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川崎ゆきお超短編小説 コレクション 2

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2014年11月の記事一覧

街頭演説



「やってみると、動きが見えてきますよ」
「ほう」
「やる前は大したことはないとか、これをやって、何になるのかとか、やってもそれほどの見返りはないとか、そういうことで、スタートが切れない人が多いです」
「あなた、ビジネス書の人ですか」
「啓蒙しません」
「ほ

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巫女のいる神社



 スケジュールが何もないというのは自由でいいのだが、これが曲者で、休憩でもしておればいいのに、何かやりたくなる。何もない時間が怖いのかもしれないが、当然これは内側からの恐怖だ。ただ、怪談やホラーではないので、怖いと言うより不安なのだろう。
 ポッカリと空いた時間、佐山は好きなことをして過ごせばいいのだが、特に趣味はない。行きたいところはあるが、仕事で方々回っているの

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寺の話



 年寄りが古い話をするのは、その話は昔とそれほど変わっていないためだ。その話とはその老人達さえ生まれていない頃の話。朝からそんな話を喫茶店でやっている。町中にできた大きな商業施設で、飲食店も多く、喫茶店も多い。開店と同時に年寄り達は好みの店に入る。
 値段的には安い方で、しかも広い喫茶店に、最近二人の年寄りが来て盛り上がっている。寺の話だ。観光地の寺でもなく、当然有

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