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買い物は投票。読むことも投票[40/100]

2年前まで、計5年ほど、WEBメディアの編集をしていた。今は編集から少し離れ、広報とライターをしている。

編集を離れた理由は複合的で、決定打があったわけではない。でも、WEBメディアのマネタイズのために、ハック系の記事が多くなったことが、大きな理由の1つだったことは、間違いない。

毎日、家事に育児に、仕事に、美容……と忙しい同年代の女性たちに向けて、少しでもラクで楽しく生きられるように、と思いながら運営していた。だから、サクッと読める時短家事ハックも、お買い得情報も、役に立っているだろうと思っていた。

でも、実用系の記事に、私は「このメディアらしさ」という息を吹き込めなかった。

気づけば、他のメディアでも見たことのある記事を量産し、PVと予算の目標に追われる日々。

私では力不足だ。そう感じたのを、さとゆみさんの毎日更新24時間限定エッセイ『今日コレ』の11月9日の記事で思い出した。

2割の編集者がヒット本の8割を作っている。

書籍業界でよく言われる言葉だ。エビデンスはない。しかし何人もの編集者の口から聞いた言葉なので、おそらく遠からずだろう。

ハズさない読書【さとゆみの今日もコレカラ/009】

これを読んだとき、わたしは最初「働き蜂の理論」みたいなものかと思った。つまり、編集者の中でも、ヒットを出せるのは2割とか、そういう意味かと。

でも、最後まで読んでみて、違う気がしている。

「ヒット本の成分の8割は、(著者や内容ではなく)編集者でできています」。こっちかも。

同じ材料で、同じことを書いても、切り取り方、表現方法(デザインや、媒体含め)によって、かなり変わる。まるで違うことが起きる。

同じ著者の本であっても、編集者によって全く毛色の違うものができる。小説やエッセイはまた別だろうが、少なくともビジネス書や実用書は、「どの編集者のもとで書くか」が「何を書くか」に直結する。

ハズさない読書【さとゆみの今日もコレカラ/009】

同じレシピの記事であっても、どう切り取って、どう届けるか。それ次第で「このメディアらしさ」が出せたかもしれないな、と改めて思う。

編集者は、一人スタートアップみたいなものだ。その人の描く理想の世界や、価値観を世の中に発信するために、投資してもらう。社内で企画を通し、外部のライターさんに協力を得て、読者の方に届ける。

「買うことは投票だ」という言葉があるが、「読むこともまた、投票だ」。

読者、ライターの立場になった今、どの編集者の方の世界観に共感して、何の記事を読むのか。ちゃんと吟味したいな、そんなことを思った。


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