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科学は社会に必要ないのか:Twitterから学ぶ④

 noteと一緒に始めたTwitter。こちらも運用し始めて半年がたった。noteはかなり楽しくやらせてもらっているのだが、Twitterは結構負担に思うことが多くて苦しんだ。3か月ほど前に「Twitterから学ぶ」として3連載を発表させてもらったが、今回はその続きである。この間、最も学んだのは、「研究者たちの科学必要論が一般に受け入れられない」という現実を見せられたことだった。(小野堅太郎)

 マナビ研究室では、代表的なSNSであるTwitter, Instagram, YouTube, noteの4つを並行運用してきた。共通部分はあるものの、それぞれに特徴的な文化があり、画一的な運用では対応できない。Twitterは、情報収集という面では他と比べて圧倒的に優れている。大学人としては、Twitterで「研究成果の発信」や「最新論文紹介」などをやっていこうと考えていたのだが、そういった内容はあまり人気がなく、労力の割に活動成果は上がっていない。研究成果は所詮、研究者への情報提供であるが、一般人の方にはよくわからないし、研究者でも専門でなければ興味ないので人気がないのは当然である。最新の論文紹介に関しては、どうしても最近は感染症関係のものばかりで、そもそも興味がある論文が少なくなってしまった。また、他のアカウントでちゃんと論文を購読した上で要約している方がいるので、「自分がやらなくてもいいや」と思う。

 というわけで、Twitter活動としては、マナビ研究室のSNS活動の情報発信がほとんどで、時々、小野の個人的なことをつぶやく程度のことしかしていないです。では、他の大学人・研究者たちは何をされているかというと、一番多いのは、「愚痴」です。多くのイイネがついてタイムラインに上がってきます。なんか読んでいると「研究者にはなりたくないな~」と思わせられます。そもそもTwitter全体が愚痴の集合体みたいなものなので、研究者に限った話ではなく、各業界の裏話がわかります。マナビ研究室YouTube「大学法人化を検証する」シリーズでお話しさせていただいたように、確かに今の研究環境は厳しいものになっています。まあ、厳しくっても、我々は楽しく大学教育・研究をやっているわけです。

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独立行政法人化により、大学の研究時間は2割以上も減少 

 Twitter上での研究者たちは他に、「玉石混合のTwitter情報に対する修正」「研究・科学の社会的有用性についての議論」をやっています。こういったやり取りは、自分の価値観を揺るがしてくれたので、大変勉強になっています。今回の記事は、これについて考えてみようというわけです。

 Twitter情報修正に関してですが、研究者が科学的に間違った情報を訂正しています。しかし、指摘された側が過敏な反応をしたり、無視したり、ひどい場合は研究者をブロックしてしまうケースがあり、会話の断裂が起きています。研究者側のコメントの書き方(ニュアンス)に不備があったのかもしれませんが、誰しも間違いを指摘されると嫌な気分になるものです。小野も初めの頃は「~ですよね」とかコメントしていたのですが、なんか知識を見せびらかして穴をついているような気がしてきて止めてしまいました。研究者同士なら成り立つ会話も、研究者と一般の方、となると、どうしても研究者の言葉はキツく受け取られます

 研究は有用か?の議論に関しては、「研究は将来の社会発展のために重要」という意見と「研究のほとんどは経済的に還元されない」という意見の対立で終始し、折り合いが見られません。そもそも研究者は研究をする当事者であって利益相反がありますから、研究の有用性を語っても信用度が低いです。そもそも科学なんかなくたって人は生きていけるのです。これは「車がなくたって人は生きていける」「服がなくたって人は生きていける」ということと同じです。でも、ご飯がなかったら人は生きていけません。水が無かったら人は生きていけません。「研究のほとんどは経済的に還元されない」という意見自体は真実ですし、「研究費に回す税金があったらもっと社会保障に回したらどうだ」という意見に反論はできません

 しかし、考えてみてください。車はいるし、服も必要ですよね。いや、研究を車や服のような生活必需品と一緒にしないでくれ、と言われるかもしれません。ならどうでしょう。映画、漫画、TVドラマ、TVゲーム、芸術(音楽・美術)、スポーツ、将棋・囲碁は要りますか?

 人によって必要だったり、必要ではなかったりするでしょう。とはいえ、「要らない!」といえる人はどのくらいいるでしょうか。できれば、これらが盛んであった方が、お金を使って豪華で派手な方が楽しいですよね。日本だけでなく、世界に広がっていき、大きなビジネスとして社会に組み込まれているわけです。と同時に、多くの売れない映画や漫画やドラマやゲームが存在し、日の目を見ない芸術家やスポーツ選手や棋士が大量にいるわけです。研究も同じです。

 研究は大学が出発点です。あらゆる産業・医療は研究を基にしています。科学が社会にいらないわけがないのです。マナビ研究室「大学法人化を検証する」シリーズにもあったように、国からの援助は減少傾向です。研究者はTwitter内のクラスター(アカウント間のフォロー・フォロワーで繋がった集まり)で安穏と過ごすのではなく、いかにして他のクラスター内へ飛び込めるのかが重要なのだと感じています。「Twitterから学ぶ①」では、「だらだらとTwitterを見ているだけでもかなり面白くなった。これが、始めて2か月くらい。」と書いていいて、科学者クラスターを2ヶ月で得たことが読み取れます。現在は、研究者・教育者以外の方も積極的にフォローするようにしています。

 次回、ではもう少し具体的な方策について書きます。


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