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米国がバイオエタノールの混合率を一時的に15%に拡大 恒久化が焦点に

米環境保護局(EPA)は4月19日、トウモロコシを原料とするバイオエタノールのガソリンへの混合率について、夏季に限った一時的な措置として、本来の10%から15%に拡大すると発表しました。トウモロコシの需要拡大策として農業界が要望していたことに対応しました。農業界では、一時的でなく恒久化への期待が強まっており、実現するかどうかが次の焦点となります。
 
米国では、バイオエタノールは主にトウモロコシを原料に製造されます。バイオエタノールを10%含んだガソリンは「E10」、15%含んだガソリンは「E15」と呼ばれています。米国の大半の地域では、原則としてE10までしか認められていませんが、例外措置としてE15を認めることはたびたび行われており、米メディアによると今年は3年連続となります。
 
バイオエタノールの需要が増えれば、原料となるトウモロコシの需要も増え、価格が上昇し、農家は所得が増えるメリットがあります。今年11月に大統領選を控え、農家の支持をつなぎとめておきたいというバイデン政権の思惑も透けて見えます。
 
EPAはE15ガソリンを認める理由として、ロシアによるウクライナ侵攻や中東情勢の緊迫化によって原油の需給がひっ迫していることや、国産燃料の利用拡大によってエネルギー安全保障を強化すること、米国の農家を支援することを挙げています。E15ガソリンはE10ガソリンに比べ、1ガロン(約3.8リットル)当たり0.25ドル安いとの試算も示しています。
 
マイケル・リーガンEPA長官は声明で「バイデン大統領のリーダーシップの下、海外での紛争による燃料供給の課題から米国人を保護するために行動する」と説明しました。その上で、「夏のドライブシーズンにE15の販売を認めることで、燃料供給を増やすとともに、米国の農家を支援し、米国のエネルギー安全保障を強化し、ドライバーに安心感を与えることができる」と述べました。
 
エタノールの混合率を高めると大気を汚染するとの指摘もあることから、これ以上高めることには慎重な意見もあります。しかし、EPAは「今回の限定的な措置による大気の質への影響はないと考えている」と説明しています。かつて米国の石油業界は、ガソリン需要が減るためE15に反対し、農業界と対立していました。しかし、農業界に押し切られ、現在は支持する立場に転換しており、E15の実現に向けたハードルは低くなっています。
 
今回のEPAの決定について、全米トウモロコシ生産者協会(NCGA)は「米国のトウモロコシ生産者や農村地域の人々、消費者にとっていいニュースだ」と歓迎する声明を出しました。「EPAのリーガン長官やバイデン大統領、議会関係者に深く感謝する」とも表明しました。
 
アイオワやイリノイ、ミネソタなどトウモロコシ生産が盛んな中西部8州の知事の要請を受け、EPAは2024年2月、これら8州について、2025年からE15の通年販売を認めることを決めました。NCGAは声明でこの措置に触れた上で、「一部の州しか影響を与えない」と不満をにじませつつ、「石油業界を含む関係機関と連携し、E15を恒久的、通年で利用できるように取り組んでいく」と表明しました。

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