『ヒュスタスペスの託宣』断片 1-15a

『ヒュスタスペスの託宣』は、ツァラトゥストラの第一の弟子にして庇護者であった王ヴィシュタスパ(Vištāspa)に帰されている預言書であるが、全体は失われ、引用によってのみ残る。

ヴィシュタスパは古来からアケメネス朝のダレイオス1世(BC 6c)の父ヒュスタスペスと同一視されてきた。ヴィシュタスパ王とダレイオスの父ヒュスタスペスの同一視は定説とはなっていない。

:::::以下訳文:::::

6. ローマのユスティノス、『護教論』I, 20.1

シビュラとヒュスタスペスは以下のように述べる。すなわち諸々の荒廃について、破滅が火によって来ると。


7. ローマのユスティノス、『護教論』I, 44.12

しかし悪霊たちの働きによって、ヒュスタスペスやシビュラや預言者たちの諸々の書を読む者たちに対して死が宣告されてきた。それは恐れによって、[悪霊たち]がそれらを読む人々が良き諸々の事についての知識を受け取ることのないように妨げ、彼らを自分たちに隷属させ続けるようにするためである。しかしながら[悪霊たち]はいつもこれをすることに成功できるわけではない。というのも我々はそれらを大胆に読むばかりでなく、知っての通り、それらが宣言することが全ての者たちにとって喜ばしいものであることを知っており、それらをあなたがたに精査してもらうべく提供するのである。そして我々が少しでも確信させることができるなら、これは我々にとって大きな益となるだろう。というのも我々は[種を播いた]農夫として、主人から報いを受けるのである。


8. アレクサンドリアのクレメンス、『ストロマテイア』VI.5; 43, 1 使徒パウロの引用とされるが、これ以外に知られていない

「またギリシア人の諸々の書を取りなさい。シビュラを読みなさい。どんなにそれが神が一なることを示しており、どんなに未来が示唆されていることか。そしてヒュスタスペスを取って、読みなさい。さすればさらにより輝かしくそしてはっきりと神の御子が描写されていることを見出すだろう。また、どれだけ多くの王たちが彼らの軍勢をキリストに対抗して整えるかを[見出すだろう]。[彼らは]彼と、彼の名を持つ者たちと、彼に忠実な者たちと、彼の忍耐と、彼の到来を嫌悪しているのである。」


9. John Lydus, De Mensibus, II.4:

というのもカルデア人とエジプト人のゾロアスターの信者たちとヒュスタスペスは七日間の週を諸々の惑星の数から取ったのである。


10. Aristocritus, Theosophy:

第四[書]において、…彼はとあるヒュスタスペスによる諸々の託宣を紹介している。[ヒュスタスペスは]ペルシア人たちとカルデア人たちの王であり、また敬虔であったが、それゆえ、彼によれば、[ヒュスタスペスは]救助者の受肉の神秘について啓示を受けた。そしてその巻の最後に、彼はアダムから[皇帝]ゼノンまでの非常に短い年代記を置いて、そこで彼はまた六千年間の完了の後で終わりとなることを確認している。というのも彼が言うには、こう書かれているからである。すなわち千日は主にとっては一日のようであり[詩編 89:4]、そして六日間で神は宇宙を造り、第七[日]に終わったのであって、六日間を数えるかのように、全てのことが終わることが六千年の連続の後であることは明白に必然なのである。


11. a.) ラクタンティウス, Epitome, 73:

そこで、これら全てのことは、預言者たちによって予言された告知と調和して、真実であり確かなことである。トリスメギストゥスとヒュスタスペスとシビュラたちが同じ諸々のことを予告したのである。それゆえ全ての生の希望と救済は神の宗教だけに置かれているということは疑い得ないことである。


b.) ラクタンティウス, Epitome, 71:

これらのことは預言者たちによって、また予言者たち[によって]、起ころうとしていると言われている。すなわち最終的な終わりが世界に近づき始めるとき、悪が増大するだろう….


c.) ラクタンティウス, Divine Institutes, 7:14.16:

この世界の預言者たちによる諸々の発言は、天の預言者たちと一致して、諸々のことの終わりについて告げており、そして少し後で、それらの破滅…。


d.) ラクタンティウス, Divine Institutes, 7:25.1:

