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あそびが学びだったプリスクール*多様性を伝えることの大切さ

フォローさせていただいている、キーくんさんの記事です。

キーくんさんはドイツの森の幼稚園で先生になるべく、現在はドイツの森の幼稚園で1年間の実習をされていらっしゃいます。そんなキーくんさんの、森の幼稚園でのお話を拝読して、昔わが子が通ったプリスクール(日本の幼稚園年少、年中さんにあたります)を懐かしく思い出しました。

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こどもの通ったプリスクールは、Cooperative nursery school という、ちょっと特殊な幼稚園でした。先生は、主任の先生 Mrs. L と、アシスタントの先生 Mrs.G の二人だけ。でも、当番制で親もアシスタントに入ります。

親にも子供にもちょうどいい速度で、子供が社会に踏み出す始めの一歩を見守る、そんなゆっくりのんびりとしたプリスクール。

こどもをこのプリスクールに通わせることで、こどもだけでなく、私もたくさんのことを学びました。



注)これから、わが子のことを 「チビマナ」と呼びます。

Cooperative nursery schoolとは

チビマナは、 Cooperative nursery school という、親が運営に携わるプリスクール(日本の幼稚園年少、年中さんにあたります)に通いました。

このCooperative nursery school と、民間や公立の幼稚園との違いは、親が運営に携わるという点です。

親は、主に以下のことをします。

Parent commitee:運営にかかわる権限をもつ委員会を親が担い、会計から毎年の公的な届け出、園のイベント計画、広報まですべてを取り仕切る。

Helping parents: 当番制で親が先生のアシスタントとなり、子供の世話から、おやつの用意、そして片付けを担う。この、当番制でのアシスタント業務は、免除してもらいたい場合は、お金を払う。

Work days: 年に2回、家族から大人1人が参加して園の大掃除をする。

これ以外にも、アップルピッキング・ハロウィーン、卒園式など季節ごとの行事では、親が企画、運営、当日の運転手、アシスタント等、フル稼働でサポートします。

チビマナの通ったCooperative nursery school は、とても小さな幼稚園で、先生は2人。こどもは、3歳児クラスと、4歳クラス(pre Kクラス)の2クラスで、それぞれの最大受け入れ人数は8人。なので、最大でも子供の数は16人でした。Helping parents は、2人なので、大人対子供の割合は、 4対16。大人1人に、こども4人でした。週の半分は異年齢混合クラスで、それ以外の日は、3歳児クラスだけの日、4歳児クラスだけの日と分けられていました。

私がCooperative nursery school を選んだ理由

どうして、私がこういう形式のプリスクールを選んだかというと、

① すこし周りと違うチビマナのことを、なんのジャッジもなく受け入れてくれたこと。

これは、きっとCooperative Nursery でなくてもよかった理由ですが、親が運営にかかわるということは、親の目が常にあるというわけで、何か問題があった場合、普通の幼稚園より格段と対応しやすいと判断したからです。そして、見学した際に私の心配を相談したら、主任の先生が、「何の問題もありません」と、きっぱりと言い切ってくれたのが、とても心強かったことがあります。

② 遊びベースであること。

③ 繊細さんのチビマナは、少々分離不安があったので、できるだけ身近でこどもの様子を見たかった。

④ 親が運営にかかわるので、費用が少しだけ安い。
(アメリカの保育園、幼稚園の費用は、本当に高いです。ですので、少しでも安くなるというのは、魅力的でした。)


どんな学校だったか

小さな町の古い建物の1階が、プリスクールでした。トイレは2階にあるので、おやつの時間の前に、ちびっこたちを一列に並べて、二階へ連れて行ったことを、今も懐かしく思い出します。

Mrs.L が毎日1つ、手先を使ったアクティビティを用意してくれます。

これは、字を書けるようになるには握力と手のコントロールをつけることが大切だからということなのですが、ただ紙に文字の練習を繰り返すということはなく、ビーズを紐に通すとか、小さいブロックを積み上げるとか、遊びの延長に学びがあるという感じでした。

それも長くはさせません。10分くらいで終わります。 そのあとは、読み聞かせがあったり、ギターに合わせて歌を歌ったり、踊ったり。

時には、パイロットや獣医をしている親が制服を着て、プリスクールにやってくることもありました。

パイロットさんが来た時は、朝から教室が、飛行機になりました。子供たちは、ビシッと制服を着た本物のパイロットさんの運転する飛行機で、ロンドンまでの旅を楽しみました。

