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今だからこそ、発達障害グレーゾーンをちゃんと理解しよう①~概要~

ことばが広がってきた今だからこそ知りたい

「発達障害グレーゾーン」という言葉が広がって、いろんな人が「グレー」という言葉を使うようになってきた。
そんな今だからこそ知りたい。発達障害って何?グレーゾーンって何?

今回はパート1ということで、発達障害「グレーゾーン」の概要を整理したい。そして、よりよい未来・社会について考えるきっかけにしたい。

この記事で何がわかるか?

◎グレーゾーンなのになぜ苦しいのか?生きづらいのか?
◎グレーゾーンと言われたけど、この後どうすればいいのか?

グレーゾーンの人のほうが深刻な場合がある

発達障害と診断される人と比べて、「障害」という診断がでるほどではないグレーゾーンの人のほうが、生きづらさや苦しみが弱まるどころか、より深刻な困難を抱えてしまうことがある。

◎なぜより多くの困難を抱えるときがあるの?

理由①特別な配慮や支援がないから。

理由②「ある部分では能力が高い」というケースも多いため、周囲の期待の高さと自分の能力とのギャップに苦しんでしまうから。

理由③グレーゾーンと特有の生きづらさがあるから。
  ときに愛着や心の傷の問題が絡むときがある⇒詳しくは下の記事で。

◎グレーゾーンは「発見されない」という問題

発達障害支援法(2005年に施行)
目的:早期の発達支援を行うことが特に重要なので
   「早期発見⇒早期支援」をするために法律がつくられた。

 一 目的 この法律は、発達障害者の心理機能の適正な発達及び円滑な社会生活の促進のために発達障害の症状の発現後できるだけ早期に発達支援を行うことが特に重要であることにかんがみ、発達障害を早期に発見し、発達支援を行うことに関する国及 び地方公共団体の責務を明らかにするとともに、学校教育における発達障害者への支援、発達障害者の就労の支援、発達障害者支援センターの指定等について定めることにより、発達障害者の自立及び社会参加に資するようその生活全般にわたる支援を図り、もってその福祉の増進に寄与することを目的とするものとすること。

厚生労働省HP「発達障害者支援法のねらいと概要https://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/12/dl/s1207-8c.pdf(2023年6月11日閲覧)

※早期の発達支援が特に重要・・・その後の社会生活の困り感が全然違う!
※支援・・・医療的、福祉的、教育的支援
※発達障害の人は、「特性に応じた支援を受ければ十分に力を発揮できる」という理解が広まってきた背景がある。

◎ここで問題になるのがグレーゾーンの人◎
 ●発達障害の人は・・・
  早期発見⇒支援される⇒生活の困難・困り感の解消に向かう
 ●グレーゾーンの人は・・・

  発見されない⇒支援されない⇒生活の困難・困り感が増えていく。

①年齢によって変わる「グレーゾーン」という意味

◎10歳ごろを境に意味合いが変わる。

●0~10歳 でグレーゾーンと言われたら・・・
 まだ症状がはっきりせずに診断に至らない。
⇒将来的に、「発達障害」になるのか「グレーゾーン」になるのかはわからない。

●10歳~大人 でグレーゾーンと言われたら・・・
 症状や特性ははっきりしているが診断基準に達しない。

◎発達障害の診断基準は?・・・診断の方法

WISC(ウィスク)WAIS(ウェイス)と言われるウェクスラー式知能検査

この知能検査でわかるのが、知能指数(IQ)と4つの能力

●知能検査(IQ)は知的障害の診断で使われる
 ※IQ69以下が知的障害 IQ70~84は境界知能 と言われる)

●4つの能力が発達障害の診断で使われる。
 ・言語理解:(ことば)言葉を使って物事の概念を理解して表現する力。
 ・知覚統合【知覚推理】:(視覚👀)視覚情報を正確に理解し、表現する力。
 ・作動記憶【ワーキングメモリ】:(聴覚👂)
   聴覚情報を短時間記憶し、操作する力
 ・処理速度:(視覚👀)視覚情報を正確に捉え、すばやく処理する力

※これらの4つの能力に、ばらつきが強いと発達障害が疑われる
ばらつきに加えて、出ている症状や日常生活での支障の大きさを総合して発達障害の診断が出る
⇒大きな偏りがあっても、発達障害の基準に該当しないケースもかなりある。
⇒偏りがなくても、発達障害の基準に該当する症状や困難が出ている場合もある。

②「グレーゾーン=安心」ではない。

◎グレーゾーンは障害じゃないから安心?→違うよ!注意が必要だよ!

