見出し画像

老害だと思ったら本人に直接聞いてみるが吉。と思った話

あなたは老害に出くわしたことがあるだろうか?

おそらく「なんとなくはある気がするけど、断定はできない」そういった方も多いのではないだろうか。かくいう私もこれまで幾度となく、そういった体験はしてきた気がするのだが、一つ一つエピソードを覚えているわけではない。

また老害に遭ったとして、それを直接本人に物申す、あるいは聞いてみるといった行動に移す人がどれほどいるのだろうか。私はふとそういったことを考えることがある。

今回は市民プールでの出来事。

初心者・完泳コースには自分以外誰もいない。私は普段800m~1.2kmを30~40分の間隔で泳ぐ、今は泳力検定2級の取得を目指して、日々時間を作って練習に勤しんでいる。多分、その時プールにいた人たちの中で一番と言ってもいいほど、泳げる部類にはいたと思う。

しばらくすると年配ご一行が四人組で前述のコースにやってきて、二人組で泳ぎ始めた。プールの幅はとても狭く、予想通り、私の前はすぐに詰まった。「相手にぶつからないよう、スマートに抜けるのが一枚上手なスイマー」私が思う、上手に泳ぐスイマーの特徴の一つだ。

初老の男性の泳ぎの邪魔をしないよう横をするりと抜け、クイックターンをする。ほどなくして、御一行たちの視線を感じ始めた。自分だけがそのコースで早く泳いだり、あるいは若かったりするとこういった視線を浴びることはしばしばある。

この時の視線は何というか、「(あなたの来る場所じゃないから)早く出ていってほしい」。

それに似たような圧を感じた。

折り返しでご一行とすれ違う際もあろうことか、思いっきりぶつかられ、とても痛かった。平泳ぎで蹴った足が相手に当たることは時々あるものの、正面から体が当たることはまず、ない。

またクイックターンする際の息継ぎで初心者コースにいた初老の女性と目が合った。眉間に皺を寄せて、こちらを睨んでいるような気さえした。「先にどうぞ」とご一行の中の一人に促したり、他者への気遣いは欠かさなかった。次の50mを泳ぎ切り、小休憩していると初老男性に「お先にどうぞ」と言われ、少しムッとしたので「いいです、もう上がるんで」と言いながらプールを後にした。

「老人全員で若者を目の敵にして、プールから私を追い出そうとしたんじゃなかろうか」

更衣室でそんな思考がぐるぐるぐるぐる私の頭の中に渦巻いた。「だとしたら、人数で圧倒しようなんてあまりにも幼稚な発想過ぎる」私は憤っていた。

「睨んできた初老の女性を(更衣室で)待って直接聞く」ー。更衣室は人影も少なかったし、1on1で話すのにはもってこいの環境ではあった。

ほどなくして本人がプールから上がって更衣室にやってきた。私は意を決して、「あの、すみません。先ほどプールにいた方ですか?」と聞き、「私、早く出た方が良かったですかね?(あなたが)睨んでいるように見えたので、気になって聞いてみました」と言ってみた。すると相手からは思わぬ言葉が出てきた。

「ううん!まさかまさか違うの。あのプールは追い越し禁止でしょ?だからあなたが追い越したときにびっくりして、皆で見てたんだけど、係員の人も注意しなかったから『言ってあげればいいのにね』と話してただけなの。ごめんね?なんか」

びっくりした。まさか自分がルール違反していたなんて、これっぽっちも思わなかったからだ。

「え、そうだったんですね!?追い越し禁止とは知りませんでした(>_<)教えてくださってありがとうございます」

「うん。いいのいいの、睨んでるとか思ってないし、皆で(あなたの)泳ぎ上手だねって話してたのよ!誰も来ちゃいけないなんて思ってないし、いつでも来てね」

赤面しそうだった。確かに追い越し禁止をルール付けしているプールは多いし、この日使っていたプールもルールが多いそうだ(あとからその女性に聞いた)。また係員がプールサイドに近づいてくる気配も感じてはいたが、今までは笛を吹かれたり、直接手で力ずくで止められることが多かったため、「自分への用ではないだろう」と思っていた。

いっそ、御一行のうち誰か一人がルールについてその場で言ってくれれば丸く収まったと思うのだが、若者に遠慮して話しかけられなかったということか。

「若いのに偉いね。ちゃんと話に来てくれて。今の若い人ってあまり気にしたりしないじゃない?」女性が言った言葉だ。どちらかと言うと私は謝罪しに行ったわけではなく、お互いの認識の齟齬をなくすために話に行ったのだが、それが結果的に吉と出たようだった。

この日の私は寝床に入ってうじうじ思い出しては考えて怒ったりすることもなく、即入眠できたのだった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?