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「私、編集に向いてますか?」と言う人にいつも伝えていること

編集人材との往復書簡シリーズ。初回の今回は、ばぶさんに良いパスをいただいたのでネタにさせていただきます!

いただいたネタ
編集人材のキャリア相談を受けていて向いている人、向いていない人ってどのあたりを見て判断しています?

ありがとうございます。なるほど面白そう。さすが、ばぶさん。

この問いをいただいて気づいたのですが、僕自身、あまたの編集人材のキャリア相談に応じてきたものの、「あなたは編集に向いていません」と言った経験はありませんでした。

それは決して相手に気を遣っていたからではなく、「編集職」という概念が非常に幅広く、「どんな人でも輝けるフィールドがある」と考えていることが大きいと思います。

確かに、「この人はライターじゃなくて編集者に向いているな」とか、逆に「この人は編集者じゃなくてライターだな」とか、細部の素養に対して思うことはあるのですが、「編集職に向いていない」と全否定できるような方って、いないなと。

「自分が向いているかわからない」とお悩みの方は、編集に対する熱意はある人だと思うので、その点において既に一定の条件をクリアできているんじゃないかなというのが僕の見立てです。

では実際のところ、「どういう人が、どういう系統の”編集”に向いているのか」。
 
それを振り分けるうえで僕個人としての判断軸は2つあって、それを簡単にマッピングしてみたのが以下です。横軸は「個人プレイを望むか、チームプレイを望むか」。縦軸は、「テキストコンテンツにこだわりがあるか否か」です。一つずつ消化していきたいと思います。(先に断っておきますが、3,4のゾーンは考察薄めですwごめんなさいw)
 

①   記事を自分で書きたい意欲の強いタイプ⇒ザ・ライター(記者)


これぞ「ザ・ライター」なので、別に僕が解説するまでもなさそうですが…。

新聞記者をはじめ、企画・取材・執筆の基本的な工程をすべて自分で完結させたい方はやはりここ。複数箇所への取材で得た知見を一つにまとめるなど、少し手のかかったコンテンツの制作に秀でた人には非常に向いたスタイルだと言えるでしょう。ただ、純粋な執筆能力だけで戦おうとすると頭打ちになりやすいので、取材能力・人脈、知見を集積し、レバレッジを利かせ、「自分にしか書けないもの」をいかにつくっていくかがキャリア戦略になるように思っています。

ただ、いわゆるこうしたライター人材は参入障壁自体は低く、競争も激化しがちですし、何より働き方も労働集約になりがちだったりもします。

いろいろな考え方があるとは思うのですが、個人的には「これを伝えたいんだ」という強いWILLがある方や、「自分にしか書けないものを書き上げる」情熱みたいなものがない場合は、次に挙げる「編集者」的なスキルを伸ばしていってはどうかとアドバイスすることが多いです。ほんと、入りやすいけど上に上がるのが大変なので…。


②   自分で記事を書くかどうかより、媒体づくりに関心のあるタイプ⇒編集者


ここでは、「他人に書いてもらった記事を読みやすくしたり、改善点を指摘し、媒体のコンテンツラインナップをそろえる人」を編集者と言おうと思います。

同時並行で複数人のライター(記者)とのやり取りが発生するため、マネジメントに興味のある人には良いでしょうし、記事1本1本の制作というよりも媒体運営に興味のある人もこのタイプと言えそう。先ほど申し上げた通り、「自分で書くことにこだわりがないのであれば」、こうした編集者人材になった方が、案件の上流工程に携わりますし、ザ・ライターよりは労働集約でないことが多いので(多分)、迷っている場合はこちらのスタイルをおすすめすることが多いです。

ただ、人の原稿に手を入れる過程では、「なぜこの修正を加えたのか」を言語化できる必要もあります。割とよく目にするのが、①で上げたザ・ライター型の人材が編集者となり、「それもはや趣味だろ」みたいな修正を突き通そうとしてしまうパターン。正直なところ、この辺はやってみないとわからない面もあり、基本的に自社の新人教育では30歳までにザ・ライターと編集者、両方の経験を積んでもらい、本人の素養やモチベーションを見て、「●●さんはこっちかもねえ」と、メンタリングすることが多くなっております。


③  コピーライター、④ハイパーメディアクリエイター(仮)


① と②は、ともに「長尺のテキスト制作にこだわりがある人」という前提なのですが、個人的にはさらに「文章」という発信形態にどこまでこだわりがあるかという点も、キャリアパスの振り分けにおいて昨今重要視しています。
 
物事の本質を文章でズバっと表現することにやりがいを感じる人であれば③コピーライターという仕事も成立しますし、文章でもなんでも「伝わるなら手段は問わん!」という人なら、④のように動画のディレクションや、媒体企画の道もあります。
④は発信手法を問わずに「伝えること」に特化してチームプレーができる人材で、今回は雑に取り上げていますが「伝え方」が多様化している現在はかなりニーズが高まっているように思います。多分、世の編集長的な人材は多かれ少なかれ、編集者とハイパークリエイターの間を行き来しているんじゃないかと。オンラインサロンのような場づくりやイベント企画なんかも、④の方向性としてあるのではないかなというのが僕の考えです。
 
つい長くなってしまいました。。
いずれにせよ、個人的には「20代のうちに一通りのことをやってみて、その中で楽しいと思ったことにかぶりついていけば、30代はおのずとその道においてチャンスが恵まれるよ」というのが持論だったりもします。

「向いていないかも」と思うことがあれば、少し視点を変えた「編集」に携わってみると、新しい可能性が見えてくるんじゃないかなと。そんな感じです。

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