地方×マーケティング・マーケターに立ちはだかる “5つの課題”
こんにちは、桜井です。
先日、私が運営するnoteメンバーシップ「地方マーケの輪」内で地方マーケにおける「5つの課題」について記事を書きました。
※コミュニティ限定です。
そこで、挙げた「地方マーケの5つの課題」は以下の通りです。
私自身が地方マーケに携わっている中で、今まさに、リアルタイムで直面しているそれぞれの課題とその詳細についてまとめてみたいと思います。
1:俯瞰性を持ったマーケターが少ない
まず俯瞰性とは何か?を定義したいと思います。それは以下の領域をカバーしていることを指します。
俯瞰性の定義
MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の策定
短期(1年以内)及び中長期(5年以内)の具体的な目標設定
コンセプト・ブランドスローガン、パーパスなどの確認/再定義
その他改善に向けた目線合わせを行う
市場分析
MVVの確認・決定
市場分析(3C/5C・PEST・SWOTなど)
他社事例から市場機会を考察
上位概念の目線合わせを行った後、市場分析を行い全体を俯瞰し確認
自ブランドの理解
ブランドエクイティ・ピラミッド(BEP)の整理・作成
STP(Segmentation・Targeting・ Positioning)
POP/PODの整理
ユーザーインサイトの考察
市場分析で見出したニーズと自ブランドの強みが重なる部分を探る
ユーザーが自ブランドでなければならない理由を特定する
コンセプト策定
ビジネスコンセプトを言語化
コンセプトハウスを用いたコンセプトライティング
作成したコンセプトを定量・定性調査(調査設計含む)
市場分析&自ブランドの深掘りを「消費者に向けた言葉」で言語化
マーケティング戦略
これまでのアウトプットをもとに4P/4C視点で顧客体験最大化を設計
売上目標に応じた販促予算、利用メディア、コンテンツ、クリエイティブなどの戦術的な施策を検討
明日からどんな取り組みができるのか?を可視化する
上記の領域を「1社」または「1人」でカバーするのは極めて困難です。私自身、スキルセットとして持っていると自負していますが(もちろん足りないところもある)、使えるリソースが限られていることと、目標達成までに時間がかかってしまうため、すべて1人でやることは稀です。
また、具体的に上記セクションの「何から着手すればいいのか」「どのくらいやればいいのか」「誰に任せればいいのか」といった勘所を持っていなければいくら俯瞰性を持っていてもダメだと思います。
地方における「マーケティングとブランディングの関係性」
少し話題はそれますが、よく聞く質問として「マーケティングとブランディングは領域を分けた方がいいですか?」と言う質問について、地方マーケにおいては両方の理解がなければ成果を出すことはできないと思います。
そもそもブランディングとマーケティングを分けて業務を依頼するメリットはあまりないと思うのですが、あえて言うなれば以下のように分類しています。
いうなれば、視点の違いであり、1人が両面を持たなければブランドマネジメントなどできないのではないか?すら思っています。これもまた、マーケターに求められる俯瞰性の1つだと思っています。
このように、成果を出すための「目的到達に向けた業務領域の俯瞰性」「ブランドとしてありたい姿を到達する多面的な俯瞰性」「その上で意思決定を行う」ことが必要となります。
2:リーダーシップを取れるマーケターが少ない
ここでもまず、「リーダーシップとはなにか?」について定義します。
リーダーシップとマネジメントの違い
リーダーシップとマネジメントの違いを理解していく上で、3つのキーワードをあげます。それは、
ⅰ)影響力の源泉
ⅱ)行動の視点
ⅲ)使命
です。
ここでの結論としては「どちらが優れているか」ではなく「使いどころ」が違う、ということです。そして今回地方マーケにおいてはリーダーシップが必要である、ということです。
極めて要約すると「諦めない・逃げない・ブレない」
つまりすご〜くシンプルに要約するとリーダーシップにおいては「諦めない・逃げない・ブレない」ということが必要となります。
1つ目に挙げた俯瞰性を持つことは前提だとすると、「一貫性がなくなってきた・ズレてきた」 または「チームの士気が落ちてきた」ときに軌道修正できるか?チーム全体にきちんと伝えて目線合わせができるか?進むべき方向性を示すことができるか?が責任者に問われるのだと思います。
当然ながら、心の中で思っていてもダメで、言動によって動かすことしかできません。また言動でしか成果を上げることはできない。
時には嫌われることやウザがられることもありますが、「言いにくいことも言う」「まぁこの人が言っているのならしょうがない」というのがリーダーシップのポイントだと思います。
3:洞察力に優れたマーケターが少ない
地方マーケにおける洞察力とはなにか?それは以下の2つではないかと思います。
①顧客(クライアント・利害関係社)への洞察力
②消費者(ユーザー・利用者)への洞察力
洞察力とは大きく2つに分けれていて、1つは顧客、もう1つは消費者です。具体的にいうと、
となります。
洞察力をシンプルに言い換えるとそれぞれの「欲」は何か?を特定することが大切だと感じています。
しかし欲はなかなか表には出てきません。この「表に出ていない裏側を察する力」というのはすぐに身につけることはできないため、地方マーケに携わるプレイヤーでも会得している人は稀だと思います。
マーケティング用語で言う「インサイト(消費者の無意識的な行動を支配している人間の本質的・本能的欲求に基づくもの)」ですが、これを仮説立てするのはとても難しい。
なぜ難しいか?それは「消費者でさえ自覚していない欲求であることもあるから」です。
前提として、人は自分の気持ちや感情を正確に自覚していないため、思っていないことかつあまりいいことじゃないことを言われると、多くの場合はムッとします。その後、否定します(ホントなのに)。これがインサイトが答え合わせできない理由のひとつです。
(インサイトだけの記事を書いたことがあるのでよかったらどうぞ)
他者の「欲」を特定するためにどうすればいいか
では他者の欲を特定するために私がどんなことをしてきたか?をここでまとめてみたいと思います。
私の場合は、
純文学の行間を学んだ
一般の人になぜなぜを繰り返し聞いた
欲求に塗れている人たちを見て・体験して学んだ
です。
純文学は物語の展開は少ないものの、登場人の心の機微や感情の背景を描くことを目的にしている書物が多いため、インサイト(らしきもの)を擬似体験できます。私の場合は感受性が鋭い中学・高校・大学あたりで触れていたため、潜在的に心の機微を読み取ることができていたのかもしれないな、と思いました。
とはいえ、大人になっても大変有効なのでビジネス書の合間に純文学を読んでみることをおすすめします。
一般の人へのなぜなぜ攻撃も結構重要です。例えば「どうしてその服買ったの?」と聞き、「どこで・いくら・だれと」などの質問から「どうしてその柄なの?どうしてそのブランドなの?どうしてECじゃなくて店舗なの?」と知り得る情報をすべて聞き尽くす、というやり方です。そうすると「服を買いたいのではなく、友達と一緒に出かけたかっただけだった」、「気分転換をしたかっただけだった」などの欲求の原石が見つかることがあります。
最後に欲求を全面に出している方々(金銭欲求・承認欲求・自己実現欲求など)が、なぜその欲求を欲しがり続けるのか?生まれや育ちなどに共通点はあるか?どのようになったらその欲求は満たされるのか?を調べる、と言う方法です。欲求を全面に出している方々は表に出る機会が多いため、取材記事やインタビュー、SNSなどがあるため容易に情報にアクセスできます。
以上のように洞察力を鍛えることで地方マーケに貢献できるのではないかと思っています。
4:産学官を横断するマーケターが少ない
産学官とは何か
まず意味から説明すると、もともと「産学連携(さんがくれんけい)」と言われ、新技術の研究開発や、新事業の創出を図ることを目的として、大学などの教育機関・研究機関と民間企業が連携することを指します。ここに政府・地方公共団体・地方自治体などの「官」を加えて、「産学官連携」「産官学連携」ともいうようになりました。
主にはメーカーの新商品開発や研究などが主たる使い方なのかなと思うのですが、私は地方マーケにこそ産学官連携が必要だと痛感しています。
改めて産学官とは「産(事業会社・民間企業)、学(高校・専門学校・大学)、官(行政・自治体)」の集合体を指すわけですが、それぞれが独立して独自の目線を持っているため(当たり前ですが)、3つの組織体が連動していないように思います。
マーケティングに絡むそれぞれの目的として、産は「自社の利益」が目的となるし、学は「生徒への学び・就職先の斡旋」、官は「税収の拡大・住民のための規制緩和・事業者への補助金」なのかなぁと思っています。
この3つを横断的に行き来できる人がいると強いなぁと思うのですが、現状はほぼいないのが現状です。
1人産学官をやってみた所感
この1年、1人で産学官に携わってみました。
※学との取り組み
1年間産学官を体験して思ったのは、「連動できる」ということです。また連動することで、ヒトモノカネがただでさえ足りない地方においてはとてもメリットのある取り組みになると感じました。
具体的なエラーと課題は以下の通りです。
つらつらと書き連ねましたが、優先度の高い課題を各1つずつ挙げると、
【産】「リソース(ヒトモノカネ)」と「最適な意思決定」をサポート
【学】「実践的な学びの機会」と「実践的な指導者」の拡充
【官】「正確な課題認識」と「課題に沿った実行管理」
ができれば連携ができるのではないかと思っています。私は運良くそれぞれ3つの3つの組織体に所属が出来ているため、これからもこれらを繋げるべく精進していきたいと思います。
5:実戦と教育を横断するマーケターが少ない
最後に実戦(現場)と教育(学舎)を横断する難しさと大切さについて書いてみます。
教育にかける私の想い
昨年(2022年)より、専門学校(静岡デザイン専門学校)の非常勤講師として、マーケティング・ブランディングの授業を3つほど担当しています。
地方にマーケティング思考を実装させるべく、そしてできるだけ若いころから体系的なマーケティング・ブランディングに馴染んで欲しい!という私の想いから授業を受けもつようにしています。
結果、授業で使用するスライドが1000ページ越えとなり、日常業務が逼迫する結果となっています(助けてください)。
私自身、産学官でいうと「産(ビジネス)」寄りの仕事が多いため、どれだけ多くのアイデアや提案を生み出したとしても「それって儲かってるの?」という視点は必ず持つようにしています。
というのも、さまざまな教育機関でマーケティング・ブランディングのカリキュラムや授業内容を見せてもらうたびに「教育のためのマーケティング」「実戦とは無縁のマーケティング」と感じることが多いからです。
企業を招いてインタビューし、商品開発のブレストを行う
フィードワークと評して週末だけワークする
学生と共同の商品・サービスをつくる(特に売らない)
これらのアクションそのものに罪はありません。が、問題なのは上記のアクションはすべて「プロセス」であり「ゴール」ではない、ということです。
しかし、教育のプログラム上、生徒たち(もしかすると教育機関ですら)がゴールだと勘違いしてしまうことを危惧しています。本来、事業者としてのゴールとは利益の創出であり、事業の継続、さらにいうと雇用創出だと思っています。
だからこそ、現場感のあるプレイヤーがプロジェクトを管理することで、より締まった、現実味のあるものに進化することができるのではないかと思っています。
だから動いています:①非起業家のための地域プロデューサー育成スクール
じゃあ桜井、お前はどうなんだよという声が聞こえてくるので、私なりに実戦と教育を横断するためにやっている2つの施策についてご紹介させていただきます。
1つ目がローカルプレイヤーズ、です。
新潟にいるきら星の伊藤綾さんと意気投合し、「起業家じゃなくても地域社会を変えられる仕組みをつくりたいよね、ということでスクールを開校しました。おかげさまで第1期生の集客も順調でみなさんのおかげで開校に向け進んでいます。
もしご興味がある方は8/31まで(奇しくも私の誕生日)なので、ぜひご検討ください!事前にどんなスクールなの?というご相談も乗っていますのでお気軽にどうぞ!
だから動いています:②石畳茶屋のOPEN
静岡県島田市にカフェ・としょ・サウナが併設した石畳茶屋 縁-en-がOPENしました。
コンセプトは「みんなの居場所」。地元に住んでいる子ども・ 学生からビジネスマン・主婦・お年寄りにとって 毎日立ち寄りたくなるような場所になるようにコンセプトの設計からサービス設計・オペレーション・SNSでのコミュニケーションなどを横断的にマネジメントしています。
島田市金谷とは、静岡県島田市の西部に位置する人口約1.7万人の小さなまちです。大井川をはじめとする豊かな自然を誇り、静岡県におけるお茶生産の中心地。
しかし、
JR金谷駅前に立ち寄る場所がなく寂しいこと
孤独や不登校など、地域の社会問題に向き合いたいこと
金谷宿の歴史を多くの人に知ってもらいたいこと
などの課題も抱えているため、「みんなの居場所となる場所をつくろう」ということで施設OPENに至りました。まだOPENして3週間ほどでバタバタしていますが、少しずつ自分たちの色を出していきたいと思っています。
だから動いています:③新しい学舎(自社事業)
私自信、最後は畳の上で最期を迎えたいという欲求と古民家が好きなことから、静岡市にあるとある古民家を貸してもらい、リノベーションを進めています。
現在設計中で着工は来年以降となりますが、ここで
シェアオフィス・コワーキングの運営
教育事業(研修)
飲食事業(カフェ)
民泊事業
などを行いたいと思っています。もし興味あるよ〜って方がいらっしゃればぜひ声かけてください!
以上が、私が感じる、地方×マーケティング・マーケターに立ちはだかる「5つの課題」でした。
1つでも共感してくれる方がいらっしゃれば嬉しいですし、共感してくださったなら本記事をシェアしてくれるともっともっと嬉しいです!!!
最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。
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