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川崎ゆきお超短編小説 コレクション 2

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#小説

無心

無心



「つい昨日のように思うのですが、あれから長い年月が立ったのですね」
「はい、あの頃はまだ若き青年。前途悠々とまではいきませんが、夢がありましたなあ。いや、夢が見られたのでしょう」
「あなたはその夢を果たされたはずです。私たちの中では最も世に出た人だ」
「それもこれも昔の話。今じゃただの凡人。平凡な人間です」
「そうは見えませんがな。まあ、あなたの良い時代を知っているので、そう思うのでしょうかね

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