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プレミアリーグ第36節 ブライトンVS.マンチェスター・ユナイテッド〜ラングニックの過ちといびつなチーム構造〜

ども久しぶりの投稿。ユナイテッドサポの私としてはかなり悲しい試合でしたが、ブライトンは素晴らしいプラン、振る舞いを見せ、いちサッカーファンとしては面白い試合だったので、この試合について書きながら、ユナイテッドの現状の問題について考えて、来季の展望につなげたいと思います。テンハーグの就任が決まるチームにどのような課題があるのか、その辺を述べていきます。

1⃣チェルシー戦からの改善がないチームとラングニック

 攻撃時には3-2-5のようなかたちとなって相手に対して配置的優位を強いることを1つのストロングポイントとするチェルシー。1週間前にチェルシーと対戦した際、解説の林さんも再三にわたって言及していましたが、前半は相手の5トップに対して4バックと数的不利、さらにボールにプレッシャーがかからない状態が続き、後方からワイドの選手(特に右サイドのR.ジェームス)に面白いようにボールが通り、3,4失点してもおかしくない状態が続きました。後半から左WGにエランガを配置し、守備時にはSBのように振舞わせて5バック化することで傷口をある程度ふさぎ、79分のジョーンズ、マタの投入で5-3-2にフォーメーションを変更。1-1で何とか試合を終えたという試合でした。

①マタとロナウドという運動量が高くない2トップ&5トップに対する数的不利

直近の試合ではチェルシーと同様、3-4-3を主に採用しているブライトン。その相手にユナイテッドがどのように振舞うかが、この試合の注目ポイントでもありましたが、ユナイテッドはその試合の反省が生きていないのか、試合開始から同じような問題が露呈する前半となりました。

②ブライトンのオートマチックな攻撃とユナイテッドの後手後手の対応

確かに、相手のWBがボールを持った際にCB-SB間に走り出す相手シャドーに対してダブルボランチがついていくということなど、修正されているように見える点もいくつかありましたが、結局はブライトンの選手の動き出しにユナイテッドの守備ブロックはずるずると押し込まれる結果となり、ブライトンの2次、3次攻撃をボディーブローのようにユナイテッド守備陣を蝕んでいきました。

2⃣ブライトンのプレッシングにも苦しめられたユナイテッド

③ブライトンのマンツーマン気味のプレッシング

 ユナイテッドは前節、マタをトップ下に起用してブルーノを左WGに配置することで、ビルドアップや保持攻撃の質を上げたことで快勝しました。その成功体験を基に今節も同じメンバー、配置で試合に入ったわけですが、ブライトンはそれに対し、しっかりと準備していました。
 「蹴球ジャパン」さんでの自分のブライトンの記事を見ていただいた方は分かると思いますが、アーセナルを苦しめたブライトンの守備の特徴が人を基準とした「マンツーマン気味」のプレッシングです。
 この試合でも、上の図のようにユナイテッドのダブルボランチに対しては両シャドー、中央に入ってくるマタとブルーノに対してはダブルボランチで対応することで、ユナイテッドのいい意味で再現性がなく、予測できない選手の動き出しに対応できていました。また、ロナウド、マタ、ブルーノはその時々でサイドに張ったり、ハーフスペースに顔を出す役割を変えるのが特徴ですが、それに対してもフェルトマン、ダンクと両ダブルボランチの4枚で受け渡しながら対応することで、「相手の3枚の攻撃陣を見ながら一人はカバーリング」というように、リスク管理をしながらユナイテッドの攻撃を封じることに成功していました。
 ここまでブライトン目線でそのプレッシングについて述べてきましたが、再現性のあるビルドアップがなく、ビルドアップにGKを組み込むことができていないユナイテッドとしては、両CBとブライトンの1トップとの「2対1」GKを含めれば「3対1」の数的優位を上手くいかせなかったことが、ブライトンのプレッシングに苦しめられた要因であり、この点は来季に向けた課題といえるでしょう。

