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NFT理解のための、暗号資産とブロックチェーンまとめ:はやりのIT用語と研究活動③

 デジタル証明NFTの研究利用を考えてみた。そのためには、暗号資産とブロックチェーンについて話さないといけないので、今回はその話です。小野は別にIT専門家ではないので間違いもあるでしょうが、お許しください。間違いのご指摘大歓迎です。(小野堅太郎)

 はやりのIT用語「メタバース」「VR/AR」ときたら、最後に「NFT」です。NFTとは何なの?と問われると話が長くなってしまいます。NFTはFTといわれるものと比べて法制化も不十分であり、期待値だけで取引されているところがあります。まずはFTである暗号資産とその運用を支えるブロックチェーンの仕組みから説明していきます。

 暗号資産は「仮想通貨」ともいわれますが、通貨として流通しているわけではないので現実にそぐわない名称です。とはいえ、ビットコインなどは現実の通貨である円やドルに変換が可能な状態にあります。そこで、通貨というより「資産」としての価値がある、と言えます。「暗号化されたデジタル情報」に価値がついているので「暗号資産」という名前で最近は呼ばれるようになったわけです。

 暗号資産で取引される数値1つ1つを便宜的に「トークン(token)」といい、「しるし・象徴」という意味から派生して「証拠なるモノ」というニュアンスがあります。電車に乗るときに買う切符やコンサートチケットもトークンであり、「ちゃんと料金を払ったという証拠」という理解です。むかし、サンディエゴの国際学会に行ったときに路面電車に乗ったのですが、警察がトークンを持っているかのチェックに来ました。駅外にはトークンを持っていなかった無賃乗車達が手錠をかけられうつ伏せにずらっと並んでいます。同乗していた大学院生が真っ青な顔で「トークンがありません!」といったときは、ホントに焦りました(無事見つかりましたが)。

 トークンは人と人の間でやり取りができます。100円で買ったトークンを欲しい人がいたら120円で売ることができます。この取引内容を記録する仕組みがブロックチェーンと呼ばれる総合技術です。この仕組みは「中央管理者のいない永続的な改竄防止運営」を目的としています。ですので、暗号資産に関わらず、ブロックチェーンは不動産や税金などの経済活動全体にも利用可能です。

 では、ブロックチェーンとはどんな仕組みなのかというと、取引の情報をある程度まとめて塊(ブロック)にし、それを時系列に鎖(チェーン)状に繋いでいくというものです。なーんだ、普通の台帳じゃないか、となりますが、前と後ろのブロックをただ繋ぐのではなく鎖状(前の輪っかにも絡む)というところがミソです。

 ハッシュ関数という暗号技術があります。暗号とはいっても、キーによって解読可能な普通の暗号とは違って、解読不可能です。この技術では、どんなに短い情報でも長い情報でもハッシュ関数で処理すると(ハッシュ化)、意味不明の固定長文字列(ハッシュ値)に変換されます。1文字でも異なると全く異なるハッシュ値が出てきます。ブロックチェーンでは、あるブロックのハッシュ値が次のブロック情報に組み込まれます。ですので、もしあるブロックを少しでも改竄すると、次のブロック内のハッシュ値と全く一致しなくなるので次のブロックも改竄しないといけません。また次、また次、とチェーン改竄が必要になります。加えて、取引情報は次々と追加されていきます。つまり、改竄しようと思ったら膨大な作業になってしまい、改竄は不可能になるわけです。

 ブロックが初めから改竄されていたら元も子もないです。そこで、不特定多数の有志でちゃんと「ブロックが正しい」との承認をしようという訳です(合意アルゴリズム)。ビットコイン(プルーフ・オブ・ワーク)の場合、新しいブロックには前ブロックのハッシュ値とナンス(number used onceの略:一度限りの数の意味)と呼ばれるランダムな数字が組み込まれ、新たなハッシュ値が出されます。ナンスは何十億個以上ありますが、コンピューターで総当たりすればなんとか見つけられます。このナンス発見に有志たちが参加し、条件に合うナンスを見つける競争をします。一旦、ナンスが見つかれば、ハッシュ値の確認は簡単ですので、皆の承認が得られます。これにより「ブロックの承認」が不特定多数の合意のもと行われるわけです。

 ちなみに、一位になった人は新規トークンがもらえます。これが金鉱を掘る作業のようなので「マイニング(採掘)」といわれ、その作業をかって出る人が「マイナー(採掘者)」といわれています。かなり高速のコンピューターがないと1位になれないので、現在は個人では参加が難しいようです。

 この他にも契約の自動化(スマートコントラクト)や公開鍵暗号技術による電子署名が組み合わさり、暗号資産運用におけるブロックチェーンの基本システムが作られています。様々なブロックチェーンの様式があり、暗号資産ごとに似ていたり似ていなかったり、変換できたりできなかったりです。

 あともう一つ大事なのは、取引記録を複数のコンピューターに同時保存させる、というものです(P2Pネットワーク)。これによって、どこかで大量のパソコンが壊れても、世界のどこかの他のパソコンに記録が残っているのでデータは失われません。Dropboxなどクラウドサービスも同じ仕組みを使っているわけですが、会社が倒産したらデータは消えてしまいます。まあ、暗号資産も価値が下がって誰も取引しなくなれば、失われたも同然になりますが。特定の管理者のいない分散型データ保存をとるからこそ、先の不特定多数による合意アルゴリズムが「情報の正確さ」を担保するために必要ともいえます。

 さて、この暗号資産のトークンですが、あなたが所有する1ビットコインを私が所有する1ビットコインと交換しても、数値上の取引ですから何の問題もありません。つまり、1つ1つのトークン自体には何の識別はなく、取引上の数値として代替可能なものです。これを代替性トークン(Fungible token: FT)といいます。NFTはNon-fungible、非代替性トークンです。つまり、一つ一つのデータは個別のものと理解され、その情報に紐付けされた取引が記録されていきます。

 暗号資産は普及したことを受けて、2016年に資金決済法に組み込まれ、定義、分類、取引業の登録など法整備されました。脱税やマネーロンダリングを防ぐだけでなく、利用者の権利保護も盛り込まれています。しかし、NFTの方は非常に曖昧な状態です。ブロックチェーンという同じ仕組みを使っていても、「価値」の扱いが大きく異なるからです。

 ブロックチェーンという同じシステムを使っていながらも、FTとNFTが違うことを理解してもらえたでしょうか。次の記事では、NFTと研究活動について未来像を考察します。

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