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川崎ゆきお
2015年12月18日 10:17
奥玉田村に名人、達人がいると聞いた僧侶が、草深い僻地へ出向いた。辺境は端だが、この村は山中にあり、よく考えれば、ど真ん中にあるが、中原と言わないのは、山岳地帯のため、原がないためだ。 昔の人は結構うろうろしており、今の人よりも、辺鄙な場所まで踏み込んでいた。それだけの時間があるのだろう。 山岳地帯なので田は少ない。奥玉田村となると、畑しかないが野菜ぐらいは育てられる。 田がないの
2015年12月15日 09:51
「季節外れの暖かさ、というのはだめですなあ」「そうですか」「季節外れの寒さもだめです」「でも、それは人の力では何ともならないでしょう」「そうですなあ。しかし物事には旬がある。この旬は季節なのですが、自然界の季節ではなく、人々の気分的な旬もあります。野に湧き出る機運とかです。この野とは野原じゃなく、全国各地のことでしょう」「民意というやつですか」「民意なんて、どうとでもな
2015年12月9日 10:46
椿崎の屋敷が取り壊されたことにより、この通りや、この町内が明るくなった。何か忌み事が多い家で、暗い家だった。屋敷と言うほどの規模ではないが、古い家なので、二階はない。建て増し建て増しで、迷路のようになっていたようだ。といっても近所の人がこの家の中に入ることはなく、門までだ。奥まで入ったとしても玄関まで。そこに二畳ほどの板の間がある。その横にもう一つ小部屋があり、書生部屋だったらしい。 椿
2015年12月5日 10:19
「私は貧しいまま一生を送っていた方が良かったかもしれない」 神社の境内。あまり人は入り込まないのだが、地元の人がお参りに来る。これはいつも決まった人だ。 老人は少年に何かを語っている。人生規模の話だ。少年は近所に神社があることを知り、ここは何だろうかと、探検中だった。本殿ではなく、その横の祠だ。お稲荷さんのようで、よくあるものだが、狐が怖いほどの朱色で、これが目立ったのだろう。「成