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愛情表現

音楽で

今年のグラミー賞最優秀アルバム賞を受賞したジョン・バティステ。実に11部門にノミネートされていた。アーティストとしてまさに絶頂、輝かしい瞬間だったはずだ。が、ノミネートが発表されたまさにその時、8日前に発覚した恋人の白血病の再発、しかも前回よりも侵攻性が強い白血病と闘うために化学療法を開始するところだったと言う。お祝いのメッセージが間断なく届く中、これからの辛い治療、治るかどうかもわからない不安。明暗2つの出来事、その両方を掌握、吸収し、なんとか心の均衡を保たないと、悲しみに全てを持って行かれてしまう状態だった。

二人は骨髄移植の前に結婚(今年2月)。が、夫となったからと言って、コロナ下では、術後にそばにいることも許されず、今や妻となったSuleika Jaouad(ニューヨークタイム紙に最初のがんの闘病を綴ったコラムを書いたり、TED Talkで話したり、著書『Between Two Kingdoms』もある)はただ一人病室で不安、死ぬかもしれない恐怖、治療の苦しみ、病と向き合う。

静けさの中、まるで忘れ去られたような、空洞のように感じられる病室に一人座って、自分に起こった事に頭を巡らせる時の孤独感を彼女がジョンに伝えると、そこから30分コンピュータに向かって何やらやっていたかと思うと、30分後に彼女のために作曲した子守唄を演奏してくれたのだそうだ。下の動画の5分くらいのところでジョンがピアノで演奏している曲だ。それを聞いて、まるでジョンが隣に寝ているように感じたと言う。以後、毎日、彼女のために子守唄を作曲。

ジョン曰く、音楽には人を癒す力がある。病室をそれで満たしたい。それが自分なりの彼女のサポートの仕方であり、支え方であり、励まし、応援する方法だ、と。上の動画の6:15辺りなのだが、英語では”For me, that's my way." と言っていて、彼女への愛を"Because I love her"と言った陳腐な表現ではなく、実にシンプルに、だけど真摯にストレートに語っていると私は感じ、感動し、この動画を何度も再生した。

暗闇(苦しみ悲しみ)が迫り、覆い尽くそうとする。だけど、灯り(希望)をともすんだ、灯りに、光に目を向け、光を持ち続ける、しっかり掴んではなさい(Darkness will try to overtake you, but just turn on the light. Focus on a light. Just hold on to the light.)とジョンが語るところに予断を許さぬ病状であることが伺え、胸を打たれる。

日本語だったら「天国と地獄」と表現されるのを、英語では「Triumph (勝利)and adversity(逆境)」って表現するのが印象的で、救いというか、自分が何かもしかしたらできるように感じる。(天国と地獄って、もう決まっていて、自分ではどうにもできない気がするのは私だけ?)

馬で

このインタビューの、特にトップアーティストが語る、For me, that's my wayというフレーズ(人それぞれ愛情の注ぎ方、愛し方、愛の表現方法がある、それでいいし、それしかできない、できることをやるだけ、と私は勝手に解釈)を聞いて感動した日、いつもの乗馬公園の覆馬場で、あるホースマンがちょっと元気な馬を調教するのを目にした。力で抑えず、忍耐強く、声をかけて興奮して走り出そうとするのを落ち着かせていた。後で聞いたら、奥様が乗れるように、つまり女性の力でも十分コントロールできることを意識して調教しているとのこと。Oh, that's his way!  音楽家は音楽で、馬乗りはこうして馬で愛を表現するのね! と思った次第。

とにかく

上の動画でも少し流れるジョン・バティステの音楽、元気にしてくれます。

字幕付きの動画があったので、SuleikaさんのTED Talkも貼り付けておきます。

なお、インタビューは、グラミー賞授賞式の前に放送された、私が毎週楽しみにしているCBSのSunday Morningという番組からのものです。

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