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神様がいない

苔テラリウムなるものを作りました。丸い金魚鉢のようなガラスに苔や石、色付きのビーズを配置して作る飾り物。どこか演技臭い話し方の講師から、ガラスは地球なのだと教えてもらいました。ガラス鉢の中には土台となる土と乾燥剤のみ。この上にそれぞれの地球を作る苔テラリウム。

さぁどんなものにしようかと考えたときに、天の岩戸が脳裏にひらめきました。神さまがひきこもってしまう石の洞窟と世界と隔てる分厚い岩の戸。戸を立ててしまうと圧迫感があるので、石積みの洞窟だけをこしらえて、中に花を1輪挿そうと決めました。土台を整え、いくつかの石を組み立てます。

上手く石を組み立てることは至難の業で、洞窟というよりはただの石の壁みたいになってしまいましたが、まぁ、良しとします。

ところが、いざ花を挿してみるとどうも嘘くさいのです。樹脂でできた白い花はいかにも作り物で、メインを張れるものではないということがはっきりとわかりました。

ひとまずメインは置いておいて、他の部分を埋めていきます。苔テラリウムという名前ですから、主役は苔です。講師には何度も苔の追加を薦められましたが、わたしの作る地球の中心は苔ではありません。申し訳程度の苔と、池を模した青いビーズを配置します。


それらが終わってもメインをどうするかが決まりません。講師には苔を乗せた大きな石や、まっくろくろすけに似た飾りを薦められましたが断りました。周りを見渡すと、大きな川をつくっていたり、花を合わせたりと華やかなものが多く、わたしの石と砂だらけの地球とは大違いです。それでも、何かを追加する気にはなれません。


天の岩戸の先には神さまがいるものです。
神さまは人の形をしているとは限りませんし、自分の宗教観に照らし合わせればそれこそアニミズムに乗っ取って苔でもよかったはずです。

それでも納得できず、結局なにもいれないままテラリウム体験は終了しました。


帰宅後、崩れかけた石を直し、ついでに最後のほうに講師が追加した岩と苔は除きます。参加者の中で一番地味だったわたしの地球。


物理的な神さまがいないので、なにもない部分を見ては、都度その瞬間の己がイメージするものを投影します。

祈る女性であったり、石像、花、あるいは闇。そして空間そのもの。


神さまがいないわたしの地球




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