これが預言者たちが、起こるといったことである。 私は彼らが明白に言うことから始めることを必要と考えたことはない。…私が言っているであろうことは、単純に他のものたちの諸々の著作から引かれた確証であって、私自身の諸々の言葉ではないであろう。私は、真実が我々だけによって記録され続けたのではなく、まさに我々を迫害し続けている人々によってもまた、それを理解することを拒んだことは真実であるが、[それでも記録され続けた]ことを指摘するだろう。


12. ラクタンティウス, Divine Institutes, 7:14.8-10,16-17:
…それゆえ七という数は正当で満ちた数である。というのも諸々の年の周期が完結されるには、七日の回転周期がある。また定まらない七つの天体があり、惑う者たち[惑星]と呼ばれる、それらの均等でない軌道と調和しない運動が諸々の季節と状況の変化のためと考えられている七つの星がある。 …時の六つの時期について。それは六千年のことである。神の大いなる日は千年の周期が完結された時に完結される…。…彼の宗教と彼の真実はこれらの六千年間労苦しなければならないが、一方で悪は優勢であり支配的である。また…第六千年の終わりにあって全ての悪が地から一掃され正義が千年間統治するであろうことは避けられない。この世界の預言者たちの諸々の告知は、天の諸々の預言者と一致して諸々のことの終わりと、少し後のそれらの破滅を告知している。彼らは枯渇され崩壊しつつある世界のある種の極度な老齢[状態]を描写している。さて予言者たちと預言者たちが最終的な結論が突然来る前に起こるであろうと言っていることについては、私は全ての情報源を調べて、それを欠けなく示す。


13. a.) ラクタンティウス, Divine Institutes, 7:15.19:

長い昔のメディアの王ヒュスタスペスは、今ヒュダスペス[Hydaspes]と呼ばれる川に名を残したが、後代のためにある尋常ならざる夢を記録した。それはある少年によって解釈され、このように預言している。トロイヤの種族の確立[訳注:ローマ神話では、ローマを建国(c. BC 750)したロムルスとレムスはトロイヤ戦争の生き残りのアイネアスの子孫とされた。]の長い前に、彼はこう言った。すなわちローマの力と名は世界から取り除かれる、と。


b.) ラクタンティウス, Divine Institutes, 7:15.11:
…荒廃と混乱の原因はこのようになるであろう。ローマの名は、現在その名によって世界は統治されているが、力はアジア[Asia]に回帰し、再び東は主人となり、西がしもべとなるだろう。


14. a.) ラクタンティウス, Divine Institutes, 7:16.4-8,10-14:

…彼は…政権の座を移すだろう。そしてそれから人類の混乱と破滅が続くだろう。それから真実に憎み、忌むべき時代が来るだろう。そのとき生は誰にとっても楽しめるものではなくなるだろう。諸々の都市は根こそぎにひっくり返され、それらは火と剣によってだけでなく、続けざまに起こる地震、洪水、長期に渡る病気と頻繁な飢饉によって死ぬであろう。大気は濁っていき、腐敗した有毒なものとなり、一部は時候外れの雨から、一部は土壌の旱魃から、一部は非常な寒さから、一部は非常な暑さから、それで人々は地上に果実を得ないだろう。小麦畑、果樹園、ブドウ園は何ももたらさない。それらは花を咲かせて大いなる希望を提供するが、未成熟なままでその[希望]を裏切るだろう。諸々の泉が、諸々の川と一緒に、渇き切って、それで飲むものが無くなり、水は血や塩水に変化するだろう。それで地上に家畜は無くなり、空に鳥は無くなり、大いなる混乱、尾を引く彗星、暗い太陽、色を変える月、落ちる流星によって人々の精神は乱されるだろう。年は短くなり、月は減じられ、日は短期間へと歪められるだろう。…最も高い山々も崩落し、平野と水平にされ、海は航行不能となるだろう。…それから、正義を理解しない民に対する神の怒りのために、剣、火、飢饉、病気が猛威を振るい、それら全ての上に常に押し迫る混乱があるだろう。それから彼らは神に祈るが、[神]は彼らの[言うこと]を聞かない。死が彼らの祈ることとなり、それは来ない。…[それにより]死者を祝し、生者を悼む。これらの諸悪と多くのこれ以上のことにあって、地上に荒廃があり、世界は外形も住人も失うだろう。…それゆえ人類はとどめを刺され、かつて千が行ったところに辛うじて百人が行くだろう。神の諸々の礼拝者のうちでさえ三分の二が死ぬだろう。三分の一が生き残るだろう。それらは精錬を通された者たちである。


