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平日二泊三日で雨の尾道へ行って来ました

憧れの瀬戸内の町。
坂と階段と水辺の町。
尾道は「日本の暮らしの縮図」「箱庭的都市」などともいわれている。
僕にとって尾道は、大林宣彦監督の映画 "尾道三部作"と結びついたノスタジーな町。
また、十数年前ロードバイクに夢中になっていた時には、いつかしまなみ海道を走ってみたいという憧れの町。

会社で35年の永年勤続を祝って休暇と特別手当が出たので、何処へ行く?という話をしていたところ、相方が是非一度行ってみたいということもあり、それならば、と5月の最終週の月曜から2泊3日の旅程で相方と行ってきた。

色んな思いが詰まっていて「いつか行ってみたい町」だった割には、優先順位的になかなか順番が回って来なかった町。

東京駅から新幹線のぞみで広島県福山まで3時間半、山陽本線に乗り換えて約20分たった4駅。
行ってみれば関東からもそんなに遠くない。

日程を選ぶにあたって仕事の都合もあり5月中のうちにと思っていたが、GWは外さないと混んでいるだろうし、土地勘もないので5月半ばに開催される広島サミットの週は避けておいた方がいいだろうか、
とかぐずぐずしていたら旅行の予約が遅くなってしまい、
「5月の最終月曜日の29日からなら宿泊施設もなんとか空いています」
とギリギリだった。

あとは出発まで気になるのは天候。
梅雨入りにはまだ早いからなんとかなるだろうと考えていたら、まさかの台風がフィリピン沖に発生して日本列島へ進路を変えそうだという予報。
「うわぁ、台風のことは全く眼中になかったね」

出発前日、荷物旅程の3日間は台風の直接的な影響ではないもののほぼ雨だということが確定し、スーツケースに荷物をパッキングしながら
「こうなったら雨も込みで楽しむしかないか!」
とYoutubeで"雨の尾道"というキーワードで検索した動画を見て、なんとか気持ちを盛り上げていました。

当日の朝、雨がすぐそこまでという曇天、スーツケースを持って周りの乗客に舌打ちされながら通勤電車に乗り込んで東京駅まで行き、雨の降り出した瀬戸内尾道まで約4時間の旅へと出発しました。

***

正午前に尾道に到着。
尾道駅前ロータリーをバックにはすぐに坂と階段と山。反対側に目を向けると尾道水道。
「うわぁ!本当に山と海に挟まれてる」
と感動したいところだが、空はなんとか雨を持ちこたえているものの、どんよりとした曇天で薄暗くあまり感動はない。
しかも観光地なのに、ほとんど誰もいない。
「めっちゃ人少ないやん」
(その理由は後ほど分かるのだけど)

「尾道だと、ここが一番スタンダードみたいですよ」とJTBの人が言っていた駅前のホテルのフロントに荷物を預けてチェックインまでの3時間、長傘を持って散策に出掛けることにした。

***

駅前から線路沿いを海に向かって左に進んでいくとすぐに尾道観光の中心になる尾道本通り商店街になる。
ここは屋根もあり1.2kmに渡って古い建物の中に新しいお店がどんどん出来ているということで、雨の日でもなんとかなるだろうと思っていたのだが。。。

ほとんど店が閉まっている。。。
そして人もいない。
「これじゃぁ、寂れた地方のシャッター通りやん!」

「きっと土日の休日がメインだから月曜は休みが多いんだろうね、明日はきっともっとお店が空いているよ」
なんて呑気な事を言ってたが、むしろ火曜・水曜の方が商店街は休みのところが多く、結局滞在中の3日間賑やかな商店街を見ることは出来ず、チェックしていたお店にも行けなかった。

尾道本通り商店街をメインストリート=動脈とすると、左右にこんな感じの路地=静脈がたくさん枝分かれしており、ある路は尾道水道へ、ある路は山の階段道へと抜けれるようになっている。
そして、そうした枝分かれの路地にも、民家に混じって若い店主がカフェや雑貨屋などを営んでいる。


