マガジンのカバー画像

川崎ゆきお超短編小説 コレクション 2

82
運営しているクリエイター

2016年8月の記事一覧

ガード下の送迎バス



 大都会の駅近くにあるガード下の道路。上は線路が幾本も走っているため、結構長い地下道のようなもの。当然大きな道が走っている。そこは駅の裏側へ出る近道で、最短距離で抜けられる。駅は駅ビルとなり、何処が駅なのかが分からないほど。これは真っ直ぐ駅向こうへ行くとなるとショッピング内での迷路抜けとなる。しかしガード下のトンネルを使う歩行者は少ない。なぜなら排気ガスが凄いためだ。

 ただ、そのガード下の

もっとみる

入らずの路地



 入らずの路地というのがあるわけではないが、立ち入ってはいけない通りがある。これは元商店街の洞窟のようなものではなく、普通の道だが、車は入れない。そのため道路ではない。この道は住宅地の中を貫いているが、古い家が目立つ。昔の村の道だろう。家と家の間の道なので、拡張されず、そのまま残っている。沿道は昔の農家の敷地。

 大きな農家の表玄関、立派な門があり、そこから少し歩かないと母屋の玄関に辿り着け

もっとみる

瓢箪から駒



 瓢箪から駒が出る。このコマとは子馬のことだろうか。小さくても大きくても、馬が瓢箪から出るわけがない。中に種が入っているのだが、瓜のようなものだ。成ったばかりの青瓢箪ではなく、しばらく乾燥させておき、種などを抜いて、容器として使える。丸い瓢箪は瓢箪らしくないが、そのタイプは半分に切れば、すぐにでも器として使える。大きい目の茶碗のような。

 瓢箪から駒が出る瓢箪は、既に入れ物として使われている

もっとみる

太鼓持ち



 さる業界の立役者、猿回しの猿ではない。千両役者、実力者のことだが、この男が曲者で、その立ち回り方が妙だ。変なことをする人ではなく、大物中の大物なので、堂々としている。そしてこういう大物には太鼓持ちや腰巾着がつきものだ。

 この大物とコンタクトを取るには、側近から攻めるのが早い。その側近も立派すぎる人だと、簡単ではない。重役のようなもので、重い。だからもう少し軽い取り巻きから攻める。腰巾着や

もっとみる

ススキが原のカッパ



 ススキが原にカッパが出るという噂が拡がった。しかしそんなものはニュースになるわけがない。拡がったのは口コミ。

 ススキが原という地名や呼び名は他にもあるかもしれないが、ここではない。一級河川の河原にススキが生えているためだ。土地の人も、ここをススキが原などとは呼んでいない。

 確かにススキはそれなりに背が高いので、大人でも身体が隠れてしまうだろう。これが刈られ、芝生やグランドになっていれ

もっとみる