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米NPOがグリホサートの登録取り消しを請求 「EPAの対応は違法」と主張

米NPO「食品安全センター(CFS)」などは2023年12月13日、米環境保護局(EPA)がグリホサートの農薬登録を行い、使用を認めているのは違法だとして、取り消すよう米国の裁判所に請求しました。米国の裁判所は既に、「グリホサートは安全」とするEPAの暫定評価は違法だとして、CFSなどの主張を認める判断を示しています。米国でグリホサートが使えなくなる可能性が現実味を帯びてきました。
 
グリホサートは旧米モンサント(現ドイツ・バイエル)が開発した除草剤で、「ラウンドアップ」の商品名で知られています。米国では1974年に初めて農薬登録され、日本を含む世界各地で販売され、「世界で最も売れている農薬」と言われています。1990年代後半以降、グリホサートに耐性を持たせたトウモロコシなどの遺伝子組み換え(GM)作物の商品化も追い風となり、農薬とGM作物のセットで売り上げを増やしてきました。
 
一方で、安全性をめぐる論争も長く続いています。米国では、農薬の安全性を15年ごとに再評価した上で、登録を更新するかをどうか決めるよう定められていますが、1993年に更新された後、2009年の作業がまだ終わっていません。正式な更新手続きを経ないまま、暫定的な措置として、グリホサートを登録し、使用を認めるという異常事態が続いています。
 
世界保健機関(WHO)傘下の国際がん研究機関(IARC)が2015年、「グリホサートはヒトに対しておそらく発がん性がある」との見解を示したことで、安全性論争は一段と加熱しました。米国では「グリホサートを使ったらがんになった」として、バイエルを相手に多くの訴訟が起こされ、バイエルが負けるケースも相次いでいます。こうした中で、EPAはトランプ政権時の2020年2月、「ラベルの説明通りに使用すれば、グリホサートは人間の健康に影響はない。ヒトに対して発がん性がある可能性は低い」との暫定的な評価を示しました。
 
これに対し、CFSなどは2020年3月、「グリホサートに発がん性はないとEPAが結論づけたのは違法だ」として提訴しました。第9巡回区控訴裁判所は2022年6月、CFSなどの主張を認め、「グリホサートががんを引き起こすかどうか、EPAの検討は不十分だ。種の保存法(ESA)に基づく義務も怠った」との判断を示しました。EPAがNPOに敗訴するという異例の展開となりました。
 
これにより、EPAは「グリホサートは安全だ」とした2020年2月の暫定的な評価を取り下げる事態に追い込まれました。ただ、EPAはそれ以降も、グリホサートについて「『ヒトに対して発がん性がある可能性は低い』という判断を含め、EPAの基礎的な科学的知見は変わらない」と説明しています。
 
CFSは今回の請求について「バイデン政権が法律と科学に基づいて行動し、最終的にグリホサートの登録を取り消すためのものだ」と狙いを説明しています。「グリホサートが健康を驚かし、発がんリスクがあることを示す証拠は数多く存在する。環境にも有害で、(グリホサートへの)耐性雑草が農家を悩ませている」と指摘した上で、「昨年(2022年)の裁判所の決定により、EPAは(グリホサートを農薬登録する)法的な根拠を失った。EPAは今すぐ行動せよ」と訴えています。

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