく感じ。
なんかベッドのシーツをまっさらに伸ばしていくように見えて、こういう綺麗な景色を粋で美しい言葉で表現できる私になろう、と決意と景色を目に頭に焼き付けるように見つめていた。
そのころ母は、他のテーブルに座っていた人たちの身なりとか見て(絶対社長夫婦だわ、あっちは愛人と社長か?)と下世話な事考えていたらしい。
台無しだよ、畜生め。
ウェイターの人が懐石を始めてくれ、私達の食事がスタート。
「夜になると一気に景色が見えなくなるので、この時間帯が食事をしながら景色も楽しめるのでおすすめです」
と教えてくれた。
確かに、オーシャンビューなんだから街灯も何もないよね。
懐石の中盤辺りで景色は真っ暗になった。
でも、その辺りになると食事に集中していたからそこはあまり気にならなかったな。
景色を見ながらゆったりとしたいなら、遅めの食事よりも早めの食事がおすすめ。
食事が終わって部屋に戻る。
満腹すぎる母をソファに放っておいて、私は1人、2階の展望浴場へ。
分かってるよ、外暗いからなんも見えないことくらい。
懐石食べながら「あぁ、本日の景色終了のお知らせ」って思ったもん。
と言う事で、展望だけど展望じゃない浴場へ。
狭い通路を奥へ奥へと進み、不意に現れる展望浴場。
女性用を確認してから入室。
だっれも居ない…。
貸し切り。
宿泊客自体少ないみたいだし、ラッキー。
ジャグジーとお風呂が一体になっていて、扉開いて一番奥の壁がほぼガラス。
長方形の短い一辺にジャグジーがあって、ボコボコ泡を立てていた。
マジで貸し切り。
体を洗って入浴。
アッツ。
熱いお湯って痒くなるよね。
かいかい、と無様な格好してても1人なので気兼ねなく入れる。
ゆっくりと体を慣らしてホ~っと一息。
真っ暗な海、を映しているであろう大きな窓を見ながら今日の事を振り返る。
その時浮かんだ言葉はただ1つ。
「お母さん、体力ねぇなぁ…」
ポソッと呟いてからキジバトの鳴き声で爆笑していた母を思い出す。
ソファの上できっとだらだらしているであろう、母にもう一回キジバトやってやろう。ほんで笑ってもらって、元気出してもらってお風呂行かせよう。
よし、と私は立ち上がり貸し切り状態の展望浴場を後にした。
その後入った母も貸し切り状態だったらしい。
久々の大きな風呂にテンション上がった母は泳いだらしい。犬かきで。
子供か。
お風呂が済んだ私たちはバルコニーでジュースを飲む。
空色コーラは、あっさりしたコーラの味がした。
瀬戸きゅんは、後味の果汁感が凄くてなんかグレープフルーツとかを食べた後のような果汁感のちょっとした苦みが残って、それが濃厚なレモン感で…!とてつもなく美味しかった。
母は空色コーラ派。
私は瀬戸きゅん派だった。
でも、色は圧倒的に空色コーラ派!
夜の波の音はとっても癒し時間で、道中・入る前はちょっとどうなるかと思ったけど、すっごい良いホテル…。
所々、昭和感が漂うのもチグハグでツボだった。
すっごいオシャレなお部屋だったんだけどトイレの電気の表記が「便所」になってたり、テレビは地上波とBSだけだったり。。。
なかなか面白い。
朝食はセットメニュー。
パンは自家製でジュースは生絞り。
後ろで飲み放題の食べ放題。
ジュースマジのしぼりたてでどれも泡立ってたよ。
オレンジ・パイン、野菜ジュース。
野菜ジュースは多分セロリとバナナと小松菜とか入ってるかな?
あっさりしてて、セロリの風味とバナナの甘さが後に残る感じ。小松菜って言ったのは色がグリーンだったから、という理由。
パンもどれも小麦の味がしっかりしていて、有名パン屋さんのパンみたい。
私の家の近くはパン屋強豪店が多いので、パンに関しては何気に贅沢舌な私。そんな私のお眼鏡にかなった(いや、本当何様?)。
一番驚いたのは、食後のコーヒー。
母がめっちゃ感動していた。
ハワイアンコーヒーという名前で、マカダミアナッツとバニラで香り付けした限定コーヒーなんだって。
薫りから「えー?!美味しい!」と母に言わせたコーヒー。
母はキャラメルのような味に感じたらしい。確かにナッツの甘さとバニラの風味はそんな印象も与えるだろうな。
ナッツの香ばしさもあって、苦みもあってめっちゃ美味しかった。
何より、コーヒーって香り付けできるんだ、と初めて知った。
朝日を浴びた海を見ながらの食事は、なんとも優雅。
早朝は展望浴場に2人で行って、これまた貸し切りで朝の海を眺め、部屋に戻って帰る準備しながら海を眺め…。
ここで過ごす時間、全て海を眺めて過ごせた。
潮風は疲れると母は昔言っていたけど、そんな粘っこいものではなくて。
そよそよと軽やかな風が終始流れていた。
帰りの準備が終わった私はバルコニーでぼんやり海を眺める。
そこに母がやって来て2人でぼんやり海を眺めた。
来てよかったな、なんて感傷に浸っていてたら
ホーホ・ホッホホー、ホーホ・ホッホッホー
母・私、爆笑。
キジバトに感傷を全部持っていかれた私達は、恰好が付かないなぁ、と笑いながら無事帰宅したのだった。
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