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<東京編>夫の運転手をやって見えてきた育児と風景

実際に始まってみると、生活リズムは大きく変わった。
車で出勤するとなると、夫は8:00頃に家を出なければならない。会社に到着してから、帰宅まではわたしの運転なのでわたしも同時に出ることになる。そうすると、子どもも出る準備をしなければならない。といっても、まだ11ヶ月の子は寝ていたら起こして、オムツを替えるくらいだ。寝ているところを起こすのが可哀想なのだけれど。


夫も、今までは起きて適当にGパンを履き、洗濯済みのものを着て寝癖もそこそこに家を出発する毎日だったが、スーツ(しかも10年ぶりくらい)となれば事情が変わってくる。ワイシャツの柄どれにしよう、スーツ何着て行こう、肌を切らないように髭を剃り、寝癖があればドライヤーも使う。ハンカチと靴下はわたしが用意した。


最初は、帰宅後どのようなタイムスケジュールになるかわからなかったので、わたしは「起きて子どもを連れて行く」ことしかやっていなかった。しかし、朝の時間帯に往復約1.5h要するというのは想像以上に帰宅してからが大変だった。子どもは既に3回食が始まっている。食事と食事の間は4h空けなければいけないので、朝が遅くなると昼も必然的に遅くなる。その間に寝るのもおよその時間帯しかこちらは分からず、寝るタイミングは子どもの自由だ。それに合わせて臨機応変に家事や自分の食事をこなさなければならない。

わたしは出発前にある程度の家事をこなして家を出ることにした。朝、子どもは寝かせたまま、ひとりで起きる。洗うものを集めて、ネットに入れるものは入れて、我が家は子どもができてから風呂水を洗濯に再利用することにした(それまではお互いシャワーのみだったので、子どもをお風呂に入れたり、大人と洗濯物を分けて洗濯していたら水道局から水漏れじゃないか?と確認が入るくらい水の使用量が増えた…)ので、その準備をして予約洗濯。離乳食は基本的にまとめて作って冷凍、その時の食事分だけ解凍というやり方をとっていた。家を出る前に朝食の分のおかゆ、おかず2品、フルーツをお皿に出して室温に戻しておく、ということをしておくだけでだいぶ時間短縮になった。
日によって、洗濯については前日までに予約洗濯をしてみたり、ゴミ出しの日があったり、食洗機をしかけて出ることもあった(食洗機の稼働音は意外と大きいので、就寝ンジや不在時にしておくことが多かった)。子どもの健診が午前中にあり、離乳食まで済ませてから出発して、夫が出勤後その足で病院に行くこともあった。そうする場合、朝イチの予約がタイミング的にちょうど良くなるので人も少なく、待ち時間も長くなることはないので快適だった。

こうして、朝起きてから早々にスタートダッシュみたいなリズムになったわけだけど、元から朝は苦手ではなかったので割とすぐ慣れた。
何より、今まで夫は朝の出発時間が気分次第、のようなところがあったが毎日決まった時間に出発するようになったことで、家族全体のリズムが安定してきたと思う。何か語弊のある言い方のような気もするけど。。。

そして何より、朝、夫を送り出してからの帰り道、夕方、夫を迎えに行く自宅から会社までの約40分程度のドライブの時間はとっておきの時間になった。これはとても嬉しい誤算だった。

本来、わたしは運転が好きだ。車は一人一台が当たり前の田舎で育ったため、18歳になる少し前から教習所に通い出した。成績はあまり良い方ではなかった(今も上手い方には入らない。)けれど、自分で出発したい時間に、自分でルートを選んで、車という自分より数十倍も大きいテクノロジーの塊を操れて、しかもそれが個室で行えるなんて、とてもワクワクすることだと思っている。

ここ数年は、東京の道を恒常的に運転することはほぼなかった(昔は仕事で社用車を乗っていたことはあったけど、ヒヤヒヤする思いは数えきれない…)。夫が車を所有していたので、たまに夫がお酒を飲んで運転できない時や、レイトショーを観に行くのにとても空いてる都内の道を運転させてもらうことはあった。ただ、そういう時はほぼいつも夫が隣でいろいろ東京の道についてアドバイスしてくれていた。「もうそろそろ合流があるから、車線を変わっておいたほうが良いよ」とか、他にもあったけどその時は目の前と言われたことを処理することに必死で覚えていない。まさに「助手席」と名付けられたシートに相応しい役割を担ってくれていた。

そんなわけで、自分の一人での都内での運転、しかも朝と夕方の通勤時間、山手線の内側を運転するというのは、実際にやってみる前からとても緊張した。

しかし、実際に夫の運転手を始めてみてから発見したこともあった。

それは、シンプルに「とても楽しい。気分転換になる!」ということ。最初こそ都会の複雑な道路事情に必死で、運転を楽しむ余裕はほとんどなかったものの、現代のとても優秀なナビ、運転にそこまで神経を使わなくて良いオートマ車だった為、本来の運転好きなわたしの気持ちが、ドライブの楽しさを思い出し始めていた。ちなみに、夫は車が好きで最近はマニュアル車しか乗っていない。なぜわたしがオートマに乗っているかというと、その車好きの車はちょっとした事故(対物)で修理中。代車で、車高調整の入っていない、最近のナビが搭載された、チャイルドシートからも子どもを乗せ下ろししやすいオートマが我が家に来たのだった。わたしから言わせれば、シンプルに最高でしかなかった。

ただ、気分転換、わたしのストレス発散になるだけではない。これは夫の送迎という、しっかりとした目的のある行為。それがわたしにとっても有益なんて、一石二鳥ではないか。自分の好きな音楽に耳を傾けつつ、自分の判断でハンドルを切り、息子と自宅に帰る。家族を迎えに行く。毎日通る道はほぼ同じルートであるが、たまに間違ってナビにリルートしてもらったり、桜の花が咲き始めていたり、「あれ?、ここってこのしゃせんにいて良いんだっけ…?」と頭を使ったりすることはとても面白かった。

上述した通り、音楽を聴く、という習慣が復活したことはとても嬉しかった。電車通勤の時、わたしは限られた時間の中で好きな曲だけ聴きたくてプレイリストを作っていた。出産してからは、子どもも聞いているのでクラシックなんかを中心に部屋で流すようになっていたが、車の中ではBGMっぽいものやオムニバスを流すようになっていた。気付けばもっぱらJーPOPだったわたしの好みが変わり始めていたが、そんな中でも運転が終わりに近づくと、ミスチルを必ずかけた。

学生の時も、社会人になってからも、母になってからもミスチル。わたしの人生に欠かせないものはミスチルだよなぁ、としみじみ思いながら毎回、何回かハンドルを切り返しながら駐車場へ車を整列させるのであった。

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「ウィルス対策のために、夫の送迎」を始めたよ、という趣旨で文章を書き始めたは良いものの、長くなってしまった上になんだかよく分からない展開になってしまい、最後はミスチルで強引に終わらせてしまいました。今回のタイトル画像は、送迎中に撮った桜です。これが夫の運転手としての最後の日でした。


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