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数学で使うアルファベットなどの書き方

 数学の記事も色々書いてるのでこちらもよければ。

はじめに

 数学で登場する文字の種類は徐々に増えていく。中学までは高々アルファベットであるが、高校ではギリシャ文字がいくつか導入され、大学ではアルファベットを様々なフォントで区別し使い分けることになる。教科書に見慣れない文字が出てきて「これなんやねん」「どうやって書くんよ」と思った経験は皆さんもあるだろう(し、なんならそう思ってこの記事に辿り着いたのかもしれない)。そして数学書の悪質なところは、文字は使うが、往々にしてその書き方は提示しないところである。
 このnoteで私なりの文字の書き方をご紹介することで、皆さんが自分なりの書き方を見つけ習得する一助となればと思う。

書き方の方針

 書き方はTeXなどで表示される字形を基本にし、次のことを(優先順位をつけながら)意識した。

  1. 似ている文字の区別

  2. 字形の再現

  3. 描きやすさ

  4. かっこよさ、綺麗さ

また元言語での書き順なども参考に、極端に独自のものにならないように注意を払った。

各種フォントの書き方

ローマン・イタリック

 最も一般的なアルファベットのフォントである。平文を書く際にはもちろん、数式を書くときも基本これらを使用する。二つの書き分けはしていない。

$$
\large
\mathrm{
A~B~C~D~E~F~G~H~I~J~K~L~M}\\
\mathrm{N~O~P~Q~R~S~T~U~V~W~X~Y~Z}\\
\mathrm{
a~b~c~d~e~f~g~h~i~j~k~l~m}\\
\mathrm{n~o~p~q~r~s~t~u~v~w~x~y~z}\\
~\\
A~B~C~D~E~F~G~H~I~J~K~L~M\\
N~O~P~Q~R~S~T~U~V~W~X~Y~Z\\
a~b~c~d~e~f~g~h~i~j~k~l~m\\
n~o~p~q~r~s~t~u~v~w~x~y~z
$$

ローマン(上段)、イタリック(中段)とそれらの手書き(下段)

 U,V,Wの横線を右側に引くか左側に引くかにはかなりの議論があったが、現在はこれに落ち着いている。またu,vも明確に区別されるよう工夫をした。(詳しくは「似ている文字の区別」の段を参照)
 人によっては筆記体が入り混じってること(例えばx,yは筆記体だがzは筆記体ではない)に違和感を覚えるかもしれないが、これは字形の再現と私の書き方を確立する以前の癖によるものである。例えばx,yは筆記体で書いた方がイタリックの$${x,y}$$に近く見るが、zはそうではない。

 注)ローマン(立体)とイタリック(斜体)には正確には使い分けがある。(ざっくりいうと数式は基本イタリックだが、logやsinの様な略語に由来する数学記号にはローマンを用いる。詳しくは後述のリンクなどを参照)TeXなどを用いる場合には注意を払わなければいけないが、手書きに限って言えば、これは書き分けるほど大きな問題にはならない。少なくとも私は両者を書き分けないことで違和感を覚えたことや困ったことはないし、書き分けていないことを注意されたこともない。また、書き分けるとしても著しい見た目の違いにはならず、むしろ書き分ける煩雑さの方が大きいだろう。そういうわけで、現時点では私はこの二つの書き分けはしていない。

http://www.math.tohoku.ac.jp/tmj/oda_tex.pdf

黒板太字

 TeXでは大文字は\mathbb(おそらくmath blackboard boldが由来)、小文字は\bmなどよって書かれるフォントを手書きする時に使う。(初見の人は大文字と小文字のフォントの違いが気になるかもしれない。なぜこんなことになっているのかというと、大文字と同じような小文字の太字のフォントも存在はするが、導入するのに少々面倒があるためか、滅多に登場せず、むしろ\bmのほうがよく用いられているのだ)
 主に大文字は特定の集合を、小文字はベクトルを表すのに用いられる。かなりカッコいい。

$$
\large
\mathbb{
A~B~C~D~E~F~G~H~I~J~K~L~M}\\
\mathbb{N~O~P~Q~R~S~T~U~V~W~X~Y~Z}\\
\bm{
a~b~c~d~e~f~g~h~i~j~k~l~m}\\
\bm{n~o~p~q~r~s~t~u~v~w~x~y~z}
$$

