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ゆとりのゲーム感想「メゾン・ド・魔王」


【はじめに】


ゲームを嗜むようになってから20年余り。ありとあらゆるジャンルのゲームを貪欲にプレイしてきた。面白いゲームやつまらないゲーム、心に響く作品、1年後には主人公の名前すら忘れてしまう作品等と自分の中で軸を決めて、評価を下していた。そのような事を続けていくと、残念なことに新しい感動や刺激を受けることは少なくなっていくと思う。1度味わった感動を超えるためにその高いハードルを超える必要があるからだ。まぁ、「思い出補正」なんかは作品に多く触れるが故に付随される現象なのだろう。

私もなるべくゲームを通じて刺激を受けたいとは常日頃思っているのだが、そんな作品は年を増す毎に少なくなっている。はぁ、悲しいなぁ・・・だが、去年何となく買った「勇者のくせになまいきだ3D」はすごかった。とっつきやすいながらも奥の深いゲームシステムと今まで馴染みの薄かった「タワーディフェンス」というジャンルの魅力を私に植え付けるのに最適だったのだ。普段PSPのゲームはよっぽどのことではないと買わないが、これはとても面白かった。もはやベタな言葉ではあるが、記憶を消してもう一度プレイしたい。

PSP用ソフト「勇者のくせになまいきだ:3D」
シリーズの通称は「勇なま」

そんな勇なまだが、難点を挙げるとしたら、難易度が少し高かった所だろうか。3Dをクリアした後に2をプレイしたのだが、3Dにのみ登場する水棲生物がいないので、3Dでそれに頼っていた私のプレイではかなり苦戦してしまった。このこともあり、2は3Dよりも楽しめなかった。それ以来、私はタワーディフェンスで好きになれるような作品は無いか、と考えるようになり、持っているハードで出来る作品を探していた。

そしたら、「メゾン・ド・魔王」のことを思い出した。もう8年ぐらい前の記憶だ。3DSやPS4でリリースされたゲームでまだインディーズゲームが今ほど浸透していなかった2013年ぐらいに割と話題になっていた気がする。私もその噂を聞きつけ、プレイしたら見事にハマった。なんか変にクセになるんだよな。やめ時が分からなくなって。ただ、なぜかクリアした時の記憶が無かった。あれ、そもそもクリアしたんだっけな・・・?確か途中で投げた。

本作も列記とした「タワーディフェンスゲーム」だ。しかも、面白いのは過去の体験から保証済み。EDも見たいし、せっかくなのでやってみることにした。

まぁ、クリアしたから言えるが、途中で投げたのも頷けるな。

【ゲーム概要】

インディーズゲーム「メゾン・ド・魔王」

「メゾン・ド・魔王」はプチデポットにより開発されたインディーズゲームである。元々はXbox360向けに制作されたのだが、あまりの評判の高さに3DSやPS4、スマホなんかにも移植されたらしい。素直にすごい。

ゲームの概要に入る前に本作のストーリーを説明しよう。

魔王がアパートを購入して脱サラをしました。

アパートにモンスターを住まわして家賃を徴収しよう!集めたお金で新しい家具を設置したり、アパートをさらに増築できるよ!

そんな魔王を討伐しようとアパートにやってくる輩もたくさんいるみたい。アパートの住民に手伝ってもらって追い払っちゃえ!

こんな感じ。まぁ、ストーリーというかゲームの流れだな。特にストーリーというのは無いが、大分勇なまに寄せた世界観になっている。ただ、勇なまと違いプレイヤーである魔王がプレイ中に姿を現すことは無く、愛着がわかないのは少し寂しい。勇なまシリーズはその辺の演出もすごかった。本作はおそらく勇なまに影響を受けていると思うのだが、演出面も見習って欲しい所だ。

本作は「勇者と魔王」というゲームの王道設定の切り口を変えて、魔王視点で進められていく世界観となっている。これを考えた人はすごいと思う。RPGのお約束をメタいネタとして弄れるし、パロディーネタも入れやすい。何より王道の作品が輝き続ける限り、邪道の作品は独特の世界観として受け手に興味を持たせることができる。

といっても、"魔王が主人公視点のゲーム"はもう色々とやられている感はある。PS2の「ボクと魔王」では魔王が他のニセ魔王を倒して真の魔王になるという設定で斬新だった。「魔界戦記ディスガイア」も魔王の息子が真の魔王となるために奮闘する話だったな。これらは2000年代初期にリリースされたから、こういう設定は私が知らないだけですでに手垢はつきまくっているだろうな。だからこそ、もう少し設定や世界観は練って欲しかった。うーん、せっかくキャラは魅力的なんだがなぁ・・・

