マガジンのカバー画像

川崎ゆきお超短編小説 コレクション 2

82
運営しているクリエイター

2015年5月の記事一覧

呪詛



 人の怨みは怖いが、怨み殺されることはない。また怨みの念で何かが起こることもない。何故なら、かなり怨まれていた人が長生きし、天寿を全うすることも多い。また、最近、方々から恨みを買っている人も、それで健康を害したり、高転びに転ぶわけでもない。ただ、死んで恨みを晴らすという死霊も、恨みをのんで死んだ人が膨大でも、その死霊達は何をしていたのかと思うほど、効果はない。

 その意味で、死にはしないが、

もっとみる

幽霊を待つ病院



 未だに木造の病院。幽霊が出ると噂されているが、入院患者で亡くなられる人も多いのだから、それを言い出すときりがない。その噂を払拭するためには建て替える必要がある。噂の根源はこの古い建物にあり、その見かけが薄気味悪いからだ。いかにも幽霊が出そうな複雑な模様をした板壁や、気持ちの悪い角度に曲がった古木などがその演出に加わっている。確かに最新のシンプルな病院なら幽霊は出そうにないが、逆に、出そうにな

もっとみる

死後の世界



 日本には神々が多いが、仏の数も多い。有名どころの神々はそれほど多くはないが、名のある仏の数は半端な数ではない。それほど多い。これは名のある神々より多いかもしれない。何故なら、人は死ねば仏になるという慣わしがある。刑事ドラマでも被害者をホトケと言っている。仏さんの身元は割れたのかね。などだ。そのため、膨大な数の死者が、仏として存在することになる。当然名がある。しかし、そこは曖昧で、戒名が仏像に

もっとみる

危機感が人を動かす



 危機感があるとき、人は動きやすい。説得力があるためだ。それで目的ができ、邁進できる。または危機からの回避のため、引きに引くかもしれない。逃げることもしっかりとした目的であり、これも説得力がある。行動に迷いがなかったりする。その判断に迷ったとしても、早く判断を付けて危険地帯から逃げるだろう。

 平和なときはこれといった目的がない。あったとしても、別にやらなくてもいいことだったりする。ここから

もっとみる