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いい原稿には「操られた言葉」がある『本日は、お日柄もよく』3稿[20/100]

昨日もこちらからの勝手な都合(毎日ブラッシュアップ)に付き合ってくださったご友人の皆様、そして「読んだよ!」ってご連絡くださった皆様、本当にありがとうございます!
私も、夜の壁打ちおしゃべりや、お酒をひたすら飲むなど、何かできることがございましたら、お返しさせてくださいませ。

まほ 心の声

指摘されたことリストvol.2

昨日の原稿は「読みやすくなった」というご感想をいただきました。皆様のご指摘のおかげです。感謝です! 今後は自分でできるようにいたします。
今回ご指摘をいただいたことはこちら

  • 最初のエピソード2つが、似ていることを言っているようで、文脈が違うことを言っている

    • 娘のエピソードは、意味の間違い。たいして、私が指摘を受けた方は表現の間違い。

  • エピソード1つのほうがわかりやすい

  • 抽象的な話→具体的な話(総論→各論)の順のほうが、わかりやすい

  • そもそも、ストーリーや登場人物の名前要らないのでは

  • 具体的な例がないと「何かを言っているようで、何もいっていない」文になっている箇所がある

  • 引用の前に、なぜこの引用部分が刺さったのか、具体的な話がほしい。本を読んでいない人からすると、あんまりグッとこない

  • 次の文を読みたくなるよう、段落のつながりを滑らかに

今回のご指摘を受け、2点驚いた点があります。
1:自分ではエピソードの2つは完全につながっていると思っていたので、そこで読者を惑わせているとは! 
2:自分的には「たったひとりにでも、この記事のメッセージが届けばいい』と言っている自分がいる」とかの部分は具体的に書いているつもりだったのですが、これ、具体的じゃないんだ! 

さすがにこの私の原稿ブラッシュアップに毎日お付き合いいただくのは、恐縮すぎるので、明日からは……自分でできるように……なり…た…い……
と思っていたら「お互いに、記事の赤入れしていこう」と言ってくれた仲間を発見! この記事を読んで、もしも「私も、赤入れするし、赤入れされたい!」ってかた、ぜひぜひ、DMください。

今日のテーマはこれ

具体例を出しつつ、より、この文章で伝えたいことにフォーカスした文章にする。
何かに出会ったこと(今回は『本日は、お日柄もよく』という書籍)により、こんな気付きがあった、ということを伝える文章には、どこまで気付きをくれた”何か(商品とかサービス)”の紹介をしたらいいのか、悩んでいます。今回は書籍の紹介は、必要最低限にします。

***ここから、書き直し03原稿です***

良い意味だと思って使っていた言葉が、すごく失礼な言い回しだったとか、誤解を生む表現になっていた……ということは、日常生活で意外と多い。

例えば「一花咲かせる」という言葉。さとゆみさんのビジネスライティングゼミの課題で「(50代くらいの読者を想定し)もう一花咲かせる」という表現をした。
この表現を、私は指摘されるまで失礼なニュアンスを含むかもしれないことにまったく気づいていなかった。
ご指摘の内容は「この表現は、今は咲いていないというように受け止められるし、一時的に咲かせればいいのかと感じる人もいるかも」ということだった。……たしかに、おっしゃる通りです。

難しい単語や、日常使わないような表現を使いたいときは、辞書を引くこともある。ただ「一花咲かせる」という平易な言葉は、そこまで気にせず使ってしまい、本来の意味を知っている人から「なんだか失礼だわ…」と思われていることもあったかもしれない。

「前後の文脈から考えると『悪意がないだろう』とわかるから、そんなことで目くじら立てないでよ」と思う人もいるだろう。もちろん、友達同士の会話なら、それでいい。しかし、私は今、ライターとして「言葉」を使って人にメッセージを届ける仕事をしている。
相手に真意が届かなければ、その文章は無駄になるし、なんなら害になる可能性すらある。

伝えるために、言葉を”操る”

伝わる文章を書くためには言葉をしっかり”操る”ことが必要だ、そんなことを考えた理由は、原田マハさんの小説『本日は、お日柄もよく』を読んだから。

主人公がスピーチライターとして独り立ちするまでの成長が描かれている。本書は小説としても大変に面白い作品であるとともに、ライター目線で読むと、心に届く文章を書くためのハウツーが詰まっている作品でもある。

私が冒頭の「一花咲かせる」の指摘を思い起こしたのは、下記の一文をよんだからだ。

言葉は書くものでも読むものでもない。操るものだ。

『本日は、お日柄もよく』徳間文庫 P144

一生懸命書いても、読者に受け入れられ、読んでもらわない限り、それは存在しないのと同じだ。

私がライターになりたいと感じたのは、以前にメディアの編集をしていた際に、多くの方から「コメント」をもらったことにある。
「この対談で、多くの方に元気になってもらいたい」と思って出した記事に対し「勇気づけられた」というメッセージだけでなく「独りよがりだと感じた」などという厳しい意見もいただいた。

