見出し画像

助かる作り置き(肉味噌、味付けキクラゲ)|酒と肴 その七十八

咲く花に足も止めず素通りするなんて、一体いつから情け知らずになったのでしょうか。

雪月花で酒を呑み、回る天井に星宙ほしそらの運行を見ていた頃。
美しき自然を愛でた故の苦しみは、自業自得と受け容れられるものでした。

それが今では仕事のためと、花ざかりの梅を横目に、駅へと急ぐ体たらく。

さりとて終わりも見えないのですから、穴の空いたグラスにビールを注ぐようで虚しさを覚えます。

若さの峠は既に越え、終電まで働く気概はございません。とは言え早出に加え、夜も2、3時間は残業です。

翌日のことを考えると晩酌も控えてしまうので、帰りの電車でチェックする特売チラシがささやかな楽しみ。
載っている食材から週末のつまみを考えることで、押し寄せる睡魔をやり過ごします。

ようやく這々ほうほうの体でスーパーに到着しても、遅い時間ではお目当ての品は大概売り切れです。哀れ、東京砂漠の先に見つけたオアシスは、幻と消える蜃気楼。
先日も、シーチキンLフレークが4缶で298円(!)と数年ぶりのお値段だったのに、間に合いませんでした。

その代わりと言っては何ですが、ストック食材を使った作り置きで、心慰める術を覚えました。
人間とはよく出来たものです。最近のヒットをご紹介します。

まずは肉味噌。
冷凍していた豚ひき肉、あとは常備している生姜と長ネギ、それと定番の調味料があれば手軽に作れます。

後ろに見えるのはキャベツと人参の浅漬け、余ったら大概これにします

濃いめの味付けなので、ご飯がススム系。数日はいけますし、アレンジも可能です。
酒呑みのお気に入りは、縦半分にカットして冷やしたピーマンにのっけて食べるやつ。普段よりビールを多めに用意しておくと良いでしょう。

続いては味付けキクラゲ。
こちら単体よりも、豚骨ラーメンとの相性がバッチリ。九州フェアで見つけた「うまかっちゃん」にトッピングします。
スープを口に運べばキクラゲのコリコリ、ネギのシャキシャキが相まって、口の中が程よく賑やか軽やか。後引く辛みが、抜群の味わいでした。

ピリ辛のキクラゲがスープを味変してくれます

豚骨ラーメンと言えば、麺はちょいと硬めが好み。
のびてしまったら遣る瀬ないので、写真は撮りません。乳白色のスープにキクラゲ、青ネギ、ゆで卵、焼豚が浮かぶ様子は、春霞たなびく風景のようで、詩的でもありました。記録よりも記憶を大事にするスタイルです。

残ったキクラゲは翌日のお弁当に収まりますが、明太子と一緒に白飯にのっけてもいいですね。夢が広がります。

こうして忙しい日々も、作り置きのおかげでどうにかやっています。

さあ、明日は週末。散りゆく梅で花見と洒落込んで、久しぶりに天井を回してみましょうか。

メニューと材料
・肉味噌(豚ひき肉、ネギ、生姜、味噌、砂糖、醤油)
・味つけキクラゲ(キクラゲ、砂糖、醤油、みりん、ラー油、すりごま)

肉味噌の詳しいレシピはこちら!

■□■ 次回店番のお知らせ ■□■

西日暮里BOOK APARTMENTさんの棚をお借りして、酒と料理の読みものを中心に集めた本を販売中です。
次回は3月25日(土)12:00〜16:00で店番に入ります。

お江戸の東、谷根千エリアのご近所。暖かい日が続いてますので、そのあたりには桜も見頃でしょうか。お散歩のついでに、ぜひ足を伸ばして頂ければと思います。

この記事が参加している募集

イチオシのおいしい一品

仕事について話そう

頂いたサポートで酒を呑み、それを新たな記事にすることで「循環型の社会」を実現します。 そんなほろ酔いで優しい世界、好事家の篤志をお待ちしています。