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とりとめなき58

先週末に買った『魯山人陶説』が面白い。大学時代は市営地下鉄北大路が最寄りであったから、足立美術館ではじめてその名を知ったときには勝手に親近感を覚えたものである。一杯呑んでから、妻を迎えに駅へと向かう。半袖短パン、寝巻きである。じめっとした空気ではあるが、心地の好い気温、夜風である。ふと思い出したのは三、四年前に重ねた夜々。御多分に洩れず、この私も学生時代はおセンチ気取りでやらせてもろうておりましてですね。部屋にひとりの晩は缶ビイル片手に映画を観て、途中でコンビニへ買い足しに出掛けて、煙草をふかして、公園だのフラフラして家へ戻る。最後まで観終えた頃には日付が変わっているものだから、それからもう一本観る時間はない、そう考えて深夜のTVショウを垂れ流す。知らぬ間に時間は流れ、朝方になっていることも珍しくない。そんなときは決まって、「もう寝るぞ」の決意に託けて、グビグビ流し込んで床へ入るのであった。なんとしても夜を埋めなくてはならなかったのだ。寸分の隙間も許されぬ、埋めよ、と。畢竟、がらんどうの六畳一間にポツリ空いた穴、ポツポツと夜の雫は落ち──


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眠れない夜に

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