本作は「タワーディフェンスゲーム」と「アパート経営シミュレーション」をミックスさせたゲームである。画面はアパートと看板が映っている固定画面だけで他の街に行ったり、ダンジョンに潜ったりはできない。最初から最後までアパートを見ることになる。本作はRTSでリアルタイムに時間が進んでいく。最終目的は「勇者」の侵略を阻止し、返り討ちにすること。しかし、勇者を倒せるほどのモンスターがホイホイ集まる訳では無いので、アパートを管理しながらモンスターの勧誘・育成を続けていくこととなる。

タワーディフェンスとシミュレーションというと、敷居が高く感じられるが本作はそれらを払拭するための多くの工夫が見られる。どちらもコンパクトにまとまっていて初めて本ジャンルに触れる人でもすぐに理解出来るだろう。私も「最近タワーディフェンスみたいなRTSのゲームやりたいんだけど〜何かオススメとかある?」って聞かれたらこれをチョイスする。ピクミンとかも面白いけど、アクション要素もあるしムズいんだよな。

フィールド画面。この固定画面のみで
ゲームが進行していく。

さて、さっそくアパートを管理していく訳だが、まずは住民を住まわせないと始まらない。といっても方法は至って簡単。アパートの入口には看板が立っていて、そこに新居を探しているモンスターが看板の前を通る。看板を見て、自分が住みたいと思ったらアイコンが出るので、入れるかどうかを決める、こんな感じ。アパートには部屋数が決まっており、無尽蔵に勧誘できる訳では無い。また、入って欲しくない場合はアイコンを無視すると去っていく。

アパートに住まわせることができたら、家賃を設定しよう。家賃は自由に設定できる。しかし、写真を見てみると分かると思うが、住民には満足度のパラメータが設定されており、あまりにも高すぎると満足度が下がっていく。さらに、その状態を続けていくと家賃を滞納するようになり、ひどいと夜逃げをして、二度と戻らなくなってしまう。逆に適正な家賃を設定すると満足度が上がっていく仕組みになっている。満足度が高くなると、戦闘のパラメータが上がり、戦う時に優位に立てるので満足度を意識することは重要だ。

住民のパラメータ画面
家賃や家具をここから設定できる

住民を住まわせて家賃を設定しても当たり前だがこれで終わりではない。今度は、住民が快適に暮らせるように家具やアイテムを買ってあげる必要がある。何で管理人がそれに応じる必要があるのかはよく分からないが。住民は好き勝手に「暑いからエアコン買って!」だの「もっと広いキッチン使いたい!」だのとやかく要求してくる。面倒だなと思うが、応えてあげると満足度が上がり、家賃を少し上げても満足度が下がらなくなる。長いスパンで考えるとプラスなのかな?分からん。

モンスターの種類も複数あって、これは育成ゲームとしては嬉しい限りだ。それぞれに性能も違っている。例えば、エレメント族のミズニンは魔法使い型モンスターだ。魔法使いらしく魔法防御力は高いが、物理防御力は紙なので前衛は任せられない。他にも雨が降っている場合にはさらにパラメータが上昇するが、暑さに弱いので、冷房器具を設置しなければまともに生活することもできない。こんな感じでモンスターごとに細かい設定がされている。とはいえ、ポケモンみたいに種族値とかは決められていないので、時間さえかければどんなモンスターでも最強に仕立て上げることが出来るぞ。

モンスターを揃えたらいざ戦闘へ。といってもいきなり勇者と戦うのは無謀だ。よって、"自称勇者''"勝手にイライラしている村人"やらと戦ってお金を貯めて、アパートの規模を大きくしていく。経験値という概念は無い。倒してもお金を貰えるだけだ。一応、何もしていなくても野良の村人が襲ってくることもあるが、大してお金も落とさないから非効率。どうするのかというと、看板を調べてみる。すると、クエストが受けることが出来るので、それを達成することで報酬のお金を貰うことが出来る。・・・まぁ、そういうものなのだが、魔王がクエストを受けるというのも変な話だ。突っ込んでもしょうがないのは分かっているんだけどさ。クエストの内容も襲いに来る理由もよく分からない。「魔王を倒して真の勇者になる」とか「ツアーの一貫として魔王を襲う」とかそんなの。結局は己の欲望で動いてるのかよ。正義の為に戦うなんて奴はよほどいないってことね。なんだかなぁ・・・

戦闘もかなりシンプルなものだ。移動や攻撃は自動で行ってくれてプレイヤーが関与できるのは出陣と退却のみ。何回かやればすぐにコツはつかめると思う。出陣の方法は部屋に住民がいれば、部屋を調べると中にいる住民が戦ってくれる。逆に、仕事や遊びで不在の時には戦えない。だって、いないからね。モンスターはそれぞれ攻撃方法が異なっており、素手で殴る近距離型や魔法攻撃の遠距離型といった感じ。これは相手もそう。戦闘では、2次元の平面の場所で行われるためモンスターが前にいる状態では後ろのモンスターは前に行くことが出来ない。うーん、説明が難しい。

