マガジンのカバー画像

川崎ゆきお超短編小説 コレクション 2

82
運営しているクリエイター

2015年8月の記事一覧

台風一過



 台風一過で秋の空になった。と毎年今村は言っている。これを言わないと一年が越せないように。しかし台風は何度か来る。台風一過なのに、そのあとも雨、青空見えず、のときもあるだろう。だから、全ての台風には当てはまらないが、一度は必ず台風一過の青い空とかが言える。

 今年はそれを夏の終わりがけに済ませた。これで年が越せる。あと何度か台風が来るので予備もある。年に二回、三回と言えるかもしれない。ただ、

もっとみる

風行



 この話はフィクションで、あり得ない話だが、あろうと思えば有り得る話でもある。そして実際にあったのかもしれない。今もあるかもしれない。非常に単純な話なので。

 台風の日などによく現れる団体がいる。一人ではなく複数の人達だ。これは着ているものが少し変わっているためだろう。一人では目立ちすぎる。団体だとさらに目立つのだが、群れを成している方がいいのだろう。そういうものだという意味ができたような。

もっとみる

雨乞い



 晴れているのだが、遠くに黒い雲が出ている。かなり面積が広い、その下はモヤ。きっと雨が降っているのだろう。俄雨、太陽は夏の日差しを伸している。当然こちら側は真っ青な空で、雲も白い。

「今、雨乞いをすれば効きますが、もう遅いですなあ」

 同じように空を見ていた老人が田辺に話しかける。どちらも立ち止まるほど暇なのか。例えば巨大な入道雲が湧いていても、立ち止まってまでは見ないだろう。これが見たこ

もっとみる

言葉の使い方



 人は何処かと繋がっているのか分からない。本人は分かっているつもりでも、気付かないことがある。これは人と人との結び付き、繋がり、えにし、絆などという場合もあるが、悪いところと繋がっていることもある。繋がっていれば何でもいいというわけではない。人の場合だけではなく、ものや物事もそうだ。そして言葉も。

 この言葉が一番単純に破裂する地雷かもしれない。また直接の引火物。

 言葉は便利なようで不便

もっとみる

空神社



 忘れ去られたような神社がある。山の中にあるわけではなく、市街地だ。今風な建物が建ち並び、人跡未踏の地ではない。尤もそんな人が立ち寄らないようなところに神社があるのも珍しいが。

 だが、市街地でも人が入れない場所がある。実際には行き来できるし、人もそこにいる。その神社は工場の敷地内にあった。一般の人は入れない。こういう神社にはお稲荷さんがよく祭られている。しかしその神社、工場ができる前からあ

もっとみる

エクソシスト



 フリーのエクソシスト、つまり、どの宗派にも所属していない悪魔払いがいる。ある宗派の対となるような悪魔ならエクソシストでも祓える。聖水など、色々なものがあるためだ。

 極秘に日本に来た、そのエクソシストは、その悪魔に手こずった。宗派が分からないのだ。聖水も十字架も効かない。ニンニクもきかない。

 それで困り果てて妖怪博士に助言を求めた。

「悪魔が憑いたのは外人さんですかな」

「そうです

もっとみる