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母は伊勢の神様と仲良し

母の介護と旅立ち、そして向こうの世界とこちらの世界の架け橋㉓

何がきっかけだったのか忘れてしまいましたが、ある時母と話していて、
お伊勢さんに行ってみる?
と、私が聞いたことがありました。

高齢の母が遠出なんてしないだろうな・・・
と、尋ねておきながら、そう思っていたら

行きたい!
と母が答えたんです。

えっ?ホントに?
と、びっくり!

えっ?お伊勢さん本当に行く?
と、再度聞き直してみると

うん、行きたい。

再びびっくり!

じゃあ、行こうか?
いつがいい?

いつでも。

せっかく母が行きたいと言うのなら、これは実現しなくちゃ、と、早速計画を立てることにしました。

電車?バス?
いや、最寄り駅まで辿り着くのも大変。朝の満員電車なんてもっと無理💦

じゃあ、車!
私が運転するしかない!

と、一大決心をして車でお伊勢さんまで行くことにしたのです。

長距離運転なんて初めてだし、高速を走るのも不安。
だったらゆっくり休み休み下道を走ろう。
いるものは?
あれもこれも・・・あった方が安心かも?と、どんどん増えていく💦

その頃はまだ酸素チューブをつけてはいなかったのですが、それでもついつい心配してあれこれ荷物を増やしてしまっていました。

そしてその当日、朝早く起きてドキドキで出発したのです。

生まれて初めての、母と二人でのお伊勢さん。

途中で体調崩したりしないかしら?と、心配しつつも、
何時間もかけてなんとか無事にたどり着いた伊勢神宮内宮。

入れるか心配だった一番近い駐車場にも運よく止めることができて、一安心。

でも、内宮の長い砂利道を歩くことなんて母にできるかしら?
本殿の長い階段は・・・?

そんな私の心配を母は次々とクリアしていってくれたんです。

元気な人でも大変な長い砂利道も、巾にばらつきがある歩きづらい石の階段も、母は自分の足で歩いてくれたんです。

あまりの感動に、本殿の真ん前で母を抱きしめて泣いてしまったくらいです。
まわりに参拝の方がいっぱいいらっしゃったんですけどね💦

そんな様子を見てか、いろんな方に声をかけていただきました。

頑張っていらっしゃいますね
大丈夫ですか?
何かお手伝いしましょうか?

お伊勢さんにいらっしゃる方々は皆さん本当にあたたかく優しい声を掛けてくれます。

その日から何度もお伊勢さんに行くことになったのですが、毎回本当にたくさんの方々に声を掛けていただいたのです。
母があまりにも細くて小さくて弱々しくて、気になって声を掛けたくなってしまうのかもしれません。

ある時は駐車場がいっぱいでしばらく待つしかないかなと思っていたら年配の男性が走ってきて、
今から車出すからそこに止めなさいってわざわざ誘導してくださったことも。

母とお伊勢さんに行くと、毎回不思議なくらいにいろんな幸運に恵まれていました。

天候や、様々なタイミングの良さ、出会う人達。

本当にありがたいことだね
と、母といつも感謝していました。

母はお伊勢さんととっても相性がいいのかも
と言ったら、返ってきた言葉が

お母さんは伊勢の神様と仲良しだから

でした。

それを聞いた私は素直に、本当にそうなのかもと思いました。

母は伊勢の神様に呼ばれて行ってるのかも、そして守られているのかも
素直にそう信じられることばかりでした。

なぜかいつも、あ、何月何日にお伊勢さん・・・
と、唐突に思い浮かんだ日に仕事も上手く休めて、本当に行けていたので、
多分母が伊勢の神様に呼ばれて、私はそれをお手伝いする役目だったのかもしれないって、本気で信じていました。
今振り返ってみても、きっとそうに違いないって思えます。


このMAPもお世話になりました

母は体力が衰えてきても、変わらずお伊勢さんへは行き続けていました。行き帰りの休憩は少し増えて、長い参道は砂利道を進める電動車いすをお借りして、また多くの方からお声をかけて頂きながら、伊勢の神様との交流を本当に楽しんでいてくれました。

母が旅立ってからかなりの時を経て、私は一人でお伊勢さんに行ってみました。

真っすぐにそびえたつ木々の間から差し込む美しい光も、凛とした澄んだ空気も、足を運ぶ度に感じる砂利の音も、すべてが母につながってしまいました。

でもそこは、そんな私の悲しみの涙も、心の痛みもみんな包み込んでくれる優しさに満ちていました。

今、母は好きな時に自由に、伊勢の神様に逢いに行っているんでしょうね、
きっと。


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