マガジンのカバー画像

川崎ゆきお超短編小説 コレクション 2

82
運営しているクリエイター

2015年3月の記事一覧

廊下で見た



 夜中に起きるが、時間が分からない。里中はよく夜中に目を覚ます。二度か三度で、四度と言うことは滅多にない。朝まで一気のときもあるが、殆どない。大概は二度ほどだ。寝入ってから一時間から三時間の間に一度目が覚める。早いときで一時間後、三十分後ということはない。これは別の事情、例えば物音がしたとか、そういう外からの影響が強い場合に限られる。時刻的には一時から二時が多い。一時半が一番多いかもしれない。

もっとみる

一軒茶屋



 三軒茶屋が二軒茶屋になり一軒茶屋になった。山の頂にある峠の茶屋だが、山越えの人が少なくなったため、一軒になった。その後、山登りを楽しみ為の山茶屋となっていた。昔はここが国と国との境界線で、結構往来があった。といっても隣の国へ出るわけではなく、市が立っていたのだ。山頂付近には国境があるのだが、しっかりとした境界線はなく、坂のこちらとあちら程度の曖昧なものだ。また関所などはなかった。ここは街道と

もっとみる

欠けた札所



 巡礼とか、札所巡りとかがある。三十三カ所巡りなどだ。これはお寺が札所になっているが、何もない寺もある。開放されていないような寺だ。しかし、それでも長細い石碑が立っており、何々巡礼何番札所などと刻まれている。そういった巡礼は四国のお遍路さんが有名だが、別の地方には、別のオリジナルな巡礼コースがある。それらは観光地ではないので、有名ではない。四国の八十八箇所巡りは有名だ。

 それをもっと規模を

もっとみる

百物語



 怪しいもの、不思議なもの、神秘的なものの極限はどこにあるのだろうか。大概のものには飽き足らなくなったホラーマニアは、それで退屈していた。これは人が作った想像上での話では、もう限界があり、それ以上の奥がないと知ったからだ。怖さのレベルが低いというわけではなく、また怖くなくてもいいのだ。神秘の奥底、そこは底なしの穴のように深さがあるような。

 幽霊退治なら、幽霊を退治すればそれで終わってしまう

もっとみる

冬の雨にも負けず



 冬の雨が降り続いている。さほど寒くないのでいいのだが、鬱陶しい。足を止められる。作田は足止めの雨にも屈することなく、いつもの散歩道を歩いている。しなくてもいいことだが、これが日課だ。日課をこなすことが日課で、日課をしているのだ。もうそうなると散歩が目的ではなくなっている。最初の頃は気晴らしで散歩に出た。歩く快さ、外の空気を吸い、リフレッシュさせる。当然沿道を眺めるのも楽しい。だが、雨で傘を差

もっとみる

謎の三本松



 少し別の体験をすると刺激になる。初めての体験なら、それをクリアしたことだけでもすっきりするかもしれない。その体験の中身にもよるが。

 別の体験といってもいつか何処かでやったような体験が多い。これは時期にもよる。もう忘れていたような体験なら、思い出しながら体験することになり、徐々に記憶が蘇るのも快感だが、いやな体験の場合、その限りではない。何度体験しても、いやなものはいやだろう。しかし、二度

もっとみる