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ペンギンの親友

僕にはペンギンの親友が居る。彼はいつも僕の部屋のテーブルで、のんびりとしていて、暖かいミルクばっかり飲みながら、テトリスをしている。そんな彼をなんともなく見ている時間がとても幸せだ。
僕はいつも、奇矯な人間や理不尽なルールに急き立てられて生きているので、疲れて帰ってくる。すると彼はのんびりとした声で「おかえり」と言ってくれる。

僕は弱いから、しんどくなることがある。先の見えない将来や、出会えるか分からない幸福についてとかの事を考えてしまって、不安になる。そんな時には、ペンギンの親友を強く抱きしめる。
「君は、不安にならないのかい?」
「もちろん、ペンギンだからね。」
「ペンギンが先の見えない将来の事を思ったらどうなるんだ?」
「分からない。ペンギンだから。」
「君は何が分かるんだい?」
「ペンギンと人間は大きく違う。だから考え方の根本が違う。君達は太陽の暖かさの元に生きてきただろ?僕達の地元では、太陽の暖かさなんて知ってる変わり者のペンギンなんて数匹いるかどうかだよ。」
「ならば、分かり合えないのかな?僕達、人間と、ペンギンは?」
「確かに、分かり合えないね。でもさ、同じ属性の2人より、真逆の2人の方が引かれ合うんだ。右と左、空と海、ペンギンと人間。君は、ペンギンの僕が持たない知識と、文明を持っている。僕は人間の君が持たない力強さと、生き抜く力を持っている。だから足りない物は、無いんだ。」
ホットミルクを飲んでるペンギンは眩しそうに窓の外を往く人々を眺めている。僕も窓の外を眺めて居たが、とても青い空だけを眺めていた。


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