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子どもたちの大半が「勉強ぎらい」である現状を大人は軽く見てしまっている

みなさんご存知のとおり、一定年齢以上の子どもというのは大体において勉強が嫌いなものです。

僕が「まなゲー授業」などを通じて見てきた範囲で言えば、小4ぐらいで「きらい派」が多数派となり、6年生になる頃には、クラスのうち数人をのぞくほとんどが「きらい派」になっていきます。以降も「きらい派」が増えることはあっても減ることはなさそうです。

圧倒的多数派であるという意味では、「勉強ぎらい」は「ごく普通」のことであると言えますし、実際、教員・保護者も含むほとんどの大人たちは、この状態をせいぜい「良くはないけどしょうがないこと」程度に軽く捉えてしまっているようです。

でも、少し考えてみて下さい。ことの深刻さに気づいてもらえるはず。

「勉強ぎらい」である一方、ほとんど全ての子どもたちは勉強を「だいじ」だと考えています。

いわく「将来役に立つから」「良い学校に進むために必要だから」「やらないと大人になって困るから」。これも今更という感じでしょうか。

しかし、「きらい」なものが「だいじ」、「だいじ」だと思うものが「きらい」というのは決して「ふつう」の精神状態ではありません。

矛盾する認知を抱えこんでいる状態を心理学の用語で「認知的不協和」と呼びますが、この状態が続くことは我々の心に大きなストレスをもたらします。

日々、この不協和にさらされ続けている子どもたち(学校で過ごす時間に加えて、宿題、塾、さらに親とのやりとりなど、1日の大半をこの状態で過ごす子も多いでしょう)は、たとえ「ふつう」に見えても、実はひどく苦しんでいます。

我々の心は認知的不協和をそのまま受けいれることが苦手で、なんとかして(意識的にも無意識的にも)認知を整合させようとします。

このとき「勉強なんて大事じゃない」あるいは「実は勉強好きかも」と勉強に関する認知を変えることで整合させることができれば良いのですが、それを子どもが自分一人で実行することは多くの場合困難です。

ではどうなるか。多くの場合「(大事なものが嫌いな)自分はダメなやつ(だから仕方がない)」と自己認識の方を変える(自己肯定感および効力感を低下させる)ことで認知の辻褄を合わせることになってしまうようなのです。

もちろん、子どもたちの頭の中でこんなふうに言語化されている訳ではありません。

でも、勉強と接する都度、嫌だなと感じる都度、勉強が大事だと思わされる都度、時にわずかずつ、時に一度に大きく、子どもたちの心がすり減っていくのです。

しかも、不協和の根本にある矛盾(嫌い⇄大事)が解消するわけではない(自己肯定感の低下は苦痛をもたらすので「嫌い」はむしろさらに強化されてしまいます)ので、勉強と関わる限り、終わることなく延々と繰り返され続けます。

このような苦しみは、大人たちもかつて経験してきたことのはずですが、喉元をすぎてすっかり忘れてしまっているようです。(忘れるだけならまだしも、記憶は都合よく美化され「立派な大人になるための試練」的にさえ扱われてしまう始末・・・)

子どもの勉強ぎらいを「普通」と見なしてしまうことは、子どもたちが日々この負のサイクルの中で消耗しながら過ごすことを「平常」として放置してしまうことに他なりません。

この苦しみの中で、子どもたちが学齢期の大半という長い年月を過ごすことが、一人ひとりの人生に、そして社会全体にいったいどれほどのマイナスをもたらしているか、ちょっと想像がつかない程だと思います。

にも関わらず、この問題が正面から論じられたり、対策されている様子はほとんどありません。

私たちは、子どもにとって勉強がどのようなものであるか、彼らの「勉強観」にもっと注意を払い、それを前向きなものに保っていくための手を打たねばなりません。

一人ひとりの子どもにとってはもちろん、教室全体に漂う雰囲気(子どもたちの共通認識)としての「勉強とは○○である」をどう調整し、彼らの心身の健全な成長にプラスとなる状態に保っていくか。

これに失敗すれば子どもと勉強の関係は悪化し、子どもにとっての勉強が「強制労働」と化してしまったり、教員や周囲の大人たちの存在が「看守」のようなものになってしまったりということになります。

くりかえしますが、勉強ぎらいは、少しも「ふつう」ではありません。

この認識が(大人の中で)改められるだけでも、状況は大きく改善されるでしょうし、さらに良くしていくための足場を作ることにもなるでしょう。

まなゲー授業をさせてもらった学校で、担任の先生や見学に来られた先生方の中には、ご自身でこのことに気づかれる方も結構いらして、みなさん目から鱗的な驚きまじりの感想を効かせてくれます。

子どもの勉強ぎらいが「大問題」であると我々大人が正しく認識することで、ようやく「じゃあどうするか」を具体的に考えることができるようになるのだと思います。

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