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教え方だけじゃない。プロジェクト成功のスキル育成を阻む3つの原因。

management studioの吉見です。
いきなりですが、プロジェクトを成功させるスキルを組織として育成できていないというお悩みを抱えている方は多いのではないでしょうか。プロジェクトを成功させるスキルがあればみんなモヤモヤしなくて済みますし、組織としての効率性や成果も上がる、何より価値実現できる仕事はやりがいや充実度が違いますだから会社の利益というのもあるけれど、良い状態で日々の仕事をするためにもチームとして何とかしたい。でも、うまくいかないんですよね。試行錯誤しているが伝わっている感じがしない、メンバーも自分が伸びているという実感を持てていないようだし…。教え方が悪いとか本人に寄り添ってとか色んな原因を考えますが、その多くは方法論です。しかし実は、そもそも方法論以前にそうなってしまう原因があります。その原因は3つのどれかをやってしまっているからです。


01 まとまっていない

ひとつめ、教える方の教えることがまとまっていません。プロジェクトに限らない話ですが、教えるためには経験から得る暗黙知を形式知にして教える材料をつくる必要があります。いくら教える方法を工夫しても教えるものが曖昧なら伝わらないのは当たり前ですね。世の中には多種多様の教える材料が業界やジャンルごとにあります。プロジェクト成功のスキルもそうすればいいじゃないか、ということになりますが、プロジェクトはその性質上、形式知にすることがとても難しいのです。

プロジェクトの定義は「独自のプロダクト、サービス、所産を創造するために実施される有期的な業務」とされています。ひとつは「独自の」という性質が形式知にすることを難しくします。プロジェクトはプロセスも成果も再現性が低く、むしろそこに価値実現の意義がありますが、再現性の低いものから形式知にできることはとても限られてしまいます。
もうひとつは意外と思われるかもしれませんが「有期的な」という性質が形式知にすることを難しくします。「有期的」は言い換えると「時間軸で物事が進み終わりが来る」ということになります。だから時間軸でプロジェクトの様相は変化します。初期の不確実性が高く徐々に収束するという流れの中でメインテーマも変わります。この時間軸の対象を明確にしないと「一体どこの何について言ってんの?」という疑問に答えられず徐々に概論になっていき、教えてもらう方は抽象的すぎて実務のスキルとしてピンときません。
教えることがまとまっていないのは教える方の努力が足りないからではなく、プロジェクト自体にそれを阻む性質があるということです。

02 切り分けられていない

ふたつめ、プロジェクト成功のスキルが何なのかが切り分けられていません。プロジェクトをマネジメントする、というのは幅のある曖昧な活動です。どんな業界やジャンルのプロジェクトにも一般論として通用する鉄板のテクニックから、その業界特有の専門性と密接な関係のあるテクニックまで、かなりの幅があります。例えば私は普段、建築プロジェクトのマネジメントを実務で行なっていますが、その中にはステークホルダー分析やWBSなど他の業界でも同じように行うアクションもあれば、具体的な調達戦略立案やリスク分析など、その業界をある程度知らないとできない専門性が必要なアクションもあります。専門性は時間と経験の積み重ねが必要なスキルです。マネジメントのスキルは経験よりも思考のパターン、頭の使い方が必要になります。実務ではこれらがシームレスに求められますが、育成に関しては分けないと効率的に上げることができません。スキルアップに必要な時間とプロセスが違うのです。

また、切り分けられていないということは、プロジェクトの成功に必要なスキルを定義できていないという問題も抱えます。育成プログラムをつくるのに、そのスキルを定義できていなければ提供する側も受け取る側も解像度が低くなるのは当然です。

03 変わっていることに気付いていない

これが最も大きな原因かもしれません。育成する方が自分が現役だったころの仕事のやりかたと今のやりかたが変わっていることに気付いていないことがあります。「なぜ上手くいかないんだ、上手くできないんだ、言っていることが分からないんだ、こうやればいいじゃないか」と思う根拠となっている経験を得た状況と、今の状況がそもそも変わっているのです。
今はVUCA時代と言われるように社会の不確実性が高くなっています。また情報通信技術の発展で仕事のスピードも相当速くなりました。以前は「プロジェクト」と言いながら、実際にはある一定の理想的な目標があり、前例や事例を元にした「ルーティンワークのアレンジ」でどうにかなっていましたが今は厳しくなりました。

これは外部要因による変化です。物が売れる売れないでも同じことですね。以前は売れていたものが売れなくなった時「これは商品に問題があるのだ」という内部要因だけではなく市場や社会の変化といった外部要因を考えるのは当たり前の発想です。しかしなぜか育成についてはこの発想があまりありません。だから自分たちの教え方が悪い、もしくは組織の仕組みが悪い、何なら受け手側に問題があるのではないか、という議論になりますが、そうではなく教えている内容が仮に100%伝わったとしても今の現場で通用してうまくいくとは限らないのです。そもそもプロジェクトの目的自体も変わっています。

仕事の目的や方法が変わったのに仕組みが対応しきれておらず形骸化していることは多々あります。テンプレート化したチェックリストやエクセルシートでのプロジェクト管理などはその典型です。前提条件もクライアントも市況も違うのに何かの型に当てはめよう、今までやっていたフローが安心だから(現状維持バイアス)変えずに何とかしよう、という発想ではプロジェクトは上手くいきません。炎上を招いているのは担当者の力量ではなく教える側、管理する側、組織の問題です。その状況で無理に内製化の努力を重ねても、保守的なしくみを固持して変化しないうちは現場で通用するプロジェクトマネジメントのスキルを育成するのは難しいでしょう。

対策

プロジェクト成功のスキルを育成するには、これらの原因を避ける必要があります。

そのためにまず、育成したいスキルの定義を明確にしましょう。「プロジェクト」という漠然とした全体像で捉えるのではなく「プロジェクトの、どのフェーズの、何を対象にした、どんな目的のスキルに関することなのか」を定義する方が精度が上がります。
そして組織の主要な業務やサービスの専門領域とプロジェクトマネジメントのスキルがラップするところはどこなのかを見極め、分解したスキルの一部に経験やノウハウを集中させることが重要です。そうすることで、その組織ならではの特徴(売り、強み)や価値観が生まれ育成したい方向性の解像度とメッセージ性が上がります。
また外部要因の変化に対応してスキルの元になる経験や価値観のアップデートが重要です。世の中がどう変わっているから、どんなスキルの育成が必要なのかを具体的に設定し、今あるしくみを変化させることが大切です。
つまり、育成の方針はその組織のビジョンやバリューに基づいた偏りのあるものになります。人材育成サービスやコンサルティングは世の中に沢山ありますが「これを選んでおけば良い」というものはありません。その組織のポリシーや育成の目的に合ったものを選ぶべきです。

management studioではActive Project Managementと定義した攻めるプロジェクトマネジメントの実践とスキル提供を行っています。また形式知にすることが難しいプロジェクトマネジメントのスキルの体系化に取り組んでいます。

価値向上を目指すしくみによって積極的にプロジェクトを推進し、いい仕事を通じて価値実現をしたいというポリシーに共感いただけると幸いです。

吉見周平
management studio contact@mgt-st.com
HP https://www.mgmt-studio.com
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