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[Side Story] 久しぶりの帰省③

■宇宙巡光艦ノースポール
[Side Story]
久しぶりの帰省③

みなさま、
はとばみなとです。

舞さんは久地さんと別れて、これまで来た道をそのまま進みました。家の方に曲がる手前に、舞さんの家で使っている、カキの作業小屋がありました。舞さんの実家は、カキの養殖をしているのです。舞さん、小屋の中を覗いてみました。

男性と女性が何人かで作業しています。カキの出荷に使うケースを水洗いしている女性もいます。表に止めた軽トラから荷物を降ろして小屋の中に運び込んでいる男性もいます。

道路側の窓の所に事務机があって、女性が座って伝票を見ながらキーボードを叩いて画面に何かを入力しています。

舞さん、笑顔を浮かべました。

「萌。」

舞さんのその声に気付いて、女性がこちらを見ました。とたんに、驚きの表情に変わりました。

「お、お姉ちゃん。」

立ち上がると舞さんの前まで来ました。

「ただいま。」

舞さん、ちょっと照れくさそうに、小さめの声で言いました。

「あ、お、おかえりなさい。」

その女性も、ちょっとぎこちないしゃべり方で答えました。

舞さんの妹さんの、萌さんなんです。『めぐみ』と読みます。

「どうしちゃったの? 突然。」
「うん。だいぶ長く帰ってなかったからさ。たまには、と思って。それと、仕事の話もあってさ。」
「えっと、じゃあ、5分くらい待てる?」
「うん、いいよ。」

萌さんは、畳んで壁に立てかけてあったパイプ椅子を持ってくると舞さんの前に開いて置きました。

「ありがと。」

舞さん、その椅子に腰掛けました。

萌さんは、壁際の机に戻りました。伝票を何枚か入力したようです。実は、世の中では、個人経営のお店や、舞さんの実家のような、農林水産業の末端の現場でも、業務の電子化が行われていました。でも、紙の伝票が必要な場面も、まだまだ発生する状況なのでした。完全な電子化はなかなか難しいようです。

萌さんは続けて、他の画面を開いて確認しているようです。何かメモも取っています。

「ふー、終わった。」

萌さんが立ち上がりました。小屋の奥で休憩していた女性に声を掛けました。

「じゃあ、あと、よろしく。」

その女性に後を任せたようです。

萌さん、小さなバッグを持つと舞さんの前に行きました。

「家に行くでしょ?」
「もちろん。」

姉妹は、揃って歩き始めました。作業小屋の前の交差点から山の方に向かって進みます。すると、すぐに舞さんの実家です。

萌さんが、玄関の引き戸を元気に開けました。

先ほど書いたように家の1階は、玄関の他は物置と車庫だけです。萌さんは、スニーカーを脱ぎながら家に上がろと、玄関正面の階段の下から2階に向かって大声で呼びかけました。

「ただいまーー。おかあさんいるー?」

舞さんも静かに玄関の中に入りました。まるで、初めて招待されたお客さんのようです。この家で生まれて、育ったはずなのに、不思議ですね。

「おかえりーー、早かったわねーー。」

2階から声が聞こえました。おかあさんですね。舞さんは、その懐かしい声を聞きながら、玄関の隅に座るとパンプスを脱ぎ始めました。

「お姉ちゃんが帰ってきたよーー。」

萌さんが、そう叫びながら2階へと上がっていきます。舞さんも家に上がると、階段の下まで行きました。

「えっ?! 舞が帰って来たのかい?」

2階で足音が聞こえたかと思うと、階段をバタバタと降りてきました。

そして。

「舞、どうしたのーーー、久し振りじゃない。」

玄関に降りて来るなり、階段の下に立っていた舞さんを強くハグしました。

「ただいま。おかーさん。」

舞さんが控えめながら明るい声でお母さんに帰宅の挨拶をしました。

お母さんはハグをやめると両手を舞さんの両肩に置きました。

「うれしいわー、あなたに会えて。」
「私もうれしいよ。」
「で、どうしたの? 何かあったの?」
「ちょっと、仕事の話があってさ。」

お母さんと舞さん、萌さんは階段を上がって2階のリビングに行きました。

(つづく)


■宇宙巡光艦ノースポール
ただいま、kindleからの電子書籍の発売を進めています。
現在、以下のように、4冊が発売済、1冊が発売予定となっております。
※全巻、Kindle Unlimited に対応しております。
※続刊を隔週木曜日に発売すべく、鋭意、取り組んでおります。

■2024/4/18日(木)、発売予定!
・第2章 宇宙巡光艇シーライオン
- 第1節 静かな海、太平洋
シーライオンの飛行テストの第1段として、地球の大気圏内で、太平洋を一周回るテスト飛行を行います。

■発売中!
・第1章 イントロダクション
- 第1節から第4節【発売中です】
小杉さんとライラさんが、ノースポール・プロジェクトに、どのように参加したのか、そして、そもそも、なぜ、ノースポールという宇宙船が建造されたのか、物語の発端を描いています。

以上、ご購入頂いて、読んで頂けますとさいわいです。
よろしくお願いいたします。m(_._)m

#小説 #SF #宇宙 #宇宙船 #宇宙旅行 #宇宙探査 #太陽系 #銀河系 #異星人

2024/04/13
はとばみなと

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