15. a.) ラクタンティウス, Divine Institutes 7:17.9-11;18.1-3;19.5-9:

その時代に正義は囚われ、無垢は憎まれ、彼らの憎悪のうちの悪が、諸々の敵のように、善から強奪するだろう。法も秩序も軍の規律も生き残らず、誰も白髪の者たちを敬わず、孝行の義務を理解せず、女性たちや子供たちに慈悲を示さない。あらゆることが困惑し、混乱し、正しいことに反し、自然の諸律法に反するだろう。地全体はあたかも一つの公然とした破壊行為へと無駄に消費されるだろう。これが起こる時、義人たちと真理を追求する者たちは自分たちを悪から隔離し、諸々の荒野へと逃げるだろう。そして不敬虔な者がこれを聞くと、彼は怒りを燃やし、大軍と共に来て、全ての彼の諸々の軍勢で義人たちの住んでいる山を、それらを奪取するために包囲するべく来るだろう。[義人たち]は自分たちがあらゆる側において封じ込められ包囲下にあることを見ると、大声で神に叫び、天からの助けを懇願するだろう。そして神は彼らのことを聞き、天から偉大な王を、彼らを救助し、彼らを解放し、そして火と剣で全ての不敬虔な者を破壊すべく、遣わすだろう。それは神の霊感において行動した全ての預言者たちと、悪霊たちの教唆に対抗して行動した全ての[先]見者たちの共通の主張である。私が先に述べた者であるヒュスタスペスは、この最後の世代の不正を描写してこう言っている。「敬虔な者たちと信心深い者たちは自分たちを悪から分離し、涙を流し、泣きながら天へと自分たちの手を伸ばすだろう。それは木星[訳注:木星の守護神は最高神アフラ=マズダ]の約束を懇願してのことである。木星は地を見て、人々の声を聞いて、不敬虔な者たちを破壊するだろう。」 その[託宣の]全ては一事を除いて正しい。彼は神がするであろうことを木星がすると言ったのである。それでも神の子がその父によって全ての悪を破壊し敬虔な者たちを解放すべく遣わされることは、何らの悪魔的詐欺も無しに、これまで欠落することはなかった。…空から突如として剣が落ち、それで義人たちは聖なる軍の指導者がまさに降って来ようとしていることを知ることができる。そして彼は彼に同行する御使たちと共に地の真ん中に来るだろう。彼の前には消えない炎が進むだろう。御使たちの力が、[義人たちの]山を包囲していた全ての軍勢を義人たちの手に渡すだろう。その軍勢は第三刻から夕暮れまで殺されるだろう。血は激流となって流れるだろく。[不敬虔な者]の軍隊が全て破壊された時、不敬虔な者一人だけが逃げ、彼は自分自身の力の破壊者となるだろう。彼は反キリストと呼ばれる者であるが、彼自身は自分がキリストであると主張し、真のキリストに対抗して戦うだろう。彼が敗れる時、彼は逃げるだろう。彼は何度も戦いをやり直し、何度も敗れ、ついに四度目の戦争において、不敬虔な者が全てやり終えた時、彼は敗北して捕えられ、ついに彼の悪の代償を払うだろう。同時に、世界を破滅させてきた他の君主たちと暴君たちは彼と共に囚人となされ、かの王の前に運ばれるだろう。王は彼らを責め立て、彼らを非難するだろう。[義人たち]に対する彼ら自身の諸々の犯行を立証するのである。そして[王]は彼らを弾劾し、彼らを十分それに値する刑罰へと渡すだろう。悪がこのように一掃され、不敬虔が鎮圧される時、世界は平和を再び持つだろう。というのも長年それは誤謬と犯行の従属させられ、悪しき隷属を耐えてきたのである。もはや手で作られた神々の崇拝はないだろう。彼らの諸々の像は彼らの諸々の神殿から追い出され、彼らの諸々の台座から離されて燃やされ、彼らは共に彼らの異常な諸々の奉納物と共に燃やすだろう。

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