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初一人旅の小笠原諸島。苦しみの先に見えた思わぬ出会い。


一人旅に出たい。出来るだけ遠くへ。


あらゆる世界を夢見て、遠くの地へ思いを馳せた。


行動力がなく、何となく日々を過ごしていた大学生活。

せっかく時間があったのに……とそんな自分に気づいた私は、今や大学三年生。何かしなければという焦りが日々付き纏う。


今だからこそできること、それは旅だ。

海外の一人旅はハードルが高い。言語、文化などあらゆる壁がある。
それなら国内で一番遠いところへ行こう。

そう思い考えていると、果てしなく遠い島の存在がふと頭によぎった。


小笠原諸島

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23区内から船で24時間かかる東京都。そして、週に一度しか船は往復しない。早々帰ることはできない秘境。


こんな遠いところに”日本”が、”東京都”が、
あるなんて。

単純かもしれないが、当時の私にはそれだけでロマンが広がった。


旅の2日前、決断して急いで船と宿を取り、一人旅へ。予約した後、自分の行動力に驚いた。


心配する親を引け目に感じたが、今行かなければきっと後悔する。海開きも今年最後の月、11月。予定も空いている。行くしかない。


いざ、国内の秘境へ。

ワクワクとドキドキを胸に

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しかし、最初に待っていたのは船酔いだ。

波が強く、揺れがひどい。

寝床から起き上がれず、話しかけられる人もおらず、一人寝込んでいた。

一人旅って寂しいな。

逃げ場のない苦しみを味わう布団の中。

今頃家族はどうしているだろう。

自分の為だけに母からお金を出してもらったことに、ちょっぴり罪悪感を感じた。

だがしかし、もう引き戻せない場所まで来てしまった。これから先の4日間も全く読めない。

先行きの見えない不安が私を襲う。青い海がもう目の前にあるというのに。

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ようやく次の日の昼過ぎに到着。島に着いた時には、島に来たことよりも、苦しみから解放されたことが嬉しかった。

ずっと寝たきりだから体がギシギシだ。


未知なる島での4日間がスタート。

4日間。
意外と短いんだなと思う。ここまで長い時間かけて来たのに。

無計画でガイドブックも見ずに来た私は、宿の主や同じく一人旅をしに来た人にお勧めを聞いた。


イルカ、クジラ、南島(みなみじま)。

誰もが口にした言葉だ。

小笠原に来て必ず体験してほしいこと。
野生イルカとクジラのウォッチングと、南島というエメラルドグリーンの海がきれいな無人島に足を踏み入れること。

全てを見れるツアーは一万円ほどする。

それらはすぐ近くにある。
見に行かない選択肢はないだろう。
早速予約を入れた。

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自然豊かな場所でサイクリングを楽しみながら、次の日のツアーに心を踊らせる。あっという間に日が暮れ、1日目が終わってしまった。宿で一人旅の人と仲良くなり、居酒屋へ行き、満天の星空を見て、次の日が楽しみだなんて語らい合って。


2日目、朝早く船に乗って、ツアーへ出発した。

しかし、波が強く、風が強く、天候は曇り。


そして波の強さにまた船酔いをした。行きにも味わった苦しみが再び……。


しかも悪天候のため、海の色は透き通っておらず、イルカやクジラは見えないし、そもそも出てこない。

南島も波が強いため、今日は入る事が出来ないと言われた。

絶景にはあらゆる条件がつきものである。

そう簡単に見られるものではない、ということも含めて絶景なのかと感じた。

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結局その日は何も見れず、半日間船酔いだけを経験して夕方帰ってきた。

大きなギャンブルに負け、自らの貪欲さに情けなくなる。そんな気分だった。


この短期間で二度も酔いを経験し、そして高いお金をまた払って見られなかったら……と思うと、次の日行くという選択肢はなかった。


その日の夜、宿近くの公園でジャズが流れていた。ヤシの木のある海辺の公園にぴったりな音楽だった。
宿の人に聞いてみると、年に一度あるジャズフェスティバルだそう。
演奏者は、このために私と同じ船に乗ってきた旅人達だった。

入場料も人数制限もなく、誰でも自由に観ることができるため、私は同じ宿の人と観ることにした。

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島民にとっては、今日は生の音楽を聴ける年に一度のスペシャルなイベント。

そんなことを知らずに来た私。旅先でフェスに行くとは思いもしなかった。

これは何かの運命だったのだろうか。小笠原に来た意味はこれだったのか。

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海風を感じながら、ゆったりした音楽からノリの良い音楽まで。