3⃣押し込まれ続けたユナイテッド。必然の4失点。

 今まで試合の現象を述べてきましたが、それに対応した形で今回のユナイテッドの4失点を振り返りたいと思います。

 15分この試合最初のブライトンの得点。絶賛ブレイク中のエクアドル代表カイセドのマクトミネイとリンデレフの2人の股を抜く技ありゴールが決まります。確かに、クロスのこぼれ球に対する反応だとか、ブロックの仕方のような選手個人のメンタル面の問題もあるのかもしれませんが、私としてはそういったことはあまり言及したくないというモットーがあるので、そこには触れません。
 チーム(ユナイテッド)の視点でこの失点を見ると、自陣ゴール付近からのリスタートでのビルドアップがブライトンの2⃣で記したようなプレッシングによって回収され、トランジションで回収されたボールが大外のトロサールへ渡りククレジャのオーバーラップでできた瞬間的な「時間」によって上げられたクロスのはじき返されたあとのこぼれ球が最終的にカイセドに渡ったことによる失点でした。ここでの問題はやはり、ユナイテッドのビルドアップの機能不全です。ビルドアップの練度が低いことはもちろん、長いボールを使うのであれば、もう少し全体を押し上げてこぼれ球を拾えるようにするなど、チームとしての割り切りが必要だったと思います。
 そして後半になって、48分にブライトンの2得点目が決まります。ロナウドへのパスがカットされ、少し曖昧にユナイテッドのプレッシングがなされます。その曖昧なプレッシングに対して、フェルトマン→マーチ→グロスと②の図のような流れで簡単にプレッシングを剥がされ、前進されてしまい、その前進で得たスローインから最終的には大外のトロサールにボールが渡り、その落としをククレジャがニアハイに叩きこむというかたちでした。
 ここは1失点目とは違い、1⃣で言及したユナイテッドのプレッシング、守備での問題が露呈したことによる失点。ラングニックはハーフタイムで1⃣の問題に対して、マティッチ⇔フレッジで中盤のスペースをできるだけ消し、エランガ⇔カバーニでマタを右WGに配置して前線での圧力を大きくするという2つのことで解消しようとしましたが、(これが裏目に出たわけではありませんが、)4バックのままであったこと、マタをピッチ残したことによって、この問題が大きく改善される修正とはなりませんでした。
 実際スローインでしぼっていたとはいえ、この試合のククレジャの基本的なマーカーは右WGのマタ(前半はエランガ)で、仮にマタではなくエランガをピッチに残していたらこの失点は防げていたかもしれません。マタをピッチに残したことによる恩恵もあるので、一概に悪いとは言えないし初戦結果論なんですけどね。
 ただ、3失点目はそれが如実に表れるかたちで、GKサンチェスの素晴らしいフィードから大外のククレジャ&トロサールVS.ダロトの2対1から最後はグロスというかたちでした。4失点目も大外のレーンに立ち位置をとったククレジャからユナイテッド選手の間を上手く突破し、(ブルーノが右サイドに絞っていたことによって)フレッジの脇に空いた広大なスペースでボールと「時間」をもったグロスからウェルベックへキーパスが通り、最後はトロサール。ラングニックの武器である4-2-2-2のプレッシングの強度が足らず、完璧に崩されたかたちの失点でした。

4⃣遅すぎた修正。
ラングニックの答えは皮肉な結果に

 スコアが4-0になった後は、ブライトンもブロックを敷き、意図的にペースを落としたことで、ユナイテッドが押し込む形となり、チャンスも作りましたが、ゴールは割れず。どちらが「強豪」と呼ばれているのかわからない試合の流れでした。
 個人的には今のユナイテッドがボールを保持する3バックのチーム相手に対応するためには、5バックを敷く、もしくは(マドリ―のロドリゴが良く行う)4-1-4-1で片方のWGの列を下げるかたちしかないと思っています。実際、チェルシー戦、ブレントフォード戦と3バックの相手には最終的に5バックで試合を終えています。3バックのチームに対して、4バックで対応するにはリヴァプールやシティのように相手陣内深いエリアから激しいプレッシングを敢行する必要がありますが、ユナイテッドはそれをしません。
 というか、ロナウドがいることによってそれができないというのが現実です。ロナウドの得点力を活かして、3バックの相手やWGが高い位置を取って5トップ気味になるチームに対しては、あらかじめ5レーンをしっかり埋めて自陣にブロックを敷き、相手の攻撃に対応する必要があるわけです。
 この試合でも4-0となった70分にマグワイアが投入され、5-3-2にフォーメンション変更。しかし、遅すぎました。ジリ貧状態の守備を改善するために後半あたまから5バックにするのが妥当で、私自身はマタ⇔マグワイア、エランガ⇔カバーニにしてくれないかなと、ハーフタイム時点でちょっと考えていました。
 そこはさておき、結果としてラングニックがたどり着いた最適解5-3-2にも注目したいのですが、これはスールシャールがトッテナム戦でゴキブリ力を見せつけた際に編み出した「ロナウド出場時の最適解」と同じです。ここでいいたいのは、「ラングニックがスールシャール以下」だとか、「無能」だとかではなく、「ロナウドが出場する際の(フォーメンションを含む戦い方の)最適解が同じ答えに行きついてしまっている」ということです。
 ロナウドは今季もリーグ戦を20ゴールする勢いで、直近の試合やCLグループリーグでの試合のように、彼に助けられるシーンが多いのも事実です。しかし、彼は文字通り選手の域を超えた「劇薬」で、チームと監督の「彼と心中するという」覚悟が問われるわけです。ユナイテッドは今季それに失敗して、思うように結果が残せなかったといえます。
 来季から指揮するテンハーグは「ロナウドと心中する」という覚悟を見せるのか、彼を突き放して新しいチームをつくるのか、いずれにせよ中途半端な姿勢を見せれば、彼も同じドツボにはまるでしょう。(テンハーグの場合は「ボール保持」の時間を増やして、そもそもの守備機会を減らすという裏技もあると思うけど。)
 来季はチームのビルドアップの改善、そしてチームとしてのロナウドとの向き合い方に注目です。では。


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