私の父は年下 5
結局祖母は間に合わなかった。
連絡付かずで
父が亡くなったあと
叔母に祖母のいる家まで連れていってもらった。
朝方で
やけに静かだった。
隠してあった勝手口の鍵を手に取り
鍵を開けた。
落ち着いているような
焦っているような
変な感情だった。
「おばあちゃん、
…お父さんが死んじゃった…」
祖母は
慌てるふうもなく、
出掛ける準備をし出した。
「夢見とった。
○○(父の名)が遠くに行くって言いよった。」
ポツリと静かに教えてくれた。
父は祖母に会いに来たのだろう。
祖母の目に涙はない。
ただ、ただ、
寂しそうだった。
たぶん、
私が一生忘れないであろう場面がある。
火葬場から
父の遺骨と共に帰った時、
ただいまを言いに廊下から
祖母の部屋を覗いた。
小さな背中が
窓の外をボーッと眺めていた。
広い家に
1人残った祖母の気持ちを
想像すると
今でも胸が締め付けられる。
我が子に先立たれる気持ちは
想像してもし切れないだろう。
中学生だった私でも
なんとも言えない気持ちになったのを
覚えている。
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