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学校教育×キャリアコンサルタントがもたらす未来の幸せ

私は2023年夏から、NPO法人が運営している「Eキャリ部」の活動に参加しています。「Eキャリ部」は、キャリア教育に関心を持つ大人が参加しているコミュニティです。参加者の多くが、「キャリアコンサルタント」の資格を持っていることが大きな特徴です。(資格がなくても入部は可能です)

入部当時、資格取得を目指して勉強中だった私は、学校外からキャリア教育に関わっていこうとするキャリアコンサルタントの方々の活動に非常に興味がわきました。また、参加者には教員以外の方が多く、より広い視点から学校教育にアプローチする手法に刺激をもらいました。

今回は、私が「教員×キャリアコンサルタント×Eキャリ部員」として、
勤務校で「キャリアコンサルタントと中学生の1on1」授業を実施して感じた「学校教育×キャリアコンサルタント」の未来への可能性について書いていきます。


1on1授業実施までの活動

Eキャリ部と勤務校教員をつなぐ

勤務校で2月後半に実施される「立志式」という行事に向けて、ぜひEキャリ部のプロジェクトを活用していきたい!と考えた私は、早速学年主任やキャリア教育担当の先生に話をもっていきました。これまでも自己理解やキャリアビジョン形成のワークを行ってきた学年だったので、前向きに検討してくださり、プロジェクトが進んでいくことになりました。

立志式
読み方:りっししき
子どもが数え年15歳になったことを祝う、主に中学校で開催される式のこと。式の目的としては、大人になるための自覚深める将来への具体的な目標持たせるなどが挙げられる式の内容中学校ごとに異なるが、主に、将来に関する決意表明する有名人講演会開催されるなどがある。また、中学校により名称が異なり立春式」や「元服式」と呼ばれることもある。

実用日本語表現辞典

綿密な打ち合わせ

Eキャリ部の活動の特徴として、現場教員としっかり生徒の課題や目指すビジョンを共有した上で、授業をつくっていくことがあげられます。今回のプロジェクトに向けて行われたオンラインでの打ち合わせは6回!(21:00以降実施)日中は別の仕事をされながらの打ち合わせは、とても大変だと思うのですが、よりよい授業にするために意見を出し合うという活動は非常に有意義なものでした。

「ありたい姿の名刺づくり」

打ち合わせを進めていく中で、キャリコンと生徒の1on1面談の前に、Eキャリ部主導で、自分自身の「ありたい姿」を考える授業を実施することになりました。ここでいう「ありたい姿」とは状態・価値観・生き方といった、自分の中にある核のようなものを指しています。生徒には、それぞれの「ありたい姿」を名刺にしてもらい、どんな想いでその名刺を作成したかということも含めた自己紹介をし合ってもらいました。現在と未来をつなぐ上で、非常に効果的な学習となりました。

1on1授業の実施

授業前の生徒

今回、学校規模や時間の関係で、学年全員ではなく抽出型で1on1を実施しました。約60名が参加することになったのですが、「自ら希望した生徒」だけでなく「先生から勧められて参加した生徒」も多く存在しました。特に、立志式に向けた話をした際に、あまり将来のことや自分自身のことについて考えられていない生徒が半数以上を占めていました。また、親でも先生でもない大人と話すということで、緊張している生徒も多く見受けられました。

1on1授業の流れ

1.事前アンケート回答
(今回の授業への期待度、悩みを相談できる大人がいるかどうか…など)

2.キャリコンとの1on1(1人あたり15分間)
(全国各地からキャリコンの方がオンラインで参加。現地にも3名のスタッフが常駐し、環境面のフォローを実施。事前に作成した「ありたい姿」の名刺をもとに面談を進める)

3.事後アンケート回答 及び 振り返りシート記入
(キャリコンとの会話をどう感じたか、自己肯定感やキャリア形成力の変容を明らかにする問い…など)

活動後の生徒の様子

私は、生徒が面談後に振り返りを行う部屋にいたのですが、まずその表情に驚きました。みんな驚くほど晴れやかな表情だったのです。表情もさることながら「1on1どうだった?」と聞くと、ほとんど全員が第一声「楽しかったです!」という返答でした。「好きなことの話を聞いてくれた」「あなたならその目標達成できるよと言われた」など、自分の話を受容・共感してもらえたことに満足感を感じていたようでした。このことから、中学生にとって自分を否定せずに認めてもらえるという経験が非常に大きな意味をもつのだと実感しました。

