見出し画像

キュビスム展行った

こないだの土曜日にキュビスム展に行った。
他の20世紀美術の運動と比べると、私はキュビスムについてあまり多くを知らないし、興味が薄い。正直、ピカソの他の作風は好きだけどキュビスムはあんまり好きではなかった。だってピカソだかブラックだかよくわからない時期の作品って、なんだか色がくすんでいてつまらないし、代替可能な感じがどうなの?とか思っていた。しかし今回の展示で私の中のキュビスムへのイメージは覆されることとなる。


地下一階展示室入口の窓。お金かかってる展示は面白いので期待大。

まずエントランスのキャプションにて「50年ぶりの大規模なキュビスムの回顧展」という文言を目にし、ワクワク。たしかにピカソとかはやってたけど、キュビスムと銘打たれたものはあまり見たことがなかったかも。
第1章「キュビスム以前ーその源泉」。
最初の展示室に入ると、キュビスム以前の画家としてセザンヌ、ゴーギャン、ルソーの絵が。私ルソーの絵って生で見たの何気に初めてかもしれない。木にびっしりなっているオレンジの密度がキモくて感動した。前にも書いたかもしれないが私は「天才」の条件は「無自覚」だと思っているので(自分の能力に自覚的な人は秀才だと思っている)、そういう意味ではルソーが1番天才かもしれない。ゴッホとかもそっち系かもしれないが、ゴッホより、普通に、ルソーが好き〜!
あと同じ部屋にアフリカの仮面や像も飾ってあった。『コタ、マホングウェの儀式ブウェテに用いる遺骨容器の守護像(ガボン)』という像があって、名前おもろすぎて嘘かなって思った。
第二章の「プリミティヴィズム」。プリミティヴィズムというのは、要はピカソがやったようなアフリカなどの民族の文化を制作に取り入れるということ。章の最初のキャプションに「プリミティヴィズムという言葉はあくまで当時の西洋中心的な価値観に基づいている」という説明があり、とてもよかった。たしかにそうだよねえ。同じ「異文化を取り入れる」っていう構造でも、西洋人がジャポニズムやるのと日本人が欧化政策やるんじゃ全然姿勢が違うしねえ。少し脱線するけど、多摩美には留学生がたくさんいる。同じクラスのベトナム(だったかな?)の子は「私の国より日本の方が政治的な作品を作るハードルが低い」と話していたし、授業が同じになった中国の子は「私は自分の作品をフラットに見て欲しいのに『この要素は中国の文化ならではだね』とかすぐ言われていやだ」という話をしていた。私は日本で生まれて日本の大学で作品を作っているから、「自分が日本人である」ということをあまり意識したことがないが、もし将来海外で作品を発表するような機会があったとしたら、考えなきゃいけないことが増えるんだろうか。
第3章 「キュビスムの誕生ーセザンヌに導かれて」。えまってこの展示14章まであんの?1個1個書いてたらキリないかも。
でもこの章は感動したので書きたい。
キュビスムはセザンヌの影響を受けたということは知識として知っていたが、この章のブラックの作品を見ると、もろ筆致や色使い、題材などもセザンヌの影響を受けていてめちゃおもろい。こうやって!こうやってキュビスムはできたんですな〜   

ブラックの作品

レスタックという街の風景を題材にとっているが、ここはセザンヌのゆかりの街らしい(たしか)。ブラック、バリ勉強熱心なセザンヌ信者で推せる。
4章「ブラックとピカソーザイルで結ばれた二人」。結構どうでもいいけど、キャプションの中で「ザイル」という言葉の説明がいっさいなされてなくてびっくりした。私はザイルが登山用のロープを意味することをクイズで覚えたので、結構わからない人も多かったのではないか。そういう挑戦的なキャプション、嫌いじゃなくってよ‼️……まあ自分がわかんなかったらテンションさがるけどね。私はキャプションオタクなので、結構こういうとこを見てしまう。
この辺は分析的キュビスム~統合的キュビスムの時期の作品で、ほんとにピカソの作品なのかブラックの作品なのか見分けがつかない。しかし先入観は裏切られ、見ていてとても感動した。まず、生の作品を見て色彩の美しさに感動する。うすい灰色、ベージュ、幅広い茶褐色、黒、そういう中に混じる少し緑がかった色や差し色の赤などがたまらない。おそらく形態の面白さに注力するためになるべく彩度を排したのだろうが、しかしその中にも驚くべき色彩の豊かさはある。あと、額がいい。