獣医さんが来た時は、教室が動物病院になりました。子供たちはお気に入りのぬいぐるみを持っていき、獣医さんが一人一人診断をします。そして、みんなでピンクや青の包帯を巻いてぬいぐるみのお世話をしました。 

チビマナはピンクのイルカ(名前は、ムームーちゃん)に、ラメの入ったピンク色の包帯を巻いて帰ってきました。ムームーちゃんの診断は、風邪。重症だったそうです。

天気が良ければ、外で一日中過ごすこともありました。そして、おやつを食べて遊んでるうちに親が迎えに来るという1日でした。


実際に通ってみてどうだったか

半日保育で、朝の9時から12時までというとても短い時間でしたが、チビマナが初めて触れる社会生活は、私たち親子にとって、とても濃い体験でした。

私も月に何回かhelping parentとして、クラスに参加しました。その中で印象に残っているのは、遊びの中にたくさんの学びがあることに気づいたことでした。

子供達はクラスメートと時間を過ごす中で、自分の殻をやぶり、少しづつ自分の領域を広げていきます。

例えば、遊びのスケールがどんどん広がるなかで、クラスメートと協力することだったり、ごっこ遊びでどの役をするか話し合うことだったり、子ども同士でいろいろ試行錯誤を繰り返す中で、子供たちはどんどん成長していきます。

ある日は、地面に落ちていた葉っぱを集めて、キャンプごっこをしました。棒の先に葉っぱをさして、みんなでご飯を作ります。火が消えないように、砂をかけて、火の番をする子、その横で木の枝でテントを作る子。食べ物を探しに行く子。

最初は二人だけで始めた遊びが、どんどんスケールが大きくなって、クラス全体で遊ぶということもしょっちゅうでした。

遊びに没頭している時の子供たちのひたむきな集中力は、圧倒されるものがありました。そして、そんな子供たちの横顔がとても美しかったことをよく覚えています。

一つだけ後悔していること。多様性を伝えることの大切さ

Cooperative nursery school だからこそ、親の連帯感が強く、私もたくさんのことを学びました。

特に、こどもが悪さをしたときに、しっかりと論理づけて、忍耐強く子供に話す大人の姿を見て、子供を子ども扱いしないことの大切さを知りました。

それと同時に、普段は冷静な親が、あまりに聞き分けのない自分の子供に、ブチギレた姿を見て、ほっとしたことも覚えています。

そんな、たくさんの思い出のあるプリスクールですが、私が今でも一つだけ後悔していることがあります。

それは、クラスでチビマナ一人だけがアジア人だったことです。

当時私たちが住んでいた州は、とても多様性に富んだところだったので、このことが問題になると思っていませんでした。

しかし、ある日チビマナが

「チビマナのお肌は、いつ白くなるの?石鹸で洗えば、お友達みたいに白くなる?」

と、ゴシゴシ石鹸で手を洗っていたことがあります。その時、環境が子供に与える影響の大きさを知り、とてもショックを受けました。

そのあと何度も、世界にはいろんな肌の色の人がいるんだよ。チビマナのお肌の色は、ママとパパと一緒。とてもいい色だよ。と、いろいろ話しても、

「いやだ、チビマナもお友達と同じ白い肌がいい」

と、肌をゴシゴシと洗っていました。そして、目の色もなんで黒いの?ブルーがいい。と、悲しんでもいました。

これには、クラスでチビマナ一人がアジア人だったことだけが原因ではなく、当時チビマナが好きだったテレビのキャラクターが、白人だったということも要因の一つだと思います。

小学校に上がり、いろんな肌の子と友達になる中で、今ではチビマナは自分の肌の色を誇りに思っています。

しかし、英語も話せず、周りに合わせることに一生懸命だった当時のチビマナにとって、肌の色がみんなと違うということは、とても大きな理解できない問題だったのです。

肌を白くしようと、ゴシゴシ体を洗っていたチビマナを見て、アメリカで生き抜くには、いろんな強さを身に着けていかなければならないのだと、そんな現実を突きつけられたような気がしました。

そして、こんな小さいときから、自分の力ではどうしようもない現実と向き合わせてしまったことに、親として申し訳ない気持ちになったことを覚えています。

それから、意識していろんな肌の色の子供が書いてある絵本を読みました。

子供は普段生活している環境からたくさんのメッセージを受け取ること、そして周りの大人はそのことを理解して、意識して多様性について子供に伝えなければいけないことを学びました。

こんな後悔も含めて、たくさんの学びを与えてくれたプリスクールでした。チビマナ自身は、あまり当時のことを覚えていません。しかし、私にとっては、本当に思い出が一杯つまった2年間でした。


最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました。







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