戦闘が行われている様子(画面下)

戦闘画面はこんな感じ。近距離型のモンスターを前衛に出して壁にして後衛に遠距離型のモンスターを出して死なないように立ち回るのが定石だと思う。まぁ、慣れよ、慣れ。

戦闘に勝つのが目的だが、もちろん負けることもある。ここでいう負けは何を意味するのかと言うと、住民の死である。そう、住民のHPが0になると死ぬ。蘇ったりはしない。ウィザードリィのロストよろしくエグいシステムだ。始めたばかりなら別になんてことないだろうが、本作はかなり強化しても死ぬ時は死ぬ。頑張って育てたのが死んだ時は物凄くガッカリする。私はした。このようなアパートの経営と戦闘を繰り返しながらアパートの規模を大きくするのがゲームの大まかな流れである。

そして、肝心の育成だがこれも面白いシステムである。一部の家具を配置することでパラメータは上昇するが、正直ショボイ。どうするのかというと、恋人を作り子供を作ることでパラメータを引き継ぐことができるのだ。この交配を繰り返すことで、親の長所を引き継いでさらに強力なモンスターにすることができる。しかも、「愛☆バルーン」を使えばどんなブ男・喪女でも一瞬で恋人が作れる。さらにさらに、「子宝祈願大福」を使えばすぐに子供が出来ちまうんだ!ここはエロ同人の世界か!?キモオタの妄想なのか!?・・・はぁ、虚しい。生まれてすぐは子供なので、戦うことはできない。一定以上の時間が経つと成長して大人になる。両親がいなくなってもちゃんと育つぞ。まさに生きる、死ぬ、託すだな。俺屍積んでるなぁ。めんどいんだよ。

一つの部屋には、両親と子供で1世帯として3人まで入れる。「ひっこし」という機能もあるが、これは人単位ではなく世帯単位として動かすことしかできない。だから、子供が成長してさらに子供を交配させようとしても両親が邪魔だから交配ができない、ってことだな。だが、完全にできない訳では無い。両親が邪魔なんだろ?じゃあ、追い出せばいいんだよ。そう、「追い出す」機能を使えば、家賃を払ってくれない、良い関係が築けないといったウザったい奴を問答無用で追い出すことができる。これを使って両親を追い出せば、さらに交配を繰り返すことができるってわけだな。まぁ、やっていけば慣れるよ。何より強くなっていくモンスターを見る方が楽しいし。

お金を増やしてクエストもある程度こなすとアパートの増築ができるようになる。そうすると、部屋の数も増えてお金の徴収も捗っていく。じゃんじゃん儲けよう。

はぁ、長いな。本作はシンプルでコンパクトにまとまっているのに細かい点も入れつつ説明したらめちゃくちゃ長くなっちゃった。はい、概要は終わり〜

【プレイしてみての感想】

始めた時、なぜこれを途中で投げ出したのか分からなかった。それぐらい面白かったんだ。昼に購入して気づいたら夜になってる。本当にやめ時が分からなかった。ただモンスターが育っていくだけでも楽しかったし、クエストをこなして新たな種族のモンスターを勧誘するのもワクワクした。

だが、アパートを2階から3階までに増築した時に急に来てしまった。あれ、ずっと同じことやってる・・・序盤は資金繰りが厳しく、住民も少し気を抜くと死んでしまう。住民に恋人を作るアイテムや交配させるアイテムも値段が高いから誰に使うか悩んだりもした。住民を満足度を下げないためにどうすればいいのかを必死で考え、たかがザコ戦でも勝てば嬉しかった。しかし、中盤になっていくと住民も順調に育ち、ちょっとやそっとじゃ負けない。一気に単調な作業と化し、ひたすら交配を繰り返すだけのゲームになってしまった。なんかなぁ、結構奥が深いゲームだと思ったら意外と浅かった、って感じ〜

ゲームバランスは正直言って良くないと思う。基本的に戦闘よりも育成の方が楽しいゲームなので、自ずと育成に力を入れるのだが、波に乗ると何もしなくてもお金は入ってくるようになる。そうなると、リスクの高い戦闘をこなす必要はなく、家具を集め、住民の機嫌を取り、交配を促すのをひたすら繰り返すだけで住民はみるみる強くなる。戦闘をする理由が無いんだよね。そして、段々と育成にも飽きてくる訳だが、戦闘をするとすぐに倒せちゃう。全くもって危機感が無い。クエストの数も少ないのでやることが急に無くなってしまうのだ。