観客は盛り上がっているのにどこか落ち着くフェスだった。

その時聴いた音楽のタイトルは何だろう。帰ってからも聴きたいな。

とびきりの有名人がきたわけでもなく、全く知らない人のフェスだったのに、すごく幸せな時間だった。


遠くのハードルの高い絶景を求めなくても、近くを歩いているだけで思わぬ幸せがあるのかもしれない。

明日は、島内をのんびり散歩しよう。

2日目は、ちょっと良い日になった。


3日目。同じ宿に泊まる旅人がツアーに行く中、私は参加しなかった。

昨日のフェスのような思わぬ出会いを探して。

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晴れ晴れとした日にも関わらず、シーグラスアートを作ったり、カフェでのんびりしたりして過ごした。

黙々と1人何かを作る時間、穏やかな海風に吹かれながら気になったカフェに入りのんびりする時間。

3日目は、思わぬ出会いなんてものはなかったが、すごく平穏な心休まる1日だった。


帰ると、同じ宿の旅人が言う。

「今日は全部見れたよ!」

私も何となくそんな予感がしていた。
その人は、ダイバーの資格を持っていて、海が大好きで、はるばるやってきて、夢に見ていたものを見られたのだから。

私みたいに変な直感で来る人なんかより、絶対その人の方が絶景を見る価値がある。

しかし、今日の自分と、その人の体験を比較すると、悲しくなってしまう。

あっという間に3日目の夜となった。

もう明日は15時にこの島を出る。

「明日、行ってみたら?」

同じ宿の旅人達に勧められた。

「明日は15時には船が出るし、出来ることも他にないし、ちょっと時間は短くなるけど、最後なんだし行ってみなよ。」

やはり、明日行くしかない。やはり直感で気分屋な私はすぐ申し込んだ。

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4日目の朝が来た。

晴天で、波も緩やか。
今日は行けるかもしれない。

見る価値があるとかないとか、昨日そんなことをモヤモヤと考えていたけど、そんなことどうだって良い。


絶景が見たい!!


ぐんぐんと進む船に乗り、イルカクジラ南島を目指す。

「あっ、イルカだ!」
「はい、飛び込んで!」

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イルカが目の前にくると、観光客は飛び込んで泳いで良いことになっている。私も必死に泳ぎ、その瞬間をかけがえのない思い出にしようとした。

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「クジラだ!!」

クジラが出てくるのは、ほんの一瞬。シャッターチャンスを逃さないようにと必死だった。けれど、撮れたクジラはもう海の中に入ってしまったものだけ。
やはり、自然の絶景はそう簡単ではない。


イルカクジラチャンスを楽しみながら、やってきたのは南島入り口。
目の前まで着くと、穴から真っ白な砂浜が見える。もう少しだ。

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環境の問題から、穴の先に船は入れないので、泳いで岸まで行くことになった。

透き通る海は、中もよく見える。綺麗な海には浅瀬の方でもカラフルな魚がいるのだ。

岸辺まで泳ぎ、砂浜に出ると、空想の世界のような場所が広がっていた。

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これを見に来たのか、私は。
日本にこんな素晴らしい海があるなんて。

海に潜っている時には分からなかったが、
遠くから見るとエメラルドグリーンと
淡いブルーのグラデーションがはっきりしている。

何にも汚されない自然本来の姿。自然はこんなにもカラフルなんだ。

美しさに感動するばかりであった。


ツアーが終わり、帰りの船に乗る。

行きも帰りも必ず島民は港まで来て、知らない人にでも、挨拶をしに来る。

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どんな人にでも。一期一会でも。

人間のそんな姿にも驚いた。


でも、ふと思った。

あれは、自然も人も本来の姿なのだ。

海は青い。人は挨拶をする。

当たり前のことかもしれない。

なのにその姿に驚いているなんて……普段、自分はどれだけ汚れた世界を見ているんだろう。


どこまでも美しく、汚れのない島だった。

はるばる来れて良かった。

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目的のない直感な1人旅はこれで終わった。


ここに来たことは決して間違いじゃなかった。
思わぬところで出会った音楽。苦しみを乗り越えた先にあった絶景。

目的のない旅は、先が見えないから面白い、
なんてことは今だから言えるのだけれども。


でも、思いきって遠くへ旅をして良かった。

時には、直感で思い切った行動をするのも良いのかもしれない。

旅での想い出は、お金を出してくれた母にちゃんと伝えよう。


この後、時間のある大学生の私は"気の赴くままに"をモットーに、卒業まで旅を続けた。


今は社会人になったばかりで、思いきって遠い場所には出かけられないが、長い人生で見た時、たくさん旅をして、多くの刺激を得た人でいたいと思う。


今は身近な散歩道にだって、思わぬ出会いがあるかもしれない。日々、旅をしているようにあらゆるものに好奇心を持とう。


この世界には、無限の可能性が広がっていると思うと、この世に生きていることの楽しさを感じる。


近くも遠くも色々な場所に行って刺激されたい。

終わりが見えないものではあるが、それが私の人生の目標となった。



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