見出し画像

ヴィンテージ・ビルディング

70年代のようなビルに月に4、5回のペースで仕事に行く。エントランスやBGM、エスカレーターの形、エレベーターのボタン、照明からタイルのデザインまで、全てが懐かしい雰囲気がある。今の新築ビルは大体ガラス張りで、私なんかは日陰者だからあんなビルに一日中居たら溶けてしまうのではないか、と本当に思う。時々、取材でそんなイマドキの新築ビルに行くけれど、なんだか居心地の悪さを拭いきれないままで仕事をしている。お洒落なカフェや自動支払い機などの設備の充実、電話を持たずに話している人が行き交うエントランス。高いところからの眺めは良く、嬉しくてiPhoneで写真を撮るが、私がここにいることにどこか少し違和感を覚える。

さて、70年代のビルの地下には飲食店が軒を連ねており、昼間はこのビルで働く人たちで賑わう。喫茶店、蕎麦屋、中華屋、チェーンのハンバーガー屋など。昼間はほとんど行く機会がないが、時々夕食をここで済ませる。いつも同じ人がホールを担当していて、とても丁寧な仕事ぶりが良い。雰囲気からして品があり、ここの店に来た人みんな少しお上品になるのである。私は大抵、デニム にパーカーといった格好なのだが、背筋を伸ばして一つ残らず平らげる。隣に座った方もホールスタッフに雰囲気を寄せて注文をしている。この空気が好きだ。信じられないかもしれないが、この店はまだカードも使えず、けれどそれもまたしっくりくる。

ビルと共に年齢を重ねていっているような店構えとホールスタッフが愛おしい。今ある新築ビルもやがて違和感がなくなり、こんな雰囲気になっていくのだろうか。

よろしければサポートをお願い致します。マガジン「一服」の資金に充てます。