黒板太字とその手書き

 イタリックに縦線を一本入れるのを基本ルールにしている。基本右側に縦線が入っているが、$${\mathbb{A,N}}$$などは字形の再現を優先した。

花文字

 TeXでは\mathscrや\mathcal(それぞれおそらくmath script、math calligraphyが由来)などによって書かれるフォントを書く際に用いる。(\mathcalは正確にはカリグラフィー体というフォントで花文字ではない)主に集合族を表すときに用いられる。かなり綺麗。

$$
\large
\mathscr{A~B~C~D~E~F~G~H~I~J~K~L~M}\\
\mathscr{N~O~P~Q~R~S~T~U~V~W~X~Y~Z}
$$

花文字(\mathscr)とその手書き

 曲線でなめらかに丸みを帯びさせて書くのを基本ルールにしている。一部を誇張して大きく書くのがコツ。例えばY、Zは油断するとイタリックと区別がつかなくなるので、最初の弧の大きさで差別化している。

ギリシャ文字

 ギリシャ文字は未知、異質な感じがかっこいい。アルファベットばかりの中にギリシャ文字が出てくると、これはちょっと特別な変数だな、とか思う。

$$
\large
\Alpha~\Beta~\Gamma~\Delta~E~Z~H~\Theta~I~K~\Lambda~M\\
N~\Xi~O~\Pi~R~\Sigma~T~\Upsilon~\Phi~X~\Psi~\Omega\\
\alpha~\beta~\gamma~\delta~\varepsilon~\zeta~\eta~\theta~\iota~\kappa~\lambda~\mu\\
\nu~\xi~o~\pi~\rho~\sigma~\tau~\upsilon~\phi~\chi~\psi~\omega
$$

ギリシャ文字とその手書き

 大文字のABEZHIKMNORTX、小文字のoはアルファベットのそれぞれに対応するものと全く同じに書いている。というのも、TeXではこれらの文字の区別がないのだ。似ているアルファベットとの書き分けは「似ている文字の区別」の段に記しておく。

ドイツ文字(フラクトゥール)

 TeXでは\mathfrak(おそらくmath frakturが由来)などで書かれるフォントを表すのに用いる。代数においてイデアルを表すときなどに用いられる。これも非常にカッコいい。

$$
\large
\mathfrak{
A~B~C~D~E~F~G~H~I~J~K~L~M}\\
\mathfrak{N~O~P~Q~R~S~T~U~V~W~X~Y~Z}\\
\mathfrak{
a~b~c~d~e~f~g~h~i~j~k~l~m}\\
\mathfrak{n~o~p~q~r~s~t~u~v~w~x~y~z}
$$

フラクトゥールとその手書き

 直線の部分と曲線の部分を意識して書き分けるのがコツ。IとJの大文字は区別していない。詳しい書き順などは以下の記事で。

似ている文字の区別

 以下の(英語の)アルファベットとギリシャ文字は字形が似ている。

  • $${n,\eta}$$(エヌ、エータ)

  • $${k,\kappa}$$(ケー、カッパ)

  • $${u,v,\nu,\upsilon}$$(ユー、ブイ、ニュー、ウプシロン)

  • $${p,\rho}$$(ピー、ロー)

  • $${x,X,\chi}$$(エックス、カイ)

  • $${Y,\Upsilon}$$(ワイ、ウプシロン)

  • $${w,\omega}$$(ダブリュー、オメガ)

特に同時に登場し得るものは、書き分けられることが非常に肝要なので、私なりの書き分け方を紹介する。


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