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2021優駿牝馬観戦記~人生難しいですね~

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これまでにG1のーいや別にG1でなくてもいいー勝利ジョッキーインタビューで「早く厄年終わってほしい」と語った騎手がいただろうか。多分この文章はレースの観戦記というよりミルコのインタビュー拝聴記になると同時にまともなレース回顧にならないだろうということを筆者が誰よりも予感している。

とりあえず真面目な話からしよう。思ったよりも先行争いが激化したのは想定外でこれに関してはおそらくステラリアがハナを伺う雰囲気を見せたことに周りが反応したからだろう、あるいは一説にあったソダシの逃げだけは許すまじと腹に思っていた騎手もいただろうか。大外から前に付けたステラリアに内が突っ張り流れは淀みのないものとなった。前半が72.5秒、後半が72秒ちょうどとなりそこまで極端な前掲ラップでこそないが上位は揃って差し追い込み勢いが占める結果に。

ソダシはスタートを決めたが周りからのプレッシャーも強かったかレースの前半は折り合いを欠く形となった。結果から考えるとおそらくもう少し折り合っていたところで勝ち負けまでは厳しかっただろうが、純粋なスタミナというよりは気性面でこの距離は少し適性から外れるものだったと言わざるを得ない。クロフネ産駒は基本的に一生懸命走りすぎるのでどうしてもこの傾向が強いように思う。そんなソダシが直線伸びあぐねるところを早めに脚を使ったユーバーレーベンが強襲、狭いところを捌いたアカイトリノムスメと大外を伸びたG1初騎乗藤懸貴志が駆るハギノピリナがそれに迫るもユーバーレーベンがしのぎ切って惜敗続きにピリオドを打つ戴冠を果たした。以下直線の捌きがもう少しスムーズならと悔やまれるタガノパッション、この春はまだ素質だけで走った雰囲気もありながら連続で掲示板を確保したアールドヴィーヴルが続いた。惜しかったのはククナで早め先頭からあわやのシーンを演出、負けた中では一番強かったと言っても過言ではないと思う。アカイトリノムスメに乗れなかった悔しさを形で見せた若き東のエースは来週人生がかかる大一番である。

勝ったユーバーレーベンに話を戻すと、長い間私が競馬を観て来た中でもトップ3ぐらいには入る(悪い意味で)唖然とさせられた騎乗に泣いたアルテミスSを除けば常に際どいところまで食い込んで来ていた馬でようやくここですべてが噛み合ったという印象。ソダシ、アカイトリの人気二騎が道中位置を下げたように後ろ有利のレース展開も同馬に向いた。人気二騎がややちぐはぐなレースぶりになる中進出が実にスムーズで直線通った位置も今日の馬場にマッチしていた。人生は難しいはずだが今日のレースに関しては全てがうまく行ったと言える。

ミルコのインタビューを受けて批判を承知で書くとレース後の岩田騎手とのハイタッチにも思うところがたくさんあった。そう、本当に人生は難しいのである。無敗のアイドルホースだって簡単に負けてしまうし、結局総帥はこの勝利を見ることが出来ず逝ってしまったし、昨年のヒロインデアリングタクトー奇しくも総帥の弟が率いるクラブの馬であるーは先日大きなけがを負ってしまった。ミルコも岩田騎手もいろいろあったしね。。それでも競馬も人生も続いていく、続いていくからこそ辛い事ばかりではなく楽しいことも起こり歴史は紡がれていく。上位3頭の血統表を見てもそれは明らかでユーバーレーベンの祖母はマイネヌーヴェル、アカイトリノムスメの母アパパネは言うまでもなく、ハギノピリナの祖母もクラシックを賑わしたハギノスプレンダーである。展開に泣いたククナのお母さんもまた展開に泣いたクルミナルなのも一興か。

ユーバーレーベンが勝って岡田のおじいちゃんの夢(グランパズドリーム)がようやく叶った。いつのまにかその夢は競馬ファンの悲願にすらなっていたふしがあるように思う。そしてそれはミルコデムーロという不遇の時を過ごす本来陽気なイタリア人によってもたらされた、なんだろうか1番しっくり来る人だったように感じた。ミルコの日本語がとても上達していて、この厳しい時期にも彼が腐らず努力を惜しんでいないことが伺えた。今日ユーバーレーベンは勝った、それは間違いなく最高の結果なのだけれど天国の岡田のじいちゃんにとっても陣営にとっても「パドックを見てこの馬に乗りたいと思った」とミルコが言ったことがホースマンとしては何より最高の瞬間のようにも思えた。

こんなに人間くさいG1がこれまでにあっただろうか。ミルコが天に何度もステッキをかざしたこと、ソダシに初めて黒星がついたこと、藤懸騎手が岩田騎手との進路争いを制したこと、ビッグレッドファームがついにクラシックを制したこと、2021年のオークスは忘れられないレースになった。きっとこれからもこんな風に私たち競馬ファンの難しい人生のところどころに名レースや名シーンが煌めきを差し込んでくれるのだろう。

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