路地を抜けた先には踏切があり、その先の階段を登っていくとそこには寺社と山間の住宅地が迷路のように入り組んで建っている。

***

「とりあえずお昼にしよう!まずは尾道ラーメンだよね」
と路地裏で見つけた"大胡商店"さんという若い女性がワンオペでやっている屋台のようなラーメン屋さんに入った。

大胡商店さんのラーメン

尾道ラーメンの定義を知らないが、おそらくこれも尾道ラーメンなのだろうか。
とろとろのチャーシューとぶ厚めの支那竹と刻みねぎ、醤油ベースの昔ながらの中華そばという感じ。
最終日の昼に食べた老舗で有名な"日の出食堂"さんと比べると共通点があった。

日の出食堂さんのラーメン

日の出食堂さんの方はスープが少し醤油味が薄めだが、同じくチャーシューと支那竹、刻みねぎ。
さらに関東の中華そばとも違う共通点は、豚の背脂が入っているところ。
これが尾道ラーメンの特徴じゃないかな。
豚の背脂といえば、あぶらマシマシのラーメン二郎を思い浮かべるがそんなにしつこくはない。あっさり旨味があって何杯でも食べられそう。
スープはしょっぱめなので、高血圧の人は飲み干さない方がよいかも。
なんでも、尾道ラーメンのお店は、大胡商店さんも日の出食堂さんも喫茶店のモーニングセットならぬ朝ラーメンをやっているそうだ。
うん、これなら朝から食べられるかも。

***

まだチェックインまで2時間以上あるし、雨も小雨なので、千光寺のロープウェイで上に昇ってきた。
大胡商店さんからぶらぶらと本通り商店街を10分も歩かないうちに、ロープウェイ乗り場前が左手に見えてくる。

ロープウェイは片道500円、往復で700円だけど帰りは歩くことにして片道切符を買う。
ロープウェイは15分間隔だけど、混雑時は定員になるといつでも出発するという柔軟な運用みたい。
すでに半分近く乗っているロープウェイに乗り込むとすぐに出発。
途中、一瞬だけ豪雨になる。
ものの数分で頂上駅に着くと、文学の小道という山道を歩いて降りると千光寺さんの境内。

境内からも尾道水道が見える。
晴れてるとキラキラしてとても綺麗なんだそう。残念だったなぁ。

尾道には3つの山にそれぞれ多層塔があり、尾道水道のフェリーから山側を見ると、一度に3つの多層塔が見えるということで、これは日本でも尾道だけなんだそう。
「京都でも一度にいくつもは見れないんですよ!」
この日の夕方訪れた尾道商業会議所記念館の方が教えてくださった情報です。

***

千光寺から下って天寧寺の三重塔の脇路を通って降りていくと"猫の細道"という路地を通ることになる。
名前の通り、"猫"にちなんだ美術館、カフェなどが集まっている。

雨が降っていたからなのか、残念ながら"猫の細道"では猫には一匹もお目にかかることができなかった。

そういえば、尾道はどうやら"猫"を観光名物にしているようだ。
商店街やお土産にも"猫 "にちなんだものがたくさんあるし、千光寺を挟んで反対の西側には"猫の小道"という場所もある。
こちらは猫絡みの施設としては"ネコノテパン"という地元の名物パン屋がある。
こちらには翌日の火曜に行ったのだが、残念ながら火・水と休日で見事に外してしまった。初日の月曜に行っておけばよかった。。

閉店日のネコノテパン。
営業していないととてもパン屋さんには見えないのだが、これが尾道。
古民家をそのまま活用して可愛いオシャレなお店に内装リフォームしている。

***

歩き疲れたので、線路沿いのカフェで休憩。
尾道は本当にカフェには困らない。
ただし、月〜水は避けた方がよいだろう。
少し人は増えるが、お店は木〜日なら確実に空いているはず。

このお店は本当に線路脇に張り付いているように建っている。
鎌倉江ノ電沿いを少し思い出すような立地。

この線路の下が通路になっているのだが、本当に線路が目の前で柵もガードもないので、ちょうど電車が通るタイミングだとものすごい迫力でちょっと怖いかも。

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チェックインの15時を過ぎたので、商店街を駅に向かってぼちぼちと歩いて戻ることにする。

