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水のいろ、水のかたち

先週のこと、金沢は国立工芸館にて〈水のいろ、水のかたち展〉を観てきたのですが、あまりに好みの展示でして... 会期も九月二十四日迄ということで、その間に機会があれば是非、と思いまして... 今日は背中を押すつもりでですね、幾つか心に残った品々を紹介させていただきたい...

国立工芸館 外観

そう、暑い夏に"水"を感ずること、それ即ち納涼でもありましょう... よかったら見ていってください...


① 水のいろ、水のかたち

色なき、形なき"水"の表現...

平井智〈波〉

水の色、といえばやはり連想するのは青。形は目に見える畝り、いわゆる波。力強くも滑らかに、淡い青の色彩と控え目な金彩が優雅さを演出。

生野祥雲斎〈竹華器 怒濤〉

決まった色が無いのだから、表現する素材も自由度は高い。靱やかに水を象る。

増田三男〈金彩水指 瀬〉

こちらは枯山水にも似た表現。一概に煌びやかとは言えない、この渋みが宜しい。

木村芳郎〈碧釉漣文器〉

深い青のグラデーションは目を見張る美しさ。光を受けて煌めく様は、さながら大海の光景。

大澤光民〈鋳ぐるみ鋳銅花器 火と水と〉

鋭い光の放つ冷たさ。この温度感も水を表す要素のひとつと言えよう。それにしても重厚な佇まいだ...

芹沢銈介〈紬地型絵染のれん 滝〉

切り詰めた形の表現は、至ってシンプルな線。周囲とのコントラストで際立つその存在感は、ひと目で滝と分かるほど。形式の圧縮は感性の饒舌...

森口華弘〈駒織縮緬地友禅訪問着 早流〉

川や水路が身近にある環境で育ったからであろうか、"流れる"水観というのが私にも備わっているようで。水の色とは対照的にも思える"赤"の曲線が、また違った風合いを齎す。

大村俊二〈流(Ryu)IX〉

目に映る水、と表現するのが正しいのだろうか。ともかくその透明感と定型のなさが分かり易く表現されている。相当に拘ったのだろうか、それとも...


② 水のうつわ

形のない水を留めるもの...

淡島雅吉〈しづくグラスと氷入れ〉

心地の好い丸みと透過具合。水に形を与える、美しい形を。

濱田庄司〈塩釉鉄砂抜絵注瓶〉

こちらは溌剌とした、言うなれば温かい安心感。味わい深い民藝の香り。

高橋朋子〈蒼掌水指 Aldebaran〉

格調高き色彩の幾何学模様と、蓋部に光る金の釣り合う様に言葉を失う。口から漏れるのは溜息のみ。水とともに時をも留めるような。

ルネ・ラリック〈花瓶「つむじ風」〉

エネルギッシュな風が表面に圧縮されたように静的な、それでいて今にも飛び出しそうにも見える動的な側面も兼ねる形状。いやはや、お見事...


③ 水とともに

そこにはない水を見る....

金重晃介〈備前花器 海から〉

パンタ・レイ、万物は流転する。我々は海から、水から。いま、手に持つ"それ"は何処から。湿ったように映る質感からは、自ずと水が連想される。

音丸耕堂〈彫漆瑞兆茶入〉

水とは遠いように思える色彩に、水辺の景色が浮かぶのはなんとも不思議である。文様の揺らぎが面白い。

海野清〈諸手船〉

この作品については是非とも実物を見てもらいたい。そんなことをわざわざ言いたくなるほどに作り込みが驚異的で...

金城次郎〈魚文抱瓶〉

魚で水を連想しない人は、まあ少ないというか、殆ど居ないでしょう。滲んだように漏れ出す釉薬は鮮やかに。

バーナード・リーチ〈ガレナ釉魚文大皿〉

無骨なお魚を囲むように踊るスリップウェア。色彩も相まってまるで宴のよう。団欒の温もりを感ずる。牧歌的だ...

番浦省吾〈海どり〉

幾重にも連なる形の見えない線。質感は色毎に異なるようにも。最後には深い青に魅入っていよう...

山田貢〈麻地友禅着物 朝凪〉

網干が巡らされたのは穏やかな海。潮風に吹かれ、海の暮らしが始まる。染の細やかさに息を呑む。

おわりに

上に挙げた作品の他にも、素晴らしく、そして多様な品々がいくつも展示されておりますので、冒頭でも申し上げましたがタイミングが合えば是非。

外観 その二

工芸館の他にも、周辺には多くの文化施設が並んでおりますので、心ゆくまで浸ってみてください...

きれいな水

最後までお読みいただきありがとうございました。

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