よい

こういうシックでオシャレなのから、シンプルな木の額もあり、とてもセンスが良い。
そして、展示室中央の休憩用の椅子に置いてある、この展示の図録を見て2度びっくりした。この時期のキュビスムの作品は、生で見るのと写真で見るのとで、全く色彩が違う。なんだか、写真の方がいやらしい色彩である。なんというか、もっとくすんで汚くて、生の作品を見た時の緊張感や厳かな感じが全くない。しかしこれはカメラマンが悪いということでもなくある程度仕方のないことなのだろう。私も経験があるが、色んな色を使ってカラフルに描かれた絵と、同系色で描かれた絵では後者の方が圧倒的に写真写りが悪い。とくにベージュや茶色系はひどい。

今試しに自分が撮った写真を1枚載せてみたが、本物はこれと比べ物にならないほど美しい色彩である。私は写真でしか見たことないからキュビスムがあんまり好きじゃなかったんだな。素敵な出会いをありがとう。
5章「フェルナン・レジェとフアン・グリス」


グリスの作品

これ、いいね〜
この人の作品、ピカソやブラックのザバザバした質感とは違って、滑らかで色彩豊かで印象深かった。
ピカソやブラック以外にもキュビスムの画家は沢山いたんですね。

6章「サロンにおけるキュビスム」
サロンにおけるキュビスム!凄いな、サロンに受容されたという事実が。
やってることはキュビスムだけど題材が台所の女とか収穫とか、ややサロン風味で面白かった。
写真を撮るのを忘れたが、メッツァンジェという人の『自転車乗り』という作品が、躍動感すごくてよかった。変人なんだろうな。

7章「同時主義とオルフィスムーロベール・ドローネーとソフィア・ドローネー」
ドローネーだと!?!?!?!?!?!?!?!?!??
この人の抽象画がすごく好きなのだが、キュビスムの人だったのか。勉強不足。生で見たことなかったのですごくうれしーーーーーー
ドローネーの『パリ市』、ポスターにもなっていたがすごくよかったな。あれ私写真撮らなかったっけ?なぜ消えているのだ。すごく大きな絵だったのだが、「でかいっていいよね〜」というバカみたいな感想を言ってしまった。いやでもでかいってそれだけでパワーであり説得力ですから。でかけりゃいいってものでもないが、でかい画面を過不足なく描くにはパワーが要るし、そのパワーに人は感動しますからね。うんうん。

ロベール・ドローネー

抽象画の方は写真に残していた。高校生の頃に写真で見て、すごく好きだなって思ったんですよねー。今思えばあれキュビスムの画集だったかもしれない。

ロベールの奥さん、ソニア・ドローネー

奥さんも絵を描いていたことは知っていたが、奥さんの絵をちゃんとみたの初めてかも。
この絵のさ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜支持体がさ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜キャンバスじゃなくてマットレス・カバーでさ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜良!!!!!!!!!!!!!!!!!!
良ォ……………………………………………奥様ァ………………
いいですね。マットレス・カバー。お家にあるもので描いたんですね、そういうなんというか、その人の生活というか人となりが見える素材選び、すこでございます。