尾道のスイーツ屋さんといえば老舗は金萬堂本舗さんのようだ。
瀬戸内の名産レモンやはっさくを使ったパウンドケーキなど、美味しいお菓子がたくさん。
駅前のお土産屋にも売っているが、商店街の本店であれば1つづつから買えるので、気になるお菓子を全部買って、気に入ったものを箱で買って帰るのがおすすめです。

あと、尾道名産といえば帆布製品もあるようです。
数件尾道帆布の看板を掲げた工房と直売店があります。
かなりしっかりした帆布バッグでしたよ。

うなぎの寝床ならぬ"あなごのねどこ"と名前のついた細長いゲストハウス(宿泊所)とカフェが一緒になったお店。

鶴瓶の家族に乾杯でV6のイノッチが尾道へ来た時にも来店したところですよ。ちなみにこのカフェは学校給食をイメージしているそうです。

奥へ続く通路をずっと進んでいくと、セレクトが素敵な小さな本屋さんがあります。


こんな昭和の遺跡のような看板そのままの古いお店が軒を連ねています。
1軒1軒、ここは何だろう?と覗きながら歩いているので、とても時間がかかります(笑)

こちらが尾道観光情報を教えて下さった尾道商業会議所記念館。
尾道市重要文化財に指定されているこの建物は内装こそ改装されているが、建物そのものは大正時代に建てられた築100年なんです。

奥の階段から2階へと登っていくと議場があります。
こちらは今でも多目的室として、会議や講演会、コンサートなどで誰でも(おそらく市民だけ?)予約すれば利用できるようですよ。
国会中継でも見慣れた階段状になった円形の議場は、現存する最古のものとして日本中からも視察される人がいらっしゃるそうでした。
それにしても、隣の席とみっちりなので窮屈だろうな。。。昔の日本人はサイズが小さかったからOKだったのか?

***

翌日の火曜日は1日あったのですが、あいにく朝からしとしと雨が降っていました。残念だけど予報どおり。

今日はまず観光名所の旧和泉家別邸、別名尾道ガウディハウスを観に行きます。

尾道駅の北口から少し坂道を登って行くとすぐの住宅街にぽつねんとあります。
尾道駅は表玄関の反対側と比べて小さい北口は地元の人だけが使う改札なんでしょうね。

なんとも趣のある建物だなぁ。
この旧館は当時大工さんが1人で3年かけて建てたものらしいです。
その後、NPO法人が買い取り空家再生プロジェクトとして再建して、国の有形文化財に指定されているそうです。
でも、「ここが観光名所ですよ」と言われないと、少し古めの建物として通り過ぎてしまったかも。

この後、坂道の民家の間を、路地を、階段をずんずん進んでネコノテパン工房を目指して進んで行きました。
(残念ながら、ネコノテパンはお休みでしたが)

しばらく尾道の坂道の風景をお楽しみ下さい。

とにかく、山肌にびっちり張り付くように広がる民家とその間を張り巡らせた坂道、路地、階段。
たまに原付バイクも見たけれど、原付きでも登れないんじゃないか?という階段ばかり。
観光客としては楽しいけれど、地元で暮らしている人はそうとう大変なんじゃないかと思いました。
一見したところ坂の途中にスーパーなんてなさそうだったし(そもそもそんな広さの平地がない?)、特にご年配の方はいざ買い物と行っても下まで降りていくのも大変じゃないだろうか?
バスなどの交通機関も通れないだろうし、自分の足で歩くしかないし。
うーん、考えれば考えるほど大変そうだ。
1時間程度歩き回っただけでも、空家のような家が目立ったのだけど、やはりこの場所を捨てて引っ越されたのだろうか。
尾道の行政の課題って実は大きいんじゃないだろうか、と思った。
現地に来てみないと気づかなかったけれど。

***

雨もなかなか止みそうにないが、せっかくなので渡船(フェリー)で向島にも行ってみようか?ということで尾道水道まで降りていった。

向島まではしまなみ海道の橋でも行けるのだけど、道幅がそんなに広くなく渋滞なども考慮して、尾道市としては渡船の利用を推奨しているらしい。
乗船するための運賃も人だけであれば60円から100円まで。
(乗り場によって異なります)

