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The New York Times の仕事 その1

お久しぶりです。船津真琴です。
すっかりnoteをさぼってしまいました。
今回は最近した仕事、New York Times の仕事の事を書こうと思っています。

The New York Times の仕事ってどんなもの?

私も実は、ここ4、5年前まではほとんど知らなかったのですが、そういう新聞が外国には存在してニュースで聞くなぁ、という程度には知識がありました。

しかし、数年前に青山塾に入ってから、その講師である木内達朗先生のサイトをくまなく見るようになって、どうやら先生はNew York Timesで挿絵をよく描くらしい、しかもそれはすごい仕事らしいぞ、ということが分かってきました。

また、最近読ませていただいたLisa Kogawaさんのnoteで詳しく知りました。
ニューヨークタイムズに載れなかった私
https://note.com/lisakogawa/n/nca0a6eda29a0
ロサンゼルスタイムズに載った私
https://note.com/lisakogawa/n/n1ec523f427ed

こちらのnoteは、海外のイラスト業界の貴重な情報であるとともに、読み物としてもLisaさんの文才もあってすばらしく面白いです。是非読んでみてください。

とにかくNew York Timesに載るって言うのは、世界でちょっとしたすごいイラストレーターであることを保証されたかのような、Lisaさんの言うように「アメリカでは若きイラストレーター達のプロへの登竜門」であるそんな重要なお仕事だと思っています。
ですので、今回の依頼が来るまで自分が今その仕事をできるとは思っていませんでした。まず、私には海外の仕事の実績がまだ5件程度しかありません。それに仕事を依頼されるにはNew York Timesのアートディレクター(AD)に売り込みなどをしてコネを作らないといけないらしいですが、私はそういった活動をまだしていませんでした。
しかし、絶対いつかはしてみたい夢のお仕事でした。

何故、ほとんど無名のすごくない私がそんな仕事を依頼されたのか、New York TimesのADとどんなやりとりをしたのか、どんな制作の手順だったのか、などなど描いていきます。

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これが今回仕上げたイラストです。

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このようにレイアウトされ使ってもらいました。

名称未設定 3

サイトにも掲載されています。
こちらから該当の記事が読めます。
https://www.nytimes.com/2020/05/05/science/antarctica-byrd-distancing-expedition.html



ADからの依頼のメール

始まりは突然やって来る英語のメールです。それも夜中4時。
内容は短く、「ラフを一日後、本番データを3日後にあげてほしい。スケジュールの空きがあるかチェックしてくれ」というものでした。
たまたま夜中ふと目が覚めてスマホでメールを確認した私は、
なんの内容の仕事なのか、そもそも何の媒体の仕事なのか書いてくれよ、名前もファーストネームしか書いてないし。と、うさん臭く思いました。
しかし、メールアドレスにnytimes.comが含まれているのをみて、はっ!としました。

これは、Lisaさんのnoteでみたアレじゃないか?ヤバイ!うそだろ。。
何がヤバいって、私たちにはこの時点で時間が無いのです。メールには即返信が基本、少しでも遅くなったら、諦められて他のイラストレーターに仕事が回ってしまうらしいのです。
既にメールが来てから一時間が経っていました。その時点で反射的に「はい!可能です!」と一行だけで私は返信しました。

まじか、まじかなんで私に依頼が来たんだろう。謎すぎる。と私は落ち着かない気持ちで返信を待ちました。意味もなく部屋をうろうろしながら。

しかし30分経ってもメールの返信がありません。
ダメだった…!せっかくの千載一遇のチャンスを逃した。そもそも、NYと日本では時差がありすぎるし、こんな夜中にメールチェックできるわけないし、不利すぎるよ!!!オーマイガーだ本当に。

いや、これは何かの詐欺かもしれない。私にこんな依頼が来るわけないしな。返信なんか来ない方がいい。

いやでも、このメールの文面のそっけなさLisaさんのnoteの事例そのものだ!なんで私はあと30分早く目が覚めなかったのだろう!!

こんな感情のジェットコースターみたいなアップダウンを感じながら手に汗を握ってメールを待つのはたぶん初めての経験でした。

ダメもとで、もう一回メールしてみよう。
さっきのメールは英語が変だったのかったのかも知れない!
耐えきれなくなって私は、フラれた彼氏に未練がましくメールするように2度目のメールを送りました。今度は丁寧な文面で。

メール返信が来る!

なんと、二度目のメールを送るとすぐに返信がありました。
また短い文章で簡潔に、料金とサイズの指定があり、記事の文面が添付されてきました。
やった~~!やったぞ私は!
すごい達成感です。まるで一仕事もう終わってしまったかのような。
いや、ここからがスタート地点なんですが…。


しかし、送られてきた記事をザっと見て私は冷静になってしまいました。それはもちろんで英語で一万字程度のかなりの長文です。

問題点1 感じる英語の壁
私は英語力についてはかなり不安があり、勉強している最中なのですがTOEICの試験でもこんな長文は読んだことがありませんでしたので。もちろん今の英訳ソフトは優秀だけど、さすがにニュアンスまでは訳せずに変なことになってしまうことがよくあります。これを読み込んでそのイラストを描くことは私に可能なんだろうか…。

問題点2 そしてアイデア出しの不安
もう一つ不安なのは、どんなイラストを描くかということです。

海外のイラストのカテゴリーではコンセプチュアルイラストレーションというものがあります。私もふんわりとしか知識が無いのですが、普通の絵画のような風景の絵よりもアイデアを先行させたタイプのイラストのことです。日本で言うとビジネスイラストが近いかもしれません。

木内先生は日本で正統なコンセプチュアルを描ける数少ないイラストレーターです。先生のNew York Timesで使用されたイラストをみてほしい。
https://kiuchi.myportfolio.com/the-new-york-times-1

海外でバリバリやっている人で私が好きなのは
Gérard DuBoisさん
https://www.gdubois.com/

Emiliano Ponziさん
https://www.behance.net/emilianoponzi

いずれもNew York Timesの常連です。
こういったイラストを期待されているとしたら、日本で普通の風景のイラストを描いてきていた私にアイデアが出せるのだろうか?

問題点3 タイトスケジュール
その上に、ラフが一日、仕上げに3日という短い期間で仕上げなければならないなんて。いやむしろこのスケジュールはここでは長いほうで、3~4時間でラフを描いて仕上げに一日なんてこともあるそうです。。信じられないですね。
返信が来た喜びもつかの間、急にいろいろな不安を感じて胃が痛くなってきてしまいました。


ちょっとここまでで当時の緊張感を思い出してしまって手汗が半端ないので、一区切りして続きはまた次回にさせて頂きます。
それではー。

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