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セメント樽の中の手紙

たった4ページしかなく、すぐ読めた。
のだが、この4ページの中にいろいろな意味が凝縮されている。
その意味を一つ一つ考えるのが面白い。

たとえば、自分の妻に対する扱いが変化するところ。
主人公はしきりに鼻を気にしており、鼻=邪魔なものという扱い。
そして妻を“嬶(かかあ)”と呼び、邪魔者扱い。
しかし手紙を読み終えた後は妻のことを細君と呼び、お仕えする者という扱いに。

あと気になったのは伝達手段。
口頭だと双方向の情報のやりとりのため総合的に情報を判断することができる。
手紙だと一方向の情報のやりとりのため読んだ方は真偽を疑うことなく信じてしまう。
その内容がどれほどぶっ飛んでいようがである。

この話、プロレタリア文学だからか、労働者階級について書かれている。
セメント=地面ということで労働者は資本家に踏みつけられることを風刺しているとの見方もある。


とまあ、たった4ページの話についてあれこれ書いた。
たった4ページなのに今まで語り継がれるのは、解釈の余地が多いからであろう。
上記の他にも作者が言いたかったことはたくさんあると思われる。


ちなみにワタクシのめちゃくちゃ変な解釈・・・
最初読み終えたときは、“手紙の主=昔の妻”だと思った。
手紙の終わりにある住所と名前を見て、「へべれけに酔っ払いたい何もかもぶち壊したい」と言ったから。
子だくさんであるが、1人目の子は自分の子ではないかもしれないと思ったのか。
でも今妻のお腹にいる7人目の子供は自分の子である、そういう意味で妻にありがたみを感じて細君と呼んだのか?

まあ絶対に違うだろうけど、こんなふうに自分なりのやり方で自分なりの解釈で見つけていくのも面白いのではないか。
そういうことを考えさせられた、たった4ページの読書体験だった。




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