子ども:これからの働きかけや取り組みで大きな違いが生まれる。サポートが必要。
※さっきもいったけど、10歳までにグレーゾーンっていわれた子どもは、「まだ症状がはっきりしないから診断に至っていない」っていう状態なんよね。さらに、発達障害は「早期発見⇒早期支援」が重要って話もしたけど、「グレーゾーン」も同じ。早期支援がその後の困り感を減らしていくために重要になってくるんよね。

大人:診断名ではなく、「生きづらさ」の中身を知ることが大切。特性について理解を深めることで今後の対処法が見えてくるかもしれない。
※大人で診断を受けに来る人は、そもそも何かに困っていたり、生きづらさを感じていることが多いんよね。だから、「発達障害」とか、「グレーゾーン」とかの診断名ではなく、自分が何に困っているのかを具体的に理解していくことが今後のヒントになるんよね。

◎「様子を見ましょう」と言われたので、もう病院(など)には行かなくていい?→だめだよ!関係機関とのつながりをきらないで!

積極的に様子を見る」ことが必要。
 つまり、子どもや自分の変化を注意深く見ることが大切。

◎そして、気になることがあればすぐに相談できるようにしておく
 ・子ども:軽度な課題であっても、できるだけ早くから療育やトレーニングを行うことが将来の改善につながる。
 ・大人:愛着の問題や心の傷への手当てが必要かもしれない。
   ⇒虐待、親の否定的な養育態度、安心を脅かされる、過酷な体験
   ※これらが症状以上の生きづらさにつながっているかもしれない。
   ※愛着の問題については下の記事へ。

③診断名よりも「どんな特性なのか」が大事

◎10年後には診断(病気の名前も中身も)が変わる可能性がある。

●なぜ変わる可能性があるの?
 医学の考え方がまだまだ追いついていないから。
●じゃあ、どうすればいいの?
 診断のベースにある特性や課題をしっかりと理解して、対応していくことが大事になってくる。

◎発達障害・発達障害グレーゾーンの特性とは?

 ●同じ行動を繰り返す
 ●空気が読めない
 ●イメージできない
 ●共感するのが苦手
 ●ひといちばい過敏
 ●生活が混乱しやすい
 ●動きがぎこちない
 ●勉強が苦手
  (それぞれの特性について、今後詳しく整理していく。)

※これらの特性を理解して、有効な対処につなげること。
 ⇒自分の困り感を軽くしたり生活を楽にする。支援につながる。

参考書籍

①岡田尊司著『発達障害「グレーゾーン」その正しい理解と克服法』SBクリエイティブ株式会社刊(2022年)。
②厚生労働省HP「発達障害者支援法のねらいと概要https://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/12/dl/s1207-8c.pdf(2023年6月11日閲覧)

今回の感想

 「グレーゾーン」っていう言葉が一般的にも広まってきた感がある。そんな中で発達障害・グレーゾーンの勉強をして、いちばん目からうろこやったんが発達障害の診断に「医学もまだまだ追いついていない」ということ(大見出し③のところ)。
 診断がくだるとその診断を絶対的なもの(そこに存在してて、変えられないもの)のように見てしまいがちやねんけど(僕だけかな?)、医学はまだまだ説明ができないんやというのを知って、無理やり自分(周りの人、子どもなど)を障害の枠に当てはめなくてもいいように感じて、少し楽になった。

 特別支援学校の教師として感じるのは、発達障害の子どもの線引きは確かにむつかしいということ。
 僕がいるのは知的の特別支援学校やから、知的障害(IQが69以下が基本)の子どもが入学してくるんやけど、発達障害の子どももたくさんおる。でも(似たような特性を持ってるなぁ)と教師側から見ていても、発達障害の診断が出ている生徒と出ていない生徒がいる。
 もっというと、前任の普通高校にも(発達障害かなぁ)(グレーゾーンかなぁ)という生徒がやっぱりいた。

 そんな中でグレーゾーンの生徒は確かに支援が受けにくいと感じる。だって「発達障害」という言葉が本人からの書類にあれば、いろいろな配慮(クラスやら座席やら、ときには先生を増やすなんかの配慮)がとりやすいけど、何も書いてなかったら一般の生徒と変わらんもんね。「こんな性格だ」で片付けられてしまう。

 でも、診断のあるなしにかかわらず、誰しもがしんどいときには声を上げて助けてもらえるような社会がいいなぁ。どんな人でもたいへんなとき、あるよね。
 そんな社会を作っていくためにどうしたらいいんやろうか。

とりあえず、次回の記事、発達障害の特性について勉強してもう少し考えますか。(次回からの記事の宣伝になってしまった。笑)

2回目は、「こだわり」について解説!

3回目は「空気が読めない」について解説!


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