どくどくしょ1

たまには本を読め、と言いますが、まぁ活字って面倒くさいよね。わかる。
でもアレよ、みんなTwitterとか、このnoteとかでかなりの文章読んでるわけで、少なくともココでこの文章を読んでいる人は、読書なんてお手の物、朝飯前、茶の友、呼吸と同じってくらいに手軽なモノだと思う。
本の虫っていうしね。

俺は、昔ほど読まなくなったけど、話題書は避けて読んでる。
でもラノベは読む方。ラノベじゃないのも読むけど、専門書が多すぎて一般的じゃない。
なら、だ。
気軽に読めそうな本を紹介してだね、なかなか続きが出そうにない本を流行らせたいわけだよ。
そうしたら続きが出そうになるから。

てめーにそんな影響力あるかよって?ねーけど。

ンな事はやってみなきゃわからない。というわけで、好きな本を一冊挙げる。

ヤキトリ 一銭五厘の軌道降下
カルロ・ゼン著 早川書房刊

ヤキトリ、というタイトルで面食らうのではないかと思うし、実際「何のこっちゃ」と言いたくなる。
読み進めていくとわかるが、この「ヤキトリ」が随所で「キーワード」として働き、また「焼き鳥」を食う場面が必ず入れられるという物語。

おう、なんの紹介にもなってねぇな?

舞台は未来。「商連」と呼ばれる地球外生命の集団に、地球が事実上支配された世界。
主人公・伊保津明(イホツ アキラ)は、日本出身の若者だが、その身を拘束されていた。
この舞台における日本は社会主義的ディストピアを体現しており、周囲の勧めを聞かず大学への進学を希望したところ、「保護」されるという憂き目に。
そんなアキラに、ハプキンというロシア人の男が、商連に属する傭兵部隊への誘いを掛けるところから物語が動き出す。
絶望から抜け出せるのなら、とその道を選び取ったアキラは、奇妙な質問や忠告を訝しみつつ、手続きを進める。
そして、ハプキンによって「選抜」されたユニットのメンバーが一堂に会したところ、どいつもこいつも我の強い奴だらけで…

という導入。
この導入の最中に、自分たちがよく知る「マクドナルド」「モーツァルト」といったモノがポンポン飛び出してくる。
アキラの置かれた境遇がヤバいモノだというのが、マクドナルドでの食事を通じて分かるという怪っ体な画だ。
これを目にしたら、ディストピア飯にマクドナルドが加わった瞬間を実感出来るだろう。
この本読んだ人は、確実にヤキトリのマクドナルドを切望するごっこをしたくなる、ハズ。
俺はやってるぞ。ワンコイン以下で手軽に出来るディストピア飯ごっこは楽しい。

商連という存在の異様さ。傭兵部隊を「ヤキトリ」と称される意味。そうした世界観の説明を落とし込みながら、アキラ達は訓練に参加する。
ハプキンから「特別に集めた」という前置きがあるにも関わらず、訓練でボッコボコにされ、チームワークもままならないアキラ達。
同時に入ってきた他のチーム達には置いていかれ、落ちこぼれチームとして扱われ、「何が特別だ!?」とギスギスしながら「このままではダメだ」とやがて一致団結するも…

アキラの境遇である「束縛の世界」から「自分の選んだ世界」。
チームの「落ちこぼれ」からの「特別」の意味が明らかになる瞬間。
様々な束縛と解放の連続があり、非常に気持ちいい。
あと、先にマクドナルドを挙げたが、全体的に食事の描写が良い。美味い飯、まずい飯との書き分けや、そうした中の悲哀が共有される様など、ニヤニヤできる場面は多い。
この「ヤキトリ」は、話のラスト近くで「焼き鳥」を食べるのが慣例になっている(現行2巻だが)が、その描写も良い。
制約が多い「軍」のような場所でも、そうした娯楽がひっそりとあり、愛されているという奇妙な光景。
そんな、傭兵部隊のいち隊員ごときでは使えない場所で、なぜアキラが「焼き鳥」を食べる事になるのかは、読んでのお楽しみである。

ジャンルはSFだ。非常に難解な言葉や単語の羅列が多いように見えるが、その実、そうした難解な語は読み飛ばしても何ら差し支えない構造になっているのもポイント。
必ず略称があったり、通称があったりする。アキラ達が属する傭兵部隊…のような物も、実は長ったらしい名前が付いているのだが、ぼぼ「ヤキトリ」の通称が定着しているし、何なら訓練所は「キッチン」で、この傭兵が実戦に出るのを「ヤキトリがキッチンで焼けた」と称しているであろう描写も出てくる。
SFは小難しいから苦手?割とこれなら導入が楽だと思うよ。

ただまぁ「幼女戦記」の作者だもの。ガッツリとした文章量に裏打ちされた背後の組織の壮大な衝突はキッチリ描かれている。
ただし、それらは読み飛ばしてもイケる。もちろんこれらを読み込んでもイケる。
俺に良し、お前に良し、全てに良し。

ざつぅ〜に紹介してみたが、どうだろう。読みたくなっただろうか。
ネタバレは極力回避しつつ、本をお勧めするって難しいね。
何言ってもネタバレになりそうだもんな。
ザックリ纏めると、ディストピアから抜け出した青年達が、侵略者側の使い捨て兵士になって足掻く物語ですよ。そうした倒錯もまた良い。

俺としては、つくねを摘みつつ3巻が出るのを首を長くして待っている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?