それでも、そうやってナマの声をもらうことで、文章が人に与える影響の大きさを実感した。

ライターとして活動している現在の軸は「私の文章を読んでもらうことで少しでも世の中を良くしたい」だ。そのためには、多くの人に受け入れられるために、言葉を”操る”必要がある。

「どんなに一生懸命書いても読んでも、広く一般に受け入れられない限り、言葉の効力って限定的なもんだろ。言葉って言うのは、操れなくちゃだめなんだ、って、おれも最近ようやくわかってきた」

『本日は、お日柄もよく』徳間文庫 P145

記事を書いたときに、私は「この記事は私の望むメッセージを届けられるようなクオリティに仕上がっただろうか」と不安になる。

その不安をカバーするために「この記事のメッセージが届くのは、たった1人でもいい」などと言っている。本音でもあるが、実は言い訳でしかなかったことに、改めて気付いた。

「聞く」ことができると書く勇気が出る

私が担当させてもらう記事はインタビューが多い。自分のインタビュー原稿のクオリティが不安なときというのは、往々にして「取材不足」のときだ。

私の陥る「取材不足」とは、言葉が上滑りしてしまっているとき。
インタビューをするときは、企画段階で「こんなことを聞きたい」と目的を定めている。

だが、実際にインタビューを始めると、聞きたかった答えが聞けなかったり、他のメディアでも聞いたことのあるような内容となっていることが多々ある。そうすると、私は焦る。
焦った結果、何を質問したいのかわからないような質問をポンポンとランダムに聞いてしまう。もしくは「これはあのメディアで語っていたことと同じ……!」とわかりながら、うんうんと生返事をしつつ「どうやって他のことを聞こう」と頭がその方向に持っていかれてしまう。

完全によろしくないインタビューの時間だ。
聞くことが、こんなに大変だったとは。インタビューをライターとして経験するようになってから、聞くことと向き合うようになった。
だからこそ、この文章が沁みた。
インタビューライターが、最もエネルギーを使うところは、書く時ではなく、聞く時であるのかもしれない。

「聞くことは、話すことよりもずっとエネルギーがいる。だけどその分、話すための勇気を得られるんだ、と思います」
(略)
話すために、聞く。そういうことなんだ。

『本日は、お日柄もよく』徳間文庫 P158 ・160

※「話す」の部分を「書く」に脳内変換しております。

ちなみに、最近、取材中に深く「聞く」ための極意を教えてもらった。
それは、取材対象者の方の過去の記事などを何度も読み「記事から落とされている部分」を見つけるということ。

例えば下記の文を見てほしい。
「大学は、〇〇学部に進学しました。そのあと、△△会社に新卒で入社したんですけど、途中でつらくなってやめてしまって。やることもないし、雇われるのも性に合わないし、何かやれることないかな、と考えて□□で起業したんです。(以下、起業について語る)」
ここで、記事から落とされた部分はどこだろうか。
ざっと上げてみよう。

  • なぜ〇〇学部に入ったのか。何を学ぼうと思ったのか。

  • △△会社を選んだ理由は? 第一志望だったのか、そうでなかったのか。もし、第一志望だったとしたら、なぜか。逆に、ここしか受からなかっただと、本当はどこに行きたかったのか。

  • なにが退職するほどつらかったのか。

  • なぜ雇われることが性に合わないとおもったのか。

もちろん、実際の原稿の場合はこの前後にストーリーがあると思うから、上記のことのいくつかはクリアしているだろう。ただ、すべてをクリアしていることは珍しい。だから、そこを聞きにいくのだ。

インタビューライターの場合の「聞く」は、綿密な下調べと準備があってこそ、聞くことができる。
しっかり聞くことができると、「書く」勇気が出てくる。せっかく聞けた、このすごいメッセージを読者に届けなければならないという使命感がでてくるからだ。

言葉の持つ力を感じる名作

本作は、ライティングのハウツー本ではない。
しかし、ライターにとって示唆に富んだ名作だと読みながら何度も感じた。
ライターにとっての金言が、ストーリーに乗って、具体的な描写とともにセリフのなかで展開される。それは、下手なハウツー本よりも、説得力をもって私の中に入ってきた。

小説を読みながら、蛍光ペンでこんなにマークしたことはいまだかつてない。大変に読み応えのある小説だった。

今回は、ライターとしての私に響く箇所を紹介したが、”言葉を操る”原田さんが織りなす、登場人物たちのセリフがどれも素晴らしい。

私は読んで30ページ以内でひと泣きした。通勤電車の中で読むことは、おすすめしない。


(泣き言&迷い)
明日から平日にここまでのボリュームを書ける気がしないので、どうするか悩んでおります。
また、これ『本日は、お日柄もよく』のブックレビューになっているのだろうか……大丈夫?



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