経営の方もバランスはかなり雑である。最初にアパートを経営していた時は住民が少なく、全然お金が集まらなかったのだが、これは住民が少ないからだと思っていた。しかし、アパートを増築しても住民の2割ぐらいはずっと家賃を滞納しているからそんなにお金は貰えなかった。その癖、高い家具はずっと欲しがるのでそれを買ってあげて家賃を上げると「高すぎるよ〜」とか抜かしやがる。何様だ、畜生。この家賃の滞納のシステムは本当にいらないと思う。家具はすぐに買ってあげてるし、戦闘が終わった後もすぐに労るようにしている。でも、お金は貰えない。無理矢理でも貰いたいがそんなシステムは無いのでできない。ただストレスが溜まる仕様だったな。

キャラクターはすごく愛着が湧くようなキャラばかりだった。すごいなぁと思う。それぞれに生活サイクルがあり、性格があるので同じ種族のキャラでも全然違う生活を送っている。キャラに対してここまで感情移入できたのは久しぶりだ。私が初めてすぐの頃、「ケンたろう」という住民がいた。コイツは最初に入れた4人の中の1人だったのだが、厳しい序盤を何とか生き抜いた奴だった。私は愛着が湧き、そいつだけは子供が生まれても追い出さずにずっと育てていた。ある時、そいつが家賃を滞納し始めたんだ。私はすぐに家賃を下げてあげた。でもケンたろうは家賃をずっと滞納していた。そしたらある日の夜、一家全員が部屋から出てきたんだ。そしたら何したと思う?

そいつ夜逃げしやがったんだよぉぉおお!!!!!!!!!!!!!!

はぁ!!!!??????

クソがぁぁぁぁあ!!!!!!!!

もうね、悲しくなったよ。こんなシステム入れるな馬鹿野郎。久々にゲームのキャラにキレたよ。というか悲しいね、与えたら戻ってくるわけじゃないんだな。大体のもんはそうか。信じた者が馬鹿だもんな。あはははは・・・

こんな感じでストーリーは無いが、キャラクターに対してまるで本当に生活している住民のように扱うことが出来て面白かった。愛着を持つこともできた。このゲームさ、たかがデータなんだよ?テキストとイラストしかないんだよ?でもね、何か見えてくるのよ、そいつが生活している様子が。ずっと彼女ができない力士とか出会い系のサクラを一日の半分費やしてやってる雪女とかさ。面白いよなぁ。重厚なストーリーとかいらないんよマジで。

音楽は曲数が少ないが一つめっちゃ好みの曲を見つけた。ザコ戦の戦闘曲なんだが、すごく楽しい曲だ。これだけでも聞く価値はあると思う。好き。

やり込み要素は無い。これは正直ガッカリ。クリア後の追加クエストとかあれば良かったのに。できなくは無かっただろう?なぜやらなかった?祈願のエンディングも期待はずれだった。ファミコンのエンディングかよ。もっとプレイヤーを讃えてくれてもいいんだぜ?

エンディング画面
今まで戦ってくれた住民が流れるだけ
ショボ(笑)

他で気になる点は住民が交配していると「愛を確かめあってます♡」みたいに出るんだが、その時にHPがガンガン減っていくんだよね。確かにSEXはスポーツっていうけどさぁ、何もそこまで再現しなくていいだろう・・・強いやつに限って交配したがるので、面倒だった。

こんな感じかな。正直まだ話せるが、すごく長くなってしまったのでこの辺で。

【まとめ】


本作をクリアした後に公式のホームページを見たら、このゲームは開発者のアパート管理の体験があって生まれたらしい。その人は実際に夜逃げにあったり、訳分からん住民の相手にしたりとやっぱりゲーム同様大変だったのが分かる。でも、こんだけ面白いゲーム作れたんだからまぁOK?・・・なんて部外者だからね私は。

本作は確かに面白いし、万人に勧められる程、完成度が高いゲームだと思う。しかし、いざやってみるとあまりにもコンパクトにまとまりすぎてるせいでゲームをプレイする時の成熟と衰退の流れが早いように感じた。そんなすごいゲームあまり無いから誇っていいと思うけどね。

過去の自分がこれを投げた理由も分かった。もう見えていたのだ。クリアした画面が。強化しまくったモンスター達を引き連れてあとはクエストを受けるボタンを押すだけ。惜しいなぁ・・・システムはすごいのに。10時間ぐらいでクリアして半分は本当に最高の時間だった。残り半分は一気にやる気が失せた。でも面白かったな。

ケンたろう!!早く戻ってきなさい!!


(定期的にセールをやっているのでセール時に買うのが吉)


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