マガジンのカバー画像

川崎ゆきお超短編小説 コレクション 2

82
運営しているクリエイター

2015年7月の記事一覧

防空壕



「壊れていない戦車ですか」

 いきなり妙な話だ。その前にダンジョンの話をやっており、その繋がりで、戦車が話題になった。ダンジョンとはゲームなどによく出てくる地下迷路のようなものだ。

「本当にあるのですか。戦車が。まだ走りますか」

「壊れていなかったと思うので、整備すれば動いたかも。当時はタンクと呼んでましたがね」

 ダンジョンと戦車、その繋がりは防空壕だった。というより、何かの軍事施設

もっとみる

アンコの出た夜



 リリーン

「はい川崎です」

「あたし」

「ああ元気?」

「それがえらいこっちゃねん。アンコが出てもうてん」

 深夜の電話友達アキちゃんからである。

「どうしたん」

「気持ちがええねん。川崎さんにも勧めるわ」

「どないするのん?」

「眠たい時にな、寝んと我慢するねん。絶対に寝たらあかんねん。眠りに入る一歩手前で頑張るねん。そしたらアンコが出てもうて気持ちがええから」

 アキ

もっとみる

雨がふっていた



 岩田公二。いわたこうじ。イワタコウジ……。誰だろう。待てよ……。思い出した。確か……自分の名だ。

 江戸屋の最中を食べると、眠くなった。ホームゴタツに首まで入って、そして、眠ってしまったのかな。郵便屋がもうすぐやってくる。ブレーキの音で分かるんだ。カタンという音がすると確実に何かが入っているんだ。ゴー。これは飛行機だ。近所に飛行場があって、うるさいんだ。薄目を開け、窓から外を見るとB29が

もっとみる