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Stenotrophomonas maltophilia Infection

Clinical Infectious Diseases 2022;74:2089–114
IDSA Guideline

Infectious Diseases Society of America Guidance on the Treatment of AmpC β-Lactamase–Producing Enterobacterales, Carbapenem-Resistant Acinetobacter baumannii, and Stenotrophomonas maltophilia Infections

Pranita D. Tamma, Samuel L. Aitken, Robert A. Bonomo, Amy J. Mathers, David van Duin, and Cornelius J. Clancy

The Infectious Disease Society of America (IDSA)は2021年 (online)にAmpC β-lactamase産生腸内細菌、カルバペネム耐性Acinetobacter baumannii、Stenotrophomonas maltophiliaに対する治療推奨を発表しています.
ガイダンスの中のStenotrophomonas maltophiliaに対する治療推奨の抜粋です.

· S. maltophiliaは好気性、ブドウ糖非発酵のグラム陰性桿菌で水生環境に広く存在する.
· S. maltophiliaは分類や複雑な系統は変化してきた長い歴史がある.
· S. maltophiliaは院内に存在する微生物と比較し、病原性は弱いと考えられているが、バイオフィルムや毒性因子を産生することで、病弱な患者(肺疾患や血液腫瘍が基礎疾患にある場合など)に定着・感染が可能になる.
· S. maltophiliaによる感染症はCarbapenem-resistant Acinetobacter baumannii (CRAB)の場合と同様に治療に難渋する.

· まずS. maltophiliaは重症感染症を引き起こしうるのだが、実際には(特に嚢胞性線維症、人工呼吸器依存患者で)S. maltophiliaが定着しているだけなのか、真の起炎菌なのか判断しにくいことが多い.
· S. maltophiliaは複数菌が検出された場合の一つとして培養されることも多く、治療ターゲットにすべきか迷う場合がある.
· 重要なこととして、S. maltophiliaは血液腫瘍のある患者にはかなり重篤な感染症を実際に引き起こすことがあり、主に出血性肺炎や菌血症によるものである.

· 第二に、S. maltophiliaが有する非常に多くの抗菌薬耐性遺伝子や遺伝子変異により、治療の選択肢が狭くなる.
· L1 metallo-β- lactamaseとL2 serine β-lactamaseは、ほとんどの一般的なβラクタム剤を無効化する.
· L1はペニシリン系、セファロスポリン系、カルバペネムを分解するが、アズトレオナムは分解しない.
· L2はアズトレオナムを分解するだけでなく、広くセファロスポリンに対し活性を持つ.
· S. maltophiliaは、内因性のアミノグリコシドアセチルトランスフェラーぜにより、アミノグリコシドに耐性がある.
· さらにS. maltophiliaは、複数の薬剤に対する排出ポンプを有しており、テトラサイクリンとフルオロキノロンが効きにくい.染色体に存在するSmqnr遺伝子によりフルオロキノロンの効果はさらに減弱する.

· 第三に、S. maltophiliaに対する標準治療が明確になっていない.
· S. maltophiliaに活性を有する薬剤の中での優先順位や、よく行われる併用療法の追加効果に関するデータが不完全なままだ.

· 最後に、S. maltophiliaの抗菌薬感受性試験についても問題がある.
· CLSIはS. maltophiliaに対する7つの薬剤(TMP-SMX、Ticarcillin-clavulanate、セフタジジム、セフィデロコール、レボフロキサシン、ミノサイクリン、クロラモフェニコール)のMIC解釈基準を作成した.
· Ticarcillin-clavulanateとクロラモフェニコールは実臨床では使用されないので、残りの5つの薬剤のMIC解釈基準が臨床医に提供されていることになる.
· セフタジジムとレボフロキサシンのMIC試験に関して細菌検査室で一般的に使用される方法では再現性に懸念があること、ほとんどの薬剤のブレイクポイントのために使用される薬物学的なデータが限られること、MICと臨床的予後の間の関連についてもデータが不十分であることから、MIC解釈基準の信頼性は低い状態である.

推奨項目は以下の通りです.

Question 1:S. maltophiliaによる感染症の一般的なアプローチは?
Suggested Approach:
· 軽症の感染症では、TMP-SMX、ミノサイクリン、チゲサイクリン、レボフロキシサン、セフィデロコールによる単剤治療を推奨する.専門家パネルでは、TMP-SMXとミノサイクリンを第一選択薬として推奨する.セフタジジムは、S. maltophiliaの内因性のβラクタマーゼにより無効であるため、疾患の重症度にかかわらず推奨しない.
· 中等度-重症の場合は、以下のどれかを考慮する.(1) TMP-SMXとミノサイクリンの併用療法、(2) もしTMP-SMX単剤治療で改善が乏しい時、TMP/SMXに他の薬剤(ミノサイクリン=最も推奨される、チゲサイクリン、レボフロキサシン、セフィデロコール)を組み合わせる.
· 他の薬剤を使用できない場合、セフタジジムアビバクタムとアズトレオナムを併用する.


Question 2: S. maltophiliaによる感染症におけるTMP-SMXの役割は?Suggested Approach:
· 軽症の場合、TMP-SMXの単剤治療が推奨される.中等症-重症感染症の場合は、TMP-SMXの単剤治療かTMP-SMXを含めた併用療法が推奨される.


Question 3: S. maltophilia感染症におけるテトラサイクリン系抗菌薬の役割は?Suggested Approach:
· 高容量のミノサイクリンが考慮される.中等度-重度の感染症の場合、少なくとも臨床的な改善が得られるまで、高容量ミノサイクリンと2剤目の薬剤との併用療法が提案される.
· わずかではあるがIn vitroでミノサイクリンが優れるというデータがあり、CLSIのブレイクポイントが入手できること、経口製剤であること、チゲサイクリンと比較してミノサイクリンの認容性が良いことから、専門家委員会はチゲサイクリンよりミノサイクリンを推奨する.

Question 4: S. maltophilia感染症におけるフルオロキノロンの役割は?Suggested Approach:
· 軽症の場合、レボフロキサシン単剤治療は選択肢になる.
· レボフロキサシン使用中には耐性の出現が懸念される.
· もし中等症-重症のS. maltophilia感染症を治療する場合、レボフロキサシンは他の薬剤(TMP-SMX、ミノサイクリン、チゲサイクリン、セフィデロコール)との併用療法のみで投与すべきである.


Question 5: S. maltophilia感染症におけるセフィデロコールの役割は?Suggested Approach:
· 軽症の場合、セフィデロコールの単剤治療は治療選択肢であるが、臨床データは限られている.
· S. maltophiliaによる中等度-重度の感染症の場合、少なくとも臨床的な改善が得られるまで、セフィデロコールと2剤目の薬剤との併用療法が提案される.


Question 6: S. maltophilia感染症におけるセフタジジムアビバクタムとアズトレオナムを併用療法の役割は?
Suggested Approach:
· S. maltophiliaによる中等度-重度の感染症でTMP-SMXやミノサイクリンを使用できない場合、セフタジジムアビバクタムとアズトレオナムを考慮する.


Question 7: S. maltophilia感染症におけるセフタジジムの役割は?
Suggested Approach:
セフタジジムは、S. maltophiliaの内因性のβラクタマーゼにより無効であるため、疾患の重症度にかかわらず推奨しない.


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