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「アニメージュとジブリ展」に行ってきた

2023年一発目の展覧会は、松屋銀座にて開催された「アニメージュとジブリ展」である。たまたま、どこかのラジオで、スタジオジブリプロデューサーの鈴木敏夫がゲスト出演していた番組を耳にして、この展覧会を知ったという偶然があり、所用で広島に出かけた帰りに東京に立ち寄り、銀座に行ってきた。あいにくの雨模様であったが、そのせいか銀座は人も少なく、密を避けることもできた。


雑誌『アニメージュ』といえば、今も発行されている徳間書店のアニメ雑誌である。創刊は1978年。スタジオジブリの鈴木敏夫が二足のわらじで創刊に関わり、副編集長、編集長も務めた。

『風の谷のナウシカ』、『天空の城ラピュタ』など初期の宮崎駿作品の映画は全て『アニメージュ』で特集されている。展示を見ると、スタジオジブリの作品の広報を、アニメージュが総力を挙げて担っていたことがわかる。

単に宣伝だけではなく、宮崎駿、富野由悠季、押井守,庵野秀明といった今やアニメーションの巨匠と言われる人びとの活躍を黎明期から特集で取り上げ、人材の発掘も行っていた。作品の宣伝のみならず、アニメ制作者の「人」にスポットを当てた独自の紙面構成により、作家主義的な編集方針が貫かれている。『アニメージュ』は、日本のアニメ史の中核を担っていた人材の貴重な歴史証言としても大変貴重な資料である。


校了直前の深夜1時の編集部を描いたイラストが展示されていた。昼夜逆転した戦場のような混乱ぶりのなか、想像を絶する激務で雑誌は毎号作られていった。なによりも感じられるのが、編集部員のアニメ愛と底知れぬパワーである。会場全体がアニメ愛に溢れる、クリエイター魂が感じられる空間となっているのだ。つくづく、作り手の対象への愛と熱が作品のクォリティを上げるガソリンであることを痛感させられる。

アニメ雑誌は他にも『月刊ニュータイプ』『アニメディア』があり、いずれも80年代に創刊されて、40年近い歴史を持つ。80年代、90年代はネットもなく、雑誌だけが唯一の専門的知見を得られるメディアであった。『アニメージュ』とアニメ映画の両輪で、ジブリのアニメは歴史を紡いでいたのだ。


現在、雑誌の持つ影響力は、いかばかりであろうか。ジャンルを問わず雑誌の休刊が相次ぐ時代だが、雑誌ほど密度が濃く、専門的知見を手軽に得られる媒体は他にないのではないか。何でもネットだけで全ての情報が手に入ると思い込むのは、とんでもない誤解である。むしろ、今の時代こそ、雑誌でしか得ることができない情報を摂取し、インタビュー記事を精読するべきではないだろうか?

次世代のアニメ監督は、新海誠、細田守、新房昭之、片渕須直、幾原邦彦、湯浅政明、吉浦康裕、水島精二、岸誠二など人材は多士済々である。単に作品を鑑賞するだけでなく、彼ら監督の作品愛や思想的背景、制作の秘話など、雑誌でしか知り得ないことはたくさん存在する。いつの時代も、ディープに作品を楽しむ方法は雑誌にある。スマホで簡単に情報を得られる時代だからこそ、あえて雑誌へ回帰することに面白さを見出すべきではないか?

書店に行け!好きなジャンルの雑誌をもっと読もうではないか!

この展示を見てそう思ったのであった。

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