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一度死んだから言えること!

◎幻覚妄想の日々、ICU編

幻覚とは、実際に無いものがあるように知覚することで、妄想とは現実にはありえないことを信じ込んでしまう事と、Googleで調べると書いてありました。

私の場合はそれが両方であり、いわゆる薬による副作用で幻覚が夢の中で起こり、その幻覚夢を信じ込んでいたわけです。

一般的には、覚せい剤などの違法薬物の使用者が起こすものだと知られていますよね。ですが病院にも末期治療のための”麻薬”が置かれてあり、苦痛を軽減する代わりに幻覚症状が現れるというのは、あまり知られてませんが事実ですので、私に投薬されたなにがしらかの薬によって、それは持たされたわけです。

あまりにもリアルなので、目覚めても現実だとしばらく思っていました。しかし、実際には現実をズレるので「あれ?おかしいな。狐につままれているみたい」といつも考えてました。

今だからこうして理解できていますが、当時の私は、自分に起きているのが幻覚症状とか妄想とか全く理解していなかったので、ただただ日々振り回されていました。

そんな幻覚妄想も、次第に病室での介護に慣れるに従い見るものが、身近な日常へと変わっていきました。

ある朝私はふと目覚めると、時計は6時前を指していて、「もう少し寝れるな」と思っていました。すると静かな病室に騒がしい音が響いてきました。看護師長らしき女性が、何かブツブツと話しながら回って作業をしています。

どうやらベッドからベッドを本当に飛び回っていて、まるで曲芸師みたいにバランスを崩しません。あっけにとられてみていると、私の頭のベッドの縁に飛び乗ると、しゃがむやいなや次のようなことを言いました。

師長「あなた歯磨き自分でしてるの?
  「どうやら無理そうね。口を開けなさい!」

そういうや否や口の中に歯ブラシを突っ込んで、ごしごしと勝手に磨いてくるのです。「痛い痛い」と言っても辞めるどころか、ブラシの柄が歯茎に当たり、あまりの痛さに悲鳴を上げるほどでした。

師長「人に頼まないと磨けないなんてダメな人ね」

と言いながら、次々とベッドへと移り飛んで姿を消していました。みんな何も文句を言わず、黙って従っているのが不思議でしたが、そもそもベッドを飛び回ることの方がおかしいのに、まったく気づかない私だったのです(笑)

その次は寝苦しさが続いていたころ見たものです。夜中になっても眠れないので、夜勤の看護師に眠剤をくださいと頼んでいたら

看護師A「もう既定分は上げたでしょ!無理言わないでください」
看護師B「うるさいやつだなぁ。無理なものは無理なんだから黙りなさい!」
私「でも辛いんです。体中痛いし熱いし氷枕もください」
看護師B「やかましいな。これでも飲んでおけ!」

乱暴にとても苦い漢方薬を、私の口に突如入れたではありませんか。その苦さに飛び上がったのですが、あれほど辛かった身体が落ち着いてきました。

その二人は、秘密の個人の薬だから誰にも言っちゃだめだと念を押すと、私を睨みつけながら去って行きました。

口の中のとても苦い漢方薬が、次第に心地よいものへと変わるといつしか眠りに落ちて行きました。翌朝目覚めると良く眠れた感じがして、今夜もあの漢方薬を頼もうと心で決めたのです。

こんな話がまだいくつもあるのですが、しゃべることのできない僕が会話していること自体あり得ないことを考えると、すべては嘘だと気づくはずなのですが、目覚めて2週間くらいはこんな妄想に囚われていたのです。

次は、“正気に戻った時に気づいたこと”です





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