これは木にうらうち裏打ちされたキャンバスですってさ


やっぱこういう飾らない素材選びを「女性らしい」って言葉で片付けちゃいけないと思うんですね。差別的かどうかは色々な意見があるとしても、やっぱり陳腐だし思考停止だと思うんです。この人が「女性である」という表面だけ見ていると、作品から見える人間性とかに気づけないと思うし。このキャプションでも、そういう言葉を使ってないのが凄くいい。
さっきの日本人の話じゃないけれど、私は女性として生まれて女性として生きてるので、作品を作る時に、そんなに「自分が女性である」ということを意識してないんです。ソニアさんの時代よりも、強く意識しなくても生きていける時代になったと思うし。
そういう意味では、上のキャプションは、すごく現代的な視点からソニアさんの作品を語っていると思います。


これ、どこの章にあったか忘れたけどめっちゃ面白い映像でした。映像の写真は撮り忘れた。「すべてを曲線で描く画家ロンドボッス」、パワーワードすぎる。

8章「デュシャン兄弟とピュトーグループ」
マルセル・デュシャンには兄弟が2人いて、わりとキュビスムに関わってたんだね〜すごい。
そんなことよりクプカ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

クプカ!!!!!!


クプカ!!!!!!!!!!!!!!!

あたしゃクプカの作品が好きなんよ。この展示にあると思わなかったし、生で見られて嬉しい。あのでも完全抽象の方がすきですけどね。黄色のね。キュビスムと関連づけて展示されていたが、どういう関連だか忘れてしまった。でも嬉しい。

飛ばして第10章「芸術家アトリエ『ラ・リッシュ』」
急にブランクーシあるやん。しかも接吻やん。びっくりしちゃった。彫刻の森からわざわざ?キャプションに「評論の中でブランクーシとキュビスムは関連付けて書かれています」とか書いてあったが、わざわざ持ってくるならちゃんとどういう関連なのかキャプションで明らかにしてくれや!!!!!!!それがキャプションの仕事やろがい!!!!わしら有名な作品持ってくりゃあ喜ぶんちゃうねんぞ。50年ぶりやろどマイナーな作品もってきてでもでっけえ筋通してくれや。でも接吻見れてうれし〜〜〜〜
シャガールの作品もあったが、割とキュビスムとの関連性が感じられた。リネンのキャンバスに描いてあるシャガールの作品があって、すてき。違いはあんまりわかんなかった。

11章「東欧から来たパリの芸術家たち」

シュルヴァージュ『エッティンゲン男爵夫人』

フンベルト・フォン・ジッキンゲン男爵みたい。絵に描かれている布の柄が綺麗。東欧伝統のものなのだろうか。

12章「立体未来主義」
ロシアではキュビスムと未来派が同時に伝わってきて合体し、「立体未来主義」というイズムが爆誕したらしい。面白すぎる。

ラリオーノフ『大通りのヴィーナス』

たしかにキュビスムらしさと未来派らしさ両方ある。私はこの絵の色使いが好き。

13章「キュビスムと第1次世界大戦」

キュビストたちが第1次世界大戦中に差別を受けていたということを全然知らなかった。でもこの活動を絶やさずに続けようとみんな絵を描き続けていて、すごい。すごいパワーだ。

第14章「キュビスム以後」

ちょっとこの章の写真を取っていなくて内容をあまり思い出せない。
ル・コルビジェのピュリスムの作品もあり、キュビスムとの関連性もキャプションで説明されていたがそれすらあまり思い出せない。なんでだ!もっと早く感想を書くべきだった。
同じくピュリスムのオザンファンの作品の赤がすごい綺麗だったことだけ覚えている。
1番最後にはレジェとオルナン・マーフィーによる『バレエ・メカニック』という映像作品が展示されていたが、さっぱりよくわからなかった。わからなすぎて印象に残っている。?という顔をしながら展示室を出た。

今書くとうろ覚えのところも多いが、すごくよい展示だった。途中有名なアーティストをキュビスムと無理矢理関連付けるという、ちょっと「○○美術館展」風味もあったが、全体的にとても面白かった。ソニア・ドローネーとクプカとレジェを推して生きていきます❤︎

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?