渡船のフェリー乗り場は3箇所あって、駅から一番遠いところが水上から尾道方面を見た時に3つの山を全部見渡すことが出来て景色がよい、ということだったので、そちらから乗船。
こちらは座るベンチもあるからなのか、1人片道100円。
(動画しか撮っていなかったので、写真がありませんでした。。)

***

こちらは渡船を降りた船着き場前。
「向島の渡船のあたり、何もないよ〜」とは聞いていたが、
「本当に何もない!!」
左側に見えている白い壁の建物は映画セットらしいが、中も窓から覗くだけで、うーんなんとも言えない。。

このまま来た船に乗って帰るのもつまらないし、同じおじちゃんに運賃払うのも恥ずかしい。。。「お、もう帰るのか?」みたいな、20分ほど歩いて隣の違うフェリー乗り場まで歩くことにした。

ここも普通の田舎の住宅街なので、見るものもなく淡々と歩く。

今日の昼はネコノテパンで買ってホテルで食べようとしていたのだけど、閉店していたので、途中で見つけた向島のパン屋さんで仕入れて帰ることにした。

住田製パン所さんで、1916年創業の老舗パン屋さんらしいです。
先代が和菓子屋さんから店をはじめたので、当時から変わっていない"餡"が売りらしいので、あんぱんなどを買い求める。
なんでも、店主のおじさんが手術の日だったそうで、店番していたお母さんが心配そうでしたが、ちょうど僕らがいる時に「手術無事に終わったよ〜」って電話が入って、
「あーほっとした。これでやっと落ち着くから昼食とったら少し昼寝するわ、わざわざ来てくれてありがとうね」
よかったよかった。

20分程度でもう1つのフェリー乗り場に到着。
船が来たら案内も何もないけれど様子を見て歩いて乗船。


船内というかほとんど大きい筏のようなデッキに立ち乗り(笑)
このフェリーにはもちろん座席はありません。
なので運賃は60円。安っす!

雨は止んだけど、どんよりしている。。
キラキラの瀬戸内海よ、尾道水道よ。。。

***

帰りもほんの数分で尾道側に無事到着。
商店街を駅方面へ戻ります。

そういえば、尾道の商店街には"無人店舗"が目に付きました。
ここも無人店舗。
まず「無人セルフ写真館」
30分2,000円だったので止めておきましたが(笑)、LINEでお友達になると
ドアの解錠コードが送られてきて、中に入ってカメラで撮影できるみたいでした。
プリクラみたいな機械なのかなぁ。
確かにLINEで登録してもらうとトラブった時に個人が特定出来るのでいいかも。
そして、矢印のある青い看板の"おむすび屋しろくま"さん
お昼におむすびも買って帰ろう!
矢印に沿って行きます。

お、表通りに店舗があるのかな?

これも無人店舗、というか自動販売機やん!
うーん、これは買わなくていいや(笑)

無人店舗がとにかく多い尾道商店街です。
これもDXなのか!?デジタルで古民家再生なのか!?

***

やっと猫さまみっけ!
八百屋さんで買っている猫さまのようでした。

僕は飲めませんが、尾道のドラフトビール。
レモン味でめちゃくちゃ美味しかったそうです。

翌日の水曜日の昼過ぎ、福山へ戻る時間になってやっと晴れ間で尾道が見送ってくれました。
うん、少し青空が見えてきた。

駅前の尾道水道前遊歩道も人手が出てきた。
手前はスケッチ画を描いていらっしゃるおじさま二人。

ということで、せっかくの尾道はほぼ雨の中での観光 & 週前半で商店街がほぼ休日、という「もっと事前に調べとかんかい!」という状況でしたが、それでも十分楽しめましたよ。
尾道は本当にこじんまりとしていて、1日もあれば(坂道と階段に負けない体力が続けばですが笑)、主要なところは歩いて回ることが出来ます。

今度は秋の魚介が美味しくなる季節に、倉敷か安芸・宮島あたりと合わせて来ようかな、と思いました。

長い記事ですが、読んで頂いてありがとうございました。


<了>





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