事前事後アンケートを比較したところ、「自分には長所がある」と回答した生徒が70%から91%と21%の増加「自分は夢や目標をもっている」と回答した生徒が53%から91%と38%の増加で、自己肯定感もキャリア形成力も向上していることが分かりました。

このように、生徒の言動とアンケートのデータから、キャリコンとの1on1が生徒の成長に大きな効果をもたらしたことが明らかとなりました。

現場の先生方の反応

今回の授業にも積極的にかかわってくださった勤務校の先生方に、授業の感想をたずねると、生徒の変容に驚くとともに、とても喜んでありました。特に、普段自分の心の内をあまり明かさないような生徒が、キャリコンの方と話したことを嬉しそうに報告する姿が印象的だったようです。このような授業はぜひ来年度以降も継続していきたいとおっしゃっていただきました。

1on1授業を終えて

学校教育×キャリアコンサルタントの効果

私が考える効果は大きく3つあります。

1.キャリア教育の充実
 専門家の視点、キャリア理論などに基づいたキャリア教育が実施できる。
 前年度の授業をそのまま実施するのではなく、時代のニーズや生徒の課題  
 に沿って授業を創造していくことが可能となる。

2.教員の負担軽減
 専門家にアドバイスをもらいながら、授業が実施できるので、1から全部
 教員自ら準備しなくてもよい。

3.学校と社会のつながり
 第3者の視点が加わることにより、学校内の常識や慣習が覆されたり、
 生徒が社会に目を向けられたりするようになる。

特に3つ目の「学校と社会のつながり」については、特に私が意識している部分でもあるので、最後に改めてまとめます。

学校教育×キャリアコンサルタントがもたらす未来の幸せ

今の中学生が歩んでいく未来は、どんな時代になっていくのでしょう。

「今ある仕事の〇割がなくなる」「変化の著しい時代」「主体的にキャリア形成しなければならない時代」「キャリアの自己管理」etc…

学生生活が終わったら、ほとんど猶予期間なく、社会の一員として働くことになる生徒たちのために、学校教育でつけさせることができる力がもっとあるのではないか。この思いは、私がキャリア教育に力をいれるようになった原動力の一つです。

学生の期間というのは、所属している学校によってある意味「保護」されています。そこにいるだけで「○○学校の学生である」と保証されています。しかし、卒業などにより、その「保護」が外れるときが必ずやってきます。
もちろん企業などに雇用されれば、その企業に「所属」することになるのですが、部署の異動や仕事内容の変更やライフステージの変化などによって、自らの「所属」がゆらぐ時期が訪れるのです。

そんなときに自分の現状を見つめなおしたり、「ありたい姿」を言語化したり、キャリア形成を自ら行ったりしながら、自分で自分を幸せにできるようにするスキルを学校教育で習得させたいと考えています。

学校と社会をつなぐ

私のイメージする「学校と社会のつながり」には「横のつながり」と「縦のつながり」があります。(下部イメージ参照)

~学校と社会の横のつながりと縦のつながり~

横のつながりは現在における空間的なもの。生徒が社会の一員であるという自覚をもつことを指します。そのつながりを育む活動の例としては、地域でのボランティア活動や、企業と学校が連携して行う授業などがあります。

縦のつながりは、ある生徒にとっての現在いる地点「学校」と将来いる地点「社会」の時間的なものです。このつながりは、予測不可能な部分もあるため、どんな将来がきても対応できるような力をつける活動が必要となります。

私は、この「学校と社会を横にも縦にもつなげるもの」として「学校教育×キャリアコンサルタント」が有効だと考えています。

まず、「横のつながり」ですが、キャリアコンサルタントは学校現場からすると第三者つまり「社会」側の立場です。したがって、学校教育にキャリアコンサルタントを積極的に受け入れることで、学校にいながら「社会」とつながる機会が得られるということです。

次に、「縦のつながり」ですが、キャリアコンサルタントは何度も言うように「キャリアの専門家」です。これまでの経験からの学びの言語化、自分の強みや長所の自覚化、徹底した受容による自己肯定感の向上など、将来の「社会」生活に通じるような機会を提供することができます。

現在、「学校教育×キャリアコンサルタント」の取り組みを先進的に実施しているのが、名古屋市です。市内の中学校にキャリアアドバイザーを配置し、キャリア教育の実践に努めています。

「学校教育×キャリアコンサルタント」の取り組みが、全国的にもっと広がって、すべての生徒が学生のうちに1度はキャリアコンサルティングを受けられるようになることを願い、その実現に向けて、Eキャリ部の活動や、勤務校及び勤務自治